第2話 目的と説明
昨夜の事件から一夜が明け…
未だに夢のような出来事と感じている
宗司は中々ベッドから起き上がれなかった
(俺が…神授者か…)
部屋のカーテンを開け、窓の外を見ると
「ん…?」
家の前に見覚えのある少女が立っていた
神崎美影だ…こちらに気づき笑顔で手を振ってくる…
俺は急いで仕度を済まし、家を出た
「おはようっ!宗司!」
「なんで俺の家知ってるんだよ…」
「昨日、あの後宗司の後つけてたんだ」
サラリととんでもないことを言ったぞこの子
俺は何ともやり切れない表情のまま、学校へ向かおうとした
だが、美影に袖口を掴まれ
「どこ行くの?」
「あぁ?学校に決まってんだろ」
「今日は、私の事務所で待機♪」
「…」
NOと言い返せず俺は美影の住んでいる事務所に向かうことにした
人生で初めて学校をサボってしまった…
事務所は路地裏を進み、様々なビルに囲まれた僅かなスペースに小さな事務所が建てられていた
「ここが事務所か…?」
「オンボロだけどね…人目につきにくいから丁度いいんだ」
「そういや事務員とかいんのかよ…?」
神授者というのは、少なからず俺達以外にもいるはず
今後そのサーバスとか訳の分からん連中と戦うのに仲間は多いほうがいいはずだ
「今のところ2人…だね」
「その2人は、今中にいるのか?」
「今は1人だけで…もう1人は政府に呼ばれて今いないんだ」
政府に呼ばれる…よっぽど偉い人物なのか…
「で、その1人…」
背後に気配を感じ、俺はすぐさま後ろを振り向くと
気候的に僅かに暑い中全身黒スーツに色黒でサングラスをしたスキンヘッドの大男が立っていた
男は躊躇することなく、俺の口の中に拳銃を突っ込んだ
「!!!!!?!!?!?!!」
俺はパニックになり、そして半分涙目になった
「ちょ、ちょっと!朱野さん!そんな物騒なものしまって!」
「もしや、神授者か…?」
俺は涙目でこくこくと大きく頷いた
それを聞いた大男は拳銃をスーツの内側のポケットにしまいこんだ
「てっきり美影が襲われてるのかと思ったぜ」
「違いますよ~昨日電話で話してた新しい神授者ですよ」
「ほう、この小僧が?」
「…」
今すぐこの場から立ち去りたかった
この大男の名前は朱野力さん
年齢は不明だが元アメリカの傭兵で、常に身体を鍛えており
今となってはボディビルダー顔負けのような肉体になっている
そして、神授者の1人でもある
「お前が神野宗司か…まぁ今後よろしく頼むぞ」
びしっと手を差し伸べられ握手を求めてきた
俺は恐る恐る手を握ると
ぎゅうううう
「アー!!!!」
握力はゆうに200を超える朱野さんに思いっきり握り返された
これが朱野さん独特の握手の仕方だ
俺は右手をさすりながら
「いってええええええ!!!」
「なんだ、ひ弱な奴だな…」
(あ…悪魔だこの人…)
「ま…まぁとりあえず中に入ろうよ!」
右手をさすりながら神崎の後ろについていき事務所にへと入った
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「案外広いんだな…」
中に入ってみると意外と中の空間は大きかった
しかし部屋にあるのは来客用のソファと、恐らく美影専用の所長イスと机が置いてあった
あとは、オンボロのパソコンが1台あるぐらいで
とにかく余計な物が置いていなかった
「さてと…それじゃあ宗司に説明してあげないとね…!」
「お、おう詳しく聞かせてくれよ…」
美影は所長イスに座り、俺は来客用のソファに腰掛けた
朱野さんはオンボロのパソコンを起動し始めた
そして美影の口から話された
「まず神授者の説明からなんだけど…」
神力と呼ばれる人間に秘められし力で
その能力は開花さえすれば誰でも扱えるものだ
