第21話 崩壊した街(ウォール)⑥
その場にいた空気をも切り裂いたような衝撃音だ
現在、破壊神に身体の所有権を乗っ取られた宗司は
神滅刀を古代人にへと振り下ろした
無残にも古代人の強靭な肉体の胴体全体に深く切り口が開いていた
我々人間とは違う緑色の血のような液体を大量に溢れ出ていた
「ゴァ…ッ!!」
その異形な姿のまま確かに致命傷を負わせていた
表情からは読み取れないが苦しんでいるのは間違いない
その時、丁度3人が宗司達の元へ到着した
「!?」
3人は致命傷を負わされている古代人に驚きの視線を走らせた
宗司がダメージを…?
「おい宗司!!」
事態を危惧していた安久津が真っ先に正面を向いている宗司に声をかけた
身体の所有権を破壊神に取られている宗司には届かない
手についた血をベロリと舐め、こちらへ振り返り
にんまりと笑顔を見せ
「ザンネンだ…力を使い過ぎた…」
ふっと操り人形の糸が切れたかのようにその場で体制を崩した宗司
身体の所有権が再び宗司に戻ったのだ
3人は駆け寄り
「自分の攻撃の衝撃に耐え切れてないのか…!?」
水陰は驚愕した
先程の一撃はあまりの衝撃の強さに自身の身体に傷を負っていた
血の出血が尋常ではなく、水陰は幻術で応急処置を施し始めた
場合によっては死に至る…しかしこのまま安静に処置が進めば最悪の事態は免れる
安静にできればの話だが…
処置を施しながら言いにくそうに安久津に声をかけた
「貴様に頼みごと等絶対にしたくはない…」
その言葉を聞いて安久津は察した
「わかっとる…別にお前に頼まれんでもするつもりや。」
スッと神授武器の「仙銃」を取り出し
致命傷を負っている古代人に視線を走らせた
アダムも安久津と肩を並べ
「僕も処置の邪魔はさせませんよ…」
「ははっ、まぁそうやな…アイツ(宗司)がここまでダメージ負わせてくれたんや…
あとは俺等で処理しようや」
処置の邪魔絶対にさせられない
もし処置が途切れれば宗司の死を意味する
神授会にとっても宗司は貴重な救世主なのだ
何としても守り抜かないといけない
古代人はより怒りが増して
今、自分の目の前に立つ2人を処理することしか考えていなかった
口から溢れ出す液体に眼もくれずに
全身全霊で処理を…
「行くで!!!!」
「はい!!」
安久津の合図とも言えるかけ声で2人は攻撃を開始した
ズガンッ!
安久津の仙銃の銃弾が古代人にへと突き刺さる
それまでの時限式拡散弾とは違い
ただの銃弾にへと変わっている
このほうがより効率的に少しずつダメージを与えていける
ダメージを負っている古代人は避けることもできず
ただひたすら銃弾を受け続けていた
さすがに限界なのか安久津の銃弾を避け、飛び掛ろうとした時
真正面からアダムが古代人の両肩を掴み首元に噛み付いた
強靭なアダムの牙により古代人の首は今にも引きちぎられそうであった
バタバタと足をばたつかせる
アダムは容赦なく噛む力をより強めた
両親を失い孤独をずっと体験していたアダムにとって
今回の任務は不安もあったが、期待感もあった
任務を遂行する前に、宗司と始めて出会った時
彼にこう言われたのだ
「アダムの両親の代わりなんていねーけど…でももう1人じゃねーぜ
今日から俺達は友達…だよな?」
同じ年齢の友達ができたのは初めてだ
この言葉でどれだけ僕は救われたと思う?
今まで孤独で人間と接することすら避けていたアダム
彼の神授武器により身体は狼に変貌するため
街に残った住民からは陰でひどいことをされていた
だが、この3人は僕の本当の姿を見せた時誰1人驚かなかった
ちょっとではあるがこの人達を信用しようと思った
だから…コイツ(古代人)はここで仕留める…!!
