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第17話 崩壊した街(ウォール)②

「安久津さんと一緒に…?」


丁度、同時刻に事件の起きた現場に来ていた美影と朱野が

小休止している間に

先ほど安久津から連絡を受け、朱野が美影に報告をしているところだ

事件はほぼ解決しておりこれからサーバスをひっ捕らえるところであった


「どうやら水陰幹部が、調査したウォール街に行ったそうだ…

 室長の話していた未確認生物の調査も兼ねてだがな」


朱野は淡々と美影に話ししていたが

美影の表情は曇ったままだ


「そう…宗司も一緒に…」


アビネスの事件以来無茶をする宗司を避けていたのだ

宗司からは、気まずい雰囲気と思われている


「安久津幹部もついているなら、心配はないだろう…

 無茶をするとこが難点なんだが」


「うーん…そういえばあの事件以来宗司と、まともに喋ってなかったな~…」


ふと、朱野が思いついたことを口に出した


「息抜きに、宗司とどこかに行ったらどうだ?」


美影は目を丸くし、顔を赤らめながら


「ふぇ…??」


朱野の意外な意外する発現だったため

顔を真っ赤に火照らせた…

今まで恋愛経験のない美影にとって朱野のその発言は爆弾発言に近いものであった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーー



ウォール街…神授会公認のジェット機を使いすぐさまウォール街にへと向かった

街の外れの海岸に着陸をしたが……



「て…テメェ……操縦できねぇのに…」


全く機械音痴の安久津が操縦をしたのだが

操縦不安定で、本来着陸すべき場所とはかけ離れ海岸の砂浜にへと着陸した


「死なんかっただけマシやな…」


ぐったりとうつ伏せで倒れこんでいる安久津

もう、操縦だけでかなり体力を失った2人


キョロキョロと海岸を見渡すと森林が広がっていた

所々伐採されたような跡があり、真っ直ぐと道ができている場所があった

どうやら、その道を辿れば街に着くみたいだ


宗司はトボトボと安久津の後ろについていき伐採された部分を歩いて行った



「それより武器の場所の目星はついてんのかよ…?」


「知らん、現地調達や」


サラリと言い放つ安久津

今回の任務は中々長旅になりそうだ…


「んで…その助っ人は誰なんだよ?」


「あー…もう現場に来てるんちゃうか、なぁ水陰??」


クルリとその場で振り返ると

背後には容姿端麗の女性が腕組をしながらこちらを睨んでいた


この人が水陰さん…?

俺はただ、ひたすらこの女性に視線を走らせている

女性は黙ったままであったが、ようやく口を開いたかと思うと

顔に似合わない怒鳴り声で安久津を罵声し始めた



「たわけが…一体私を何時間待たせるんだ!?」


そういうとツカツカと安久津に詰め寄り胸倉を掴み

背負い投げをした


ドサッ!!と思いっきりコンクリの上に落ちた安久津


「いったああああ!!!何すんねん水陰!!」


普通の人間なら頭頭蓋骨が粉砕されているところだ

安久津も普通の人間なのに…耐久力だけはドM並である


「貴様が私を待たせたのが悪い…!」


俺は何だか心のイライラが爽快したようだ

ざまぁみろなどと心の中で呟いた

日ごろ、俺を雑用扱いするから天罰が当たったんだよ!と何度も心の中で繰り返した


頭を両手で押さえつつ安久津が水陰の紹介をしてくれた


「コイツが今回の助っ人や…!神授会本部の幹部の1人でもある!」


「よろしく頼むぞ神野」


サッと手を差し伸べられ、俺は思わずそれに釣られ手を伸ばした

俺の話も水陰さんは知っていたみたいだ


さっきまで、俺に対して柔らかい表情だった水陰さんが突如牙を剥く


「美影に変なことはしていないな…?」


鬼の形相で顔を覗き込まれ


「へ…変なこと…!?し……してませんよ!!」


俺は必死の表情で、断じて変なことをしていないことを訴えた

答えを間違えれば死ということも有り得る


長い間、俺の顔を鬼の形相で見つめたまま覗き込むのをやめ

元の柔らかい表情に戻り


「ふむ、ならいい…」


そういうとサッと俺の傍から離れた


「あ…あの人は美影とどーいうつながりが…?」


頭を押さえ込んだまま安久津が低いトーンで話した

まだ痛そうな雰囲気を出している…任務前に怪我してんじゃねーか…


「美影に体術とか武器の扱いを教えたんはぜーんぶ水陰やからな…

 言うたら師弟関係みたいなもんやから、美影のことえらい気に入ってんねん」


「美影の師匠って訳か…道理で気に入るわけだ」


俺は一人で納得し、頭の中に美影の顔を思い浮かべた

なぜか怒った顔をした美影の顔しか思い浮かべることができなかった

なぜだろう…やはり避けられてる…?


