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第四話 爆発のような衝撃

 朝起きるときの辛さが減っていき本格的に春が始まるのを実感する。青の通う遠井高校は絶賛春休みの最中だ。多くの高校生はこの休みに友だちと遊びに行ったり、はたまた旅行したり、バイトをする者もいるだろう。

 青の場合はどうだろう。青に友達がいないことは言わずもがな、遠井高校は校則でバイトを禁止しているので、先程挙げた例を彼は実行しない。

 ではこの男がこの春休み中何をしているのかというと、基本部屋で寝転がりながらスマホとにらめっこをし、珍しく外に出たかと思えば、スーパーへ食料の買い出しに。そういえば今日はゴミ回収の日だったのでアパートの外にあるゴミ回収所にゴミを捨てたのだった。まあ、ほぼ何もしていない。  

 

 そんな日々を送っていた。



 送っていたはずだった



 送っていたはずだったのに



 「こっち来るなぁぁぁぁ!!!」

「待ってよぉぉぉぉ!!!」


 現在青はミクから全速力で逃げている。

 何故こうなったのかというと――



*****


 時は数分前に遡る。


 「ホテルで暇だったからこんなのつくてみたんだけど」

「別になんか作る必要もないだろ」

「作業するのが癖になってるっていうか。まあ、とりあえずじゃじゃん!」


 そう言ってミクは机にNと書かれているバッジとSと書かれているバッジを置いた。

青はSのバッジを取り裏返してみる。安全ピンなどの服につけるためのものがなくどう扱えばよいのかを考えとりあえず普通のバッジのように胸部に近づけてみるとと服とバッジがくっついた。


 「なにもなくてもくっつくのか」

「服だけじゃなくて壁とか肌とかにも付けれるよ」


 青はシールの上位互換のような技術に感心しSのバッジを机に戻す


 「名付けて磁石爆弾!NとSが5メートルの距離にある時、強力な磁力が発生して、2つが引き寄せ合い、くっついたときにバーーーン!!!」

「うわっ?!」

 

 突然の「バーーーン!!!」に少し驚く青。その視界にはほんの数センチの距離にある2つの爆弾が


 「―――ッ!!!」


 冷や汗をかく。こんなところで爆発されたらたまったもんじゃない。すかさず青はSの爆弾をバシッと手に取り玄関まで逃げる。この一瞬の動きで1週間分の体力を使ったような感覚だ。


 「ハァ...ハァ...おい!!!どういうつもりだ!!!なに爆発させようとしてんだよ!!!」

「大丈夫大丈夫。このままじゃ爆弾は起動しないよ。この爆弾はねNをつけたいところにつけたときに起動するの。例えばワタシの服とか」


 カチッ


 




 馬鹿野郎

 幸い2つの爆弾は5メートルは離れている。が、このままだと何かのはずみで爆発する可能性も考えられる。この状況での最適解は


 「逃げる!お前はそれをどうにかしろ!」


 青はすぐさま部屋を飛び出し外へ駆け出してゆく。


 「えっ、ちょっと」


 嘘でしょ?!自分だけ逃げたの?!いや、でもこの状況で2つの爆弾を離すのは正しくて。えーっと爆弾の解除方法は...あっSの方に解除スイッチがあったっけ。作ったの自分なのに忘れてた。だから、えーーーっと青のところに行ってSのスイッチを押さないと。 


 「待ってーーー」



*****



 何故か付いてくるミクに困惑しつつ運動不足の肉体にムチを打ちながら逃げる青。ただでさえ部屋で体力を1週間分使った感覚に陥ったのにこれ以上体力を使うことになるとは。このまま走り続けても埒が明かない。もう爆弾をどこかへ投げてしまったほうがいいのでは。


 「えっ」


 ダン!


 「キャッ!」

 「うわ!」


 曲がり角で少女にぶつかった。逃げるのに夢中で周りをちゃんと見れていなかった。ぶつかった子は見た感じ自分の妹くらいだったのでおそらく中学生だろう。


 「君、大丈夫?」

「え...」

「怪我してな...い゙?!」


 自分の目を疑った。彼女の袖に自分が持っていたはずの爆弾が付いている。だんだんミクの声が近づいてき、このままだとこの子を爆発に巻き込むことになってしまう。判断は一瞬で、その子の手を取り


 「逃げるよ!」

「え、ちょっと」


 走る。走り続ける。もう限界などとっくに過ぎている。正直今自分がどこを走っているかなどわからない。流石に自分の知っている場所のはずだが、周りの景色を見る余裕がなく現在地を完全に把握ができない。とにかく...この少女と自分が生きることだけ...に...集中...する。


 「急にどうしたの?」

「君の袖についてるそれ、ハァ...ハァ...爆弾。逃げないと...爆発する...ハァ...ハァ...」

「ええええ?!?!?!」

「あおぉぉとまってぇぇぇ」


 駄目...だ...もうこれ以上は...


 青の足が止まる。もう動かない。全速力でここまで走ったことは初めてだ。酸素を体に取り込みようやく周りを見ることができる。少女は青ほどではないが息を切らしており、今いるこの場所は...自分の家だ。まさか本能的に自分の家に戻ってきたのか。そして爆発へのカウントダウンが聞こえる。


 「ハァ...やっと追いついた...」


 距離は10メートル。青とミクが向かい合う。そして、ミクがこちらへ走り出す。

 もうこれ以上動けない青は周りを見渡し自分の右斜め前にあるゴミ回収所を目にする。そこにあるゴミがクッションになると考え


 「逃げろ!!!」


 少女を突き飛ばす。


 一方ミクは同じタイミングで青の持っているSの爆弾に近づいたらまずいことを思い出し、止まろうとする。実際には今青はSの爆弾を所持しておらず、少女が所持しているのだが、ミクはそんなことは知らない。止まろうとするが勢いを殺し切る前に爆弾が5メートルの距離に存在してしまうと考え左斜め前に方向転換した。


 青が少女を突き飛ばした方向と、ミクが選んだ方向転換の向きが不運にも一致し爆弾の距離が5メートルになり、磁力で2人が引き寄せられ、くっつき、爆発




 ―――しない?




 「「あれ?」」


 ミクは一旦事情を説明し、Sの爆弾にある解除スイッチを押した。


 「解除スイッチがあるなら先に言えよ」

「ごめんって」

「あの、私はどうすれば」

「そうだそうだ、突き飛ばしてごめんね。大丈夫?汚れてない?」

「あ、だ大丈夫です。 はい」

「あーーー!そういうことか!」


 すると突然ミクが大声を上げて


 「これ、火薬入れるの忘れてる」



 はぁーーーーーーー?!?!


 「なんだよそれ。まあ、爆発しなかったから何でもいいわ」

「てかこの子は?中学生?巻き込んでごめんね」


 すると申し訳なさそうにその子が


 「あのー。私高校生...です。なんなら隣のクラス...喜々田(ききた) エニです...」

「えっ」


 嘘。高校生?しかも隣のクラスってことは同級生?やっべー知らなかった。ってかなんで向こうは俺のこと知ってるの?話したことあったっけ?俺が忘れてるだけ?


 「青...」

「えっ...あ...ごめん」


 なんか微妙な空気のまま爆弾騒動は幕を閉じたのであった。

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