首を完全に引きちぎろうとしたその時
古代人が人差し指をアダムの腹部に押し当て光線を放った
常人では耐え切れない熱さの光線だ
「ぐっ…っは!!!」
あまりの熱さと痛みに掴んでいた手を離そうとしたが
決して彼は手を離そうとはしなかった
安久津はすぐ援護のため拳銃を構えた
すると、背後で処置を施していた水陰が声を上げた
「安久津…!!あの弾を使え…!」
「了解っ…!」
ニヤリと笑みを浮かべ
銃弾を装填はせず、弾切れの状態のまま古代人に向けて構えた
しかし、古代人は既にアダムに攻撃を加えようとしていた
「くっ……ここまでか……」
アダムが捨て台詞を吐き
古代人は確実に勝利を確信した…はずだったが
「ふんっ、どうやらまたしても引っかかってくれたな古代人…」
自分を掴んでいたはずのアダムの身体が霧のように消滅していった
消滅していくアダムを驚いた表情で見る古代人
既にアダムに光線を放った時に水陰の幻術により
古代人はアダムに掴まれていると幻術を見ていた
実際は4人は古代人の背後に回っており
拳銃を構えた安久津だけが、笑みを浮かべ立っていた
「この弾はちょっと不思議やで?絶対回避不能…無音不可視の銃弾や…!」
古代人が背後にいることに気づき振り返った時にはもう引き金を引いていた
シュコンッ!と擦れた音と共に銃弾が放たれた
安久津の仙銃の銃弾の1つ、音は全く出ず弾は透明で可視することができない
そのため避けることは不可能であった
何発も無音不可視の銃弾が古代人に向けて撃たれた
無音不可視ではあるが確かにダメージを負っている
しかし、銃弾だけでは倒すことはできない
すると安久津は撃つのを止め
「あと3秒…」
そう安久津が放った銃弾はいつもと変わらぬ時限式の拡散弾だ
「んな無音で不可視の弾なんてありえへんありえへん!
水陰の幻術で俺の銃弾の音と姿を消失させただけや…!これなら避けることもできひんやろう…」
ふぅと息を吐き
「貴様に借りを作らせただけだ…」
あっという間に3秒が過ぎ
古代人の身体が大きな光に包まれ
「オッギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
再び奇声に近い…いやこれは敗北の恐怖の叫びだろう
叫びとほぼ同時に…
ドガンッッ!!!!!
爆発音と共に古代人の身体は粉々に消滅していった
「任務…完了やな」
4人の間にようやく平穏な空気が流れたのであった…
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神授会本部の海底の奥底に眠る…「海の牢獄」
その名の通り、神授会の本部の下には小さな施設が建てられていた
現在収容されている危険死刑囚…「ロイズ・ベル」
1年前に神授会の室長虎川を襲撃したことにより現在収容中
死刑にされるかはただいま審議中だ
虎川には傷1つ与えられず捕縛された
元神授会本部の幹部であり、幹部の中でも高い戦闘能力を誇る
今回、そのロイズと面会するため室長の虎川自ら彼の元へ赴いた
海の牢獄の施設内は非常に息苦しく高齢の虎川にとって苦であった
監視員の許可の下、ロイズが収容されている牢獄の前まで案内された
大きな牢獄の中では四肢を鎖で縛られ、座り込んでいた男がいた
オールバックの赤髪に火傷のような跡でえぐれた右目
そして鋼のような肉体だ
虎川が牢獄の前に立つ気配を感じピクリと顔を起こした
「よぅジジイ…また俺に殺されにきたのか?」
「ほっほっほ!相変わらずじゃのう…牢獄生活もそろそろ飽きてきたじゃろ?」
「当たりめーだ…1年もこんなところにぶちこみやがって…
つえー奴と殺し合いしねぇと気が狂いそうだぜ…」
今にも四肢に繋がれていた鎖を引きちぎろうとしていた
「そう慌てんでも、貴様が条件を飲めばすぐに出してやろう…」
「条件…?」
ここから出れるということでさすがに虎川の言葉に興味を示したロイズ
「破壊神の復活の日が近い…時期にこの本部も奴等に襲撃されるだろう
だから、貴様は闇破会の連中ならどうしようが構わん
その代わりもう1度幹部として働け…それが誓えるのならすぐに出所させてやる」
ロイズにはこまめに地上のことを伝えていた虎川
興味深そうにその話を聞いていたロイズ
「おいおい、マジかよ…あの破壊神の復活が近けーのかよ…」
「どうじゃ誓えるか?」
しつこく確かめるようにロイズに問いかけた
するとロイズは笑みを浮かべつつ
「うるせぇぞジジイ…また殺し合いができるならそんなクソみてーな約束守ってやらぁ…」
虎川も口元を緩め
「よかろう…今日より出所じゃ」