アビネスの事件以来、美影は俺を避けてる?感じがしてならなかった…

あいつの性格上人が無茶をするのは好きじゃないみたいだ

この調査が終わったら、謝ろうと心の奥で誓った


水陰が無言のまま俺達を、小さな家にへと案内した

崩壊した瓦礫の山の中で、数軒無事な住宅があった


レンガで出来た丈夫そうな家のドアを開け中に入った


家の中は1軒家としての大きさは十分で

暖炉も用意されており、洋風の部屋飾りがされていた

暖炉の前に視線を走らせると、1人の青年が待ってましたと言わんばかりの表情で

こちらを向きながら、立っていた。


「彼が今回の事件の依頼人だ」


水陰さんが説明をしてくれた


先ほど安久津は助っ人と言っていたが、水陰の仕事は未確認生物の「調査」

そして俺達は神授武器の「捜索」

たまたま、場所がウォール街だったために共同で任務を遂行することとなった


「えーっと、そちらの2人の方も神授会の…?」


青年が神妙な顔で俺達2人の顔を覗き込んだ


「神授会幹部の安久津でーす、んでコイツが雑用の宗司や!」


「誰が雑用だ!!!」


ホントにコイツ(安久津)は俺を雑用としか思ってねーな…

戦闘中に1発でもいいから、拳を顔面に入れたい…


「わざわざありがとうございます…僕の名前はアダムです」


青年の名前はアダム

紫に近い色をした髪に、色白の肌が特徴的だった

体型は華奢で、その青い瞳には心を見透かされるような感じであった


アダムはこのウォール街で育った子だ

年齢は16歳、俺と同じ年である。

両親はアダムが幼い頃に、内乱で返らぬ人となり

以後、1人で生き抜いてきたのだ…サバイバルには自信があると冗談交じりで話していた


「元々人口の少ない街なんですが、建て続けに殺人事件が起きるんです

 それも手がかりも一切無くて」


この街というより、国は無法治国家でこのような事件が起きても

対処しようにしても仕切れない状態であった

そのため住民は、この街を離れやがて瓦礫の山だけが取り残されてしまうのだ


その恐らく未確認生物であろう物を処理と調査の任務が水陰の仕事だ


「せやけど…その生物が万が一強かったらめんどいやろうな~」


「力量は、僕が戦闘をした限りでは手強い類に入るかと…」


「え、アダム戦ったのか!?」


アダムは立ち上がり、自身のポケットから黄金のマウスピースのような物を取り出した

それを前歯にガッシリとはめると


何と、アダムの歯全体がまるでライオンのような歯並びになった

更には全身の筋肉も大きく膨れ上がり、目つきは綺麗な青い瞳から

まるで獲物を狙うかのような瞳にへと変わっていた


「神授者…そのマウスピースが、どうやら神授武器のようだな?」


水陰が顎に親指を当てながら言い放つ


アダムの「黄金歯」と呼ばれる神授武器は

前歯にはめれば、全ての歯が金色に輝く牙となり筋肉が増加される

言わば肉弾戦を得意とする神授者だ


アダムは自身の武器を見せ終わった後、イスに再び腰掛け


「けれど、その生物には攻撃を当てることすらできませんでした…」


落胆した表情を見せたアダム。

彼の話によると、その殺人事件が起きた現場に彼はどうやらいたようだ


いつも通り海岸で釣りをしようと家を出ようとした時に

2人の中年の男が、自分達より20cmほど背丈の低い1人の人物と何やら言い合いになっていた

罵声を一方的に浴びせていたのは2人組の男の方だ


アダムは近づき、視線を走らせて見ると

その背丈の低い人物は、人間というより異形な姿であった

異常に大きな頭部に小さなやせ細った身体

瞳だけは我々と同じような眼をしていたが


男達の罵声には、一切反論しようとせず

まるで男達を観察するかのように、その瞳で見つめていた


シビレを切らしたのか1人の男がその生物に向かって

手を上げようとした、その時


ピシュンッ!!


