第7話 専業主婦として旦那を支えてきたが
日向と一緒にいると、貯金は貯まるどころか、流れていく一方でした。この時のエレナは離婚とまでは考えてなかったものの、エレナの中で「いっそのこと、日向とは別々に暮らした方がいいのでは」と考えるようになりました。それを日向に話すと、日向は断固として別々に暮らすことを許してくれませんでした。
テーマパークでの就業期間が終了し、新婚旅行も終えた後、日向はエレナに
日向:今まで迷惑をかけてきたから、気が済むまで働かなくていい。今度は俺が養うから、専業主婦になって支えてほしい!
と言われ、エレナは専業主婦として、日向を支えることにしました。
次の転職先も契約社員というかたちではありましたが、前職より少しは給料も上がり、なんとか日向の給料で生活していけそうな金額でしたので、エレナは「私が専業主婦になって、日向を支えるようになれば、日向もきっと改心してくれる!」とどこかで信じていました。
というより「信じたかった」という方が正しいかもしれません。
けど転職して早々、日向は「職場で訳あって働けなくなった」と言ってきたのです。その日帰ってきた時の日向の顔を見ると、今後の危機感を感じているようには思えない表情でした。
なので、エレナは「この先日向と過ごしていっても大丈夫かな? いっそのこと、別々で暮らした方が、自分たちのためになるのでは?」とまた苛まれるようになっていきました。
まぁその後すぐに、転職エージェントから即日採用の企業を紹介してもらえて、なんとか危機を乗り越えましたが…
ただ、日向はお給料が入っても「先月働いた日数が少ないから」という理由をつけて、エレナに生活費を渡しませんでした。
のでエレナは仕方なく、今まで自分の貯金を崩して生活していましたが、次第にそれも尽きてしまい、「これ以上日向と生活していくのは限界がある。独身だった頃の方が、よっぽど貯金できてた」と思うようになりました。
それなのに日向は、エレナが自立して生活しようとすると、いつも「俺が養うから」と言っては、平気で嘘をついてきたので、その度にエレナは日向に何度も裏切られてきました。
エレナは「結婚したら安定した暮らしを手に入れたい。日向から生活費をちゃんともらって、日向のために苦手な料理も頑張って、毎日ご飯を作ってあげたい」って思ってましたが、日向のせいで、思い描いてた結婚生活を全然送れてないし、これじゃ落ち着いた生活なんて、とてもではありませんが、送ることができませんでした。
エレナ自身の主張としては「玉の輿に乗って毎日贅沢したいワケじゃない。ただ私にも安心できる居場所が欲しいのと、日向にも守るべき存在がいるという責任感というか、自覚を持ってほしかった」ただそれだけでよかったのです。
こんなことを考えると、日向に言い寄られた時、「大して好きでもない相手でもなければ、なんか違うなって感じてたのに、断りきれなくて、付き合って結婚までしたけど、後々になって後悔するくらいなら、最初から自分の直感を信じてNOと言っておけばよかった。その直感を無視してしまったから、こうなってしまったのかな」とエレナはあの時の自分を責め始めました。
エレナはこれまで、誰にも頼らず1人で生きていけるよう必死で、いつも油断できないような環境で育ってきたので、日向が平然とした態度で「お金貸して」ってすぐ人に頼ってきたり、