有村茜の場合②~スネ夫と私~
別連載のスピンオフエピソードです。
主役は毎回変わります。
今回は有村茜の場合。
2025年の空真とのゲーム開発シーンから自分のルーツを思い出す話し。
深夜の資料管理室。
私(有馬 茜)とクウマは、新作ゲームの企画開発を連日行っていた。
クウマがプロットを起こす。
プロットを参考に私の起こしたイラストにクウマは想像でシナリオを創る。
そして議論。
私はタブレットに筆を走らせる。
手首が熱い。キャラがどんどん動き出す。
こんなの、いつぶりだろう......。
私は平行して過去の記憶を思い出していた。
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小学生時代、男子が騒いでた。
「スネ夫ってかけるヤツって絵の才能あるらしいぜ。」
男子どもが学校の黒板にチョークでどんどんスネ夫を書いていく。
それはひどいものだった。
男子の一人が私に声をかける。
「アカネっていつも落書きしているよね。アカネかいてよ。」
男子は騒ぎ出した
私は嫌々、黒板に書き始める。
「アカネって絵の天才だ!」
クラス中が騒ぎ出す。
黒板に並ぶ、スネ夫になり損ねたノコギリのような物体の中で
“私が書いたスネ夫は何処までもスネ夫だった”
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私は絵が好きになった。
中学・高校と美術部に所属する。
一点透視法、二点透視法、三点透視法。遠近感を学ぶ。解剖学に基づく絵のデッサン。様々な知識を吸収する。
どれも正しかった。
だからこそ、絵は動かなくなった。
絵が書きたいという想いだけで、それをどんどん吸収する。
フォトショでレイヤーを重ねる。
人物がどんどん立体的になる。リアル、デフォルメ。みんな誉めてくれる。
でも私は感じていた。
あのスネ夫は今にも動き出しそうだった。
今の私は止まって見える。
結構ツラかった。
自分にしか分からないスランプ。
深夜、結構刺さっていた。
小学校の頃書いたパラパラマンガはどんどん動き出した。(あのころからうまくなったのにな......)
いたずら心からノートに適当な落書きをする。
暗い部屋に卓上ランプがスポットライトになっているせいだ。
でも、何となくその落書きが勝手に踊ったり励ましてくれていた。
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憧れていた、大学の美術学科に合格した。
それから絵は生活にとけ込む。それまでメイクなんてしてなかった。でも、私にとっては簡単だった。
薄くベースを整える。シャドー、ハイライトで立体感をだす。目や唇はこだわるけどおとなしめに。
完璧な「量産型アカネ様」が誕生する。
へたくそは、目や唇ばかり強調する。そこじゃない、ノコギリのスネ夫と同じだ。
チヤホヤされる私とは反比例し、私は絵の才能に限界を感じる。
大学院の先輩や学部の天才たち。
私の才能はどこまでも量産型だった。
私は、“本物”にはなれない。
完璧に思い知った。
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現実から離れるため、
様々な学科が参加するゲーム部に入る。ゲームなんて興味ない。
そんなとき純粋にゲームに熱中しているバカ。クウマと出会う。
この業界なら、私みたいな量産型の才能でも通じるだろう。
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打算かもしれないけど私はレジェンドソフトに入社した。
先輩、同僚と比較してもなかなかいい。多分私はよくできた満足のいく量産型に落ち着いた。
でも、私はどこか小学校の時に感じた“ホンモノ”の感動を追い求めたりもした。
クウマを冷やかしに行った資料管理室。
そこには、不完全なボツ資料の宝箱だった。
下手くそな絵の中に、猛烈な熱だけが紙に残ってる。
いつも追い求めていた私にとって、
救ってくれる場所だった。
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いま、不完全な絵をクウマの前で書いている。
たぶん、憧れていたあの頃の絵と違う。
誰にも分からないかもしれないけど、私の熱気が、不完全の絵に魂を与え今にも動き出しそうだ。
多分、天才たちのホンモノでもない。
私はきっとそこには私は到底届かない。
でも、今の私の絵はどこまでも絵が大好きだったあの頃追い求めていた”モノ”に近づいているような気がする。
「アカネなに、絵書きながら
ニヤニヤしてんだよ。気持ち悪い」
笑顔でクウマが冷やかしてくる。
「クウマは、分からなくていいんだよ。あの頃の“どこまでもスネ夫だったころ”の絵を思い出して。」
きょとんとしているクウマ。
でも私はそれでよかった。
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