緑色の光線のようなものが見えた


アダムからはそれだけしか分からなかった


ただ、大きな音と共に緑色の光線が、その生物から放たれた

その瞬間、男2人組の頭部がなくなっていた

首の部分から焼き焦げた跡のようなものが見えた

2人組の男はゆっくりとその場で倒れこみ

男達の背後に立ちふさがっていた大きな瓦礫で出来た壁はえぐれていた


生物はその後恐るべき行動に出た



倒れた男達の全身の皮膚を、躊躇することなくその細い手で引き剥がしていった

噴水のように血が流れ、辺りは血の臭いで充満している


危険と感じたアダムはすぐさま、黄金歯を装着しその生物に噛みかかろうとしたが

その生物は背後をアダムに見せており

飛び掛っているのに気づかなかったのか避ける素振りは見せなかった


だが、生物は突如振り返ることなく人間と同じ言葉で悲鳴に近い奇声をあげた


「ギッシャアアアアアアアア!!!!!!!」


突然の奇声に、一瞬判断が鈍ってしまったアダム

そのほんの僅かな緩みの間に生物はつけこんだ


右手を何と刃物に似た形状に変え



アダムの胸部分を斬り裂いた

かろうじて、反応し避けたが刃物は深く切り刻んでいた


間合いを取り、どう攻めるか試行錯誤しているとその生物は

アダムに次の攻撃を仕掛けることなく、その場から一瞬で姿を消した


その後アダムは神授会に連絡をしこの事件の調査を依頼した

もとよりアダムもその生物の正体を知りたがっている


話をしていたアダムが服のボタンを外し、胸の部分の傷跡を見せてくれた

その傷跡は今も残っていたが、まるで傷跡と言うよりも火傷のような跡であった




「闇破会の奴等じゃないのか…?」


宗司には詳しくその生物のことが話されていなかった

腕を組みながら、その話を聞いていた安久津が話し始める


「今んとこ室長の報告によれば、闇破会とはまた別の連中のらしいわ…

 まだ詳しいことが分かってへんから断定はできひんけどな」


闇破会達とは別の敵…となれば、かなり厄介なこととなる

この生物がいずれ神授会を襲うことになればそれこそ大打撃を受ける


「それで、このウォール街には神授武器はあらへんか?」


「噂ではあるんですが…ここの(ウォール)地下水路の奥に武器らしき物があると聞いたことがあります

ただし噂とあって、確かめた者は誰1人いません…」


アダムの家の前のコンクリートにマンホールがある

そこが地下水路への入り口で、階段を使い行くことができる


元々、内乱中の避難所として使われていたが

見つかった時に大量に虐殺され、今でも血の跡が取れないと言う

地下水路の中は意外と広いらしく、降りるとコンクリの足場がちゃんとあり

真ん中の汚染水を挟むかのように足場が用意されている


ただし、地下水路内は真っ暗で足場もまともに見えない

ただひたすら出口の見えない闇が続いているだけだ


その一番奥にもしかしたら神授武器が眠っているかもしれないという


「真っ暗なんは厄介やけど、今回は水陰がおるから心配無用や」


「水陰さんはどーいう能力が?」


まだ安久津以外の幹部の能力が明かされていない

宗司の発言は無視され、水陰は先にアダムの家を出た


「それじゃ僕も同行するんで、ここからは4人で行きましょう」


アダムも水陰の後に家を出た、俺達もついていき外へ繰り出した

既にマンホールが空いており水陰が先に入ったようだ


3人は後に続き手すりを持ちマンホールの奥深くへと入っていく



アダムの言った通り、マンホールを開けた時に既に血の匂いがしており

なんとも言えない感じがした


スタッと確かに足場のコンクリに足の裏をつけた感触がした



地下水路は思ったよりも広く感じたが、辺りが真っ暗なため感覚も分からない



シャァァと水路の水が流れる音だけが聞こえる


「ありゃー、こんだけ暗かったら進むに進めへんなぁ」


「そのために私の力が必要なのだろう…」


水陰が3人より一歩前へ出たのが分かった



「霧創…」


美影と似たような呪文を発した瞬間

地下水路の空間全体が明るく光で照らされた


まるで地上にいるぐらいの明るさで地下水路全体を見ることができた

だが、奥はまだまだ見えずとんでもなく長い真っ直ぐな道が続いている



「な、なんで明かりが!?」


宗司は思わず声をあげた


安久津はそれを知っていたため大して驚きはしなかった


「これが水陰の能力や…神授会でも珍しい自然力…幻覚使い…!」



「私がこれから見せる物が真か偽かは自分の眼で確かめろ」


水陰の能力は自然力「幻覚」であった

相手に有もしない物を見せ、その幻覚を使い攻撃をすることも可能なのだ


神授会の中でもその幻覚を見破れる者はほとんどいない

あの室長ですら見破るのは難しいと言わしめるほどである。

そして幹部の中で1番多く任務をこなしているのもこの水陰であったため

室長からも絶大の信頼を寄せられている。


そのため、安久津とコンビを組んで任務を行うことが多かったが

安久津の性格が(うざすぎる)ため水陰とは犬猿の仲だ

心の中でそう思っている間にも安久津と水陰の2人は言い合いをしている

地下水路に降りた時に安久津の靴が水陰の髪に触れたからだ…

ホントにこのメンバーで大丈夫なのか…と思ってしまっても仕方がない

その謎の生物が出現しないのを心の中で祈るばかりだ

4人は、ようやく一丸となって進み始めた



水陰が能力を使い明かりを灯した時に


4人よりも更に奥に進んでいた人物が1人いた…

それと同時に、宗司の中で蠢いている破壊神の魂の侵食も徐々に迫っている



果たして闇破会か?謎の生物か…?



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