不揃いの原石
領主の屋敷に辿り着く。
昨日の門衛と目が合ったので、互いに気まずそうに視線を外した。
「話は聞いている。報奨金はここに用意してある」
「なんだい? 屋敷の中には入れてくれねえのかよ」
「傭兵風情が気安く入れると思うな」
門衛が、追い払うような仕草をする。
イグニスは苦笑いし、報奨金を受け取った。
つづいてリナリアも恐る恐る手を伸ばす。
ところが、手渡された金額はあまりに少なかった。
「おいおい、これはあんまりなんじゃねえか?」
「知らぬ。自分が決めたことではない」
門衛が顔をしかめる。
その顔は、昨日とは打って変わり、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
それを察して、リナリアは気持ちを切り替える。
「……貰えるだけ、十分です。……ありがとうございます」
「おいおい、いいのかよ」
「……いいんです。今は、これで」
そう言って、リナリアは深々と礼をする。
本当に、今はこれでいい。
それに、昨日とは違う。
今の門衛はちゃんと自分の仕事をして、リナリアの顔を見てくれている気がした。
「……お嬢ちゃん、昨日は悪かったな」
文句ひとつ言わないリナリアを見かねたのか。
門衛が声をこぼした。
「昨日の魔獣の襲撃は、妻と娘が……危ないところだったらしい。助かったよ」
「……それは、良かった、です」
「それで、これは……俺の娘からだ。お嬢ちゃんが来たら、渡してくれってよ」
そういった門衛が、懐からペンダントを取り出した。
ペンダントには、宝石の原石がふたつ、不揃いに並んで付いている。
「規則だから、自分からは何もやれない。悪いな」
「……か、構いません。そ、その、ありがとうございます」
手渡された、不揃いな原石のペンダント。
鈍い煌めきの中に、昨日の出来事と、魔法の深遠を映している気がした。
これこそ世界の真心。
自分の生きる道ではないか。
「……大切にします」
リナリアはそっと胸元にペンダントを当てた。
冷たい原石に、かすかな温もりを感じる。
「それじゃあ、行くか。これ以上ここに居ると門衛の旦那のクビが飛んじまうかもしれねえからな」
「あ、は、はい、そうですね」
リナリアは門衛に礼をして、踵を返した。
門衛は、礼も言葉も返さなかったが、手を振るような風の流れが、背中に触れた気がした。