しかし、開花する確率は極めて稀であり開花せずに寿命が尽きる人間もいて
神授者自体の人数も少ないのであった
神授武器はこの世界にいくつあるのかも不明
「じゃ、じゃあ俺はその稀な確率のうちの1人かよ?」
「うん…正直この戦いには巻き込みたくはなかったけど…人数不足で…」
次に俺達の目的を教えてくれた
昨夜に見たサーバスと呼ばれる突然変異種は
何者かによって人体改造を施され、超人的な力を持つ種のことだ
近年では殺人事件の他に行方不明も多発しており
明らかに人体実験の材料として捕らえられてるとしか思えないのだ
「情けないけど、敵の情報がほとんど掴めないままなんだ…」
未だに敵の情報がほとんど掴めない状態なのであった
「ただ少し分かったことがある」
朱野さんがパソコンのキーボードを叩きながら呟いた
「うん、少しだけ敵のことが分かったんだ」
「なにが分かったんだ…?」
闇破會…それが彼らの組織名でもあった
目的は不明だが多くの人間の拉致し人体改造をしているとのこと
「つい最近のことなんだけど、私がサーバスを消滅した時に
そのサーバスがポロリと呟いたんだ」
破壊神に殺されると…
「破壊神…って何だ?」
「私達もそれを今調べてるところなんだ…私の推測なんだけど
多分、闇破會 のリーダーと思うんだ」
「破壊神っておっかねぇ名前だな…」
「本当の名前じゃないと思う、多分コードネームみたいな感じで…」
その破壊神を倒すことが俺達の目的でもあった
しかし、そいつが人間を使って人体改造をしているのなら許せないことだ
今の俺には怒りしかこみ上げてこなかった
「そして、敵の力量についてなんだけど…サーバスだけじゃないんだ」
「どーいうことだ?」
サーバスは言わば闇破會の組織の中では下級ランクで
俺達と同じく神授力が使えるサーバスが確認され
そいつらは中級ランクの力を持つらしい。中級レベルのことは(ガイアン)と呼んでいる
サーバスが下級で、ガイアンが中級なのだ
「中級ぐらいなら、何とかなるんじゃねーか?」
俺はあまりにも軽い発言をしたと後に後悔をした
「うん…中級程度なら私でも倒せる…けど…」
けど…?
実はイギリスのロンドンにこの神授者探偵事務所を設けた人物がいるとのこと
その人は神授者の中では1番の実力を持ち、今も政府のトップとして活躍している
ロンドンに俺達の事務所とは比べ物にならない本部を設立し、そこで闇破會達の情報を探ってるみたいだ
美影達も月に1回は本部に報告に行っているようだ
政府も指揮り神授者をも指揮るような人なのだ
そのトップの人が以前に、闇破會の幹部と呼ばれる人物を戦い
苦戦しながらも、何とか仕留める事はできたが
身体に大きな傷を負い、今は療養中なのだ
「幹部なんていんのかよ…?」
「はっきり言うと幹部のレベルになるとサーバスやガイアンとは別世界の実力…
私でも倒せないレベルなんだから…」
俺は黙ってその話を聞いていた
どうやらこの戦いは、そう簡単には終わらないようだ
「説明はこんなものかな…?最後に宗司に聞きたいんだけど」
「なんだ…?」
「この戦い、いや戦争に参加する気はある?」
いつも明るい笑顔でいた美影がこの時ばかりは真剣な表情であった
最初は…てか、昨日までそんな世界に入りたくはなかった
けど、神授者として俺が選ばれたのなら拒否することはない
今の俺には迷いはなく、むしろ力となりたかった
「俺の力で役に立つんなら…命かけてでもこの戦争を終わらせてやるよ…!」
美影は思った通りの回答が返ってきて思わず安心した
俺は真っ直ぐな眼で美影を見つめた
こうして俺は改めて、闇破會との戦いへと身を投じることとなった
俺達の戦いはまだ始まったばかりなのだ