第12話 異変
「テメェ…神授会の…」
アビネスの視線の先にはにやついた表情で立っている安久津がいた
右手に持っていた、黒い拳銃のトリガーの部分に指を入れ
クルクルと回していた
「第6幹部のアビネス…話は聞いてるで」
「その拳銃がテメェの神授武器か…!!」
安久津の手にしていた拳銃は紛れも無い神授武器だ
「正解や…!オレの相棒…仙銃」
武器の名称は「仙銃」8発式のハンドガンで
銃弾は弾が切れるごとに自動的に補充される
「ハッ!!ただの銃弾ぐれぇなら我慢できるぜ…!」
「俺の仙銃は…そんな甘いもんちゃうで?」
安久津が手にしていた拳銃を構え
右手の人指し指でトリガーを引いた
ズガンッ!
鈍い音と共に高速回転で銃弾がアビネスの方向へ放たれた
アビネスは、避けることなく額の部分で銃弾を受けた
「…」
ダメージどころか、アビネスは傷すらついていなかった
「ハッハッハッ!!!ガラクタな武器もあるもんなんだな!!
傷すらついてねぇじゃねぇか・・・!」
完全に不発と思われた安久津の攻撃が
安久津の仙銃の銃弾には8種類の力があり
1発目に放たれた、銃弾の能力「攻撃型」
安久津は、アビネスの額に銃弾を撃つというよりも銃弾を埋め込んだのだ。
埋め込まれた銃弾は数十秒後…
光を纏い大爆発を起こす
ボガンッ!!!
爆発音が途端に倉庫街に響き渡る
「うおおおおおあああああああああああああああああ!!!!!!」
爆発した額を手で押さえながら、悲鳴をあげるアビネス
顔の骨はボロボロに砕けている
「これが俺の仙銃の攻撃型の銃弾や…」
構えていた拳銃を膝元に降ろし
仙銃の攻撃型の銃弾は、敵に向けて撃てば体内に侵入し
数十秒後に大爆発を起こす
「テメェ…!!!テメェ!!!殺してやる!!!」
「はは、そんなに怒りなや~」
その様子を静かに見守っていた美影と宗司
亮二は、3人の中で一番ダメージが大きく
美影の五呪で応急処置を施したばかりだ
「す…すげぇ…幹部を圧倒してやがる…」
驚きの表情のまま暫し安久津に釘付けであった宗司
「あの人が、神授者探偵事務所のもう1人の事務員で今は神授会の幹部…」
「あ…あいつが!?」
安久津仁は神授者探偵事務所の事務員の1人であった
が、実力が事務所内では高く
本部より召集がかかり、幹部にへと就任した
「実力なら、神授会の中でも上の方だからね…!」
「さーて、もう終わりにしよか…闇破會さんよ」
安久津が仙銃に力をこめ2つめの銃弾を打ち込もうとしたとき
アビネスの身体が黒い煙で包まれた
「ハッハッハッ…残念だがここで時間切れだ…」
(逃走用の能力か…!?)
すぐさまトリガーを引こうとしたが
「無駄だ…今の俺にはどの攻撃も当たりはしねぇ…
その代わり、次は必ずテメェ等をぶち殺してやる…!!」
最後に捨て台詞を吐き
完全に、姿をその場から消し去ったアビネス
「何とか、この場は凌げたみたいやな…」
と、安久津が言い放つと美影達の元へ駆け寄った
「安久津さんありがとう…」
「気にすんな美影ちゃん!せやけど間に合ってよかったわ~」
「はい…私達3人でも幹部には歯が立たなかったです…」
まるで子供と遊ぶかのように扱われた
あれ程幹部の次元はかけ離れているのだ
「もうすぐしたら医療チームが来てくれるわ…あのボクサーの兄ちゃんが
一番やばそうやけどな…」
応急処置を施しているが安全とはいえない状態だ
安久津は、うつ伏せで倒れている宗司に視線を走らせた
(コイツが神野宗司か…ジジイの言うてることがほんまやったら…えらいことや……)
神妙な顔つきをしたまま
「宗司、怪我は大丈夫…?」
美影が、宗司の身を心配し傍に駆け寄ると
先ほどの様子とは異なり
何やら苦しんでいる様子であった
両手で頭を押さえ蹲っている
「宗司…?」
返事はなかった、ただうずくまりもがき苦しんでいる
宗司の脳には激痛が走っていた
(な…なんだ…っ…!!頭が…割れそう…だ……!!)
激痛がより、強まりその場で胃液を吐いた
美影がすぐに宗司に何度も問いかけた
だが、激痛が勝り返事を返す余裕すらなかった
「なんや…何が起こってるんや…?」
安久津ですら、この事態は想定がであった
ズキッ…ズキン!
激痛だけが宗司を襲い
「あああああああああああああ!!!!!!!!!!」
悲痛な叫びと共に、宗司はその場で立ち上がった
一体、宗司の身体に何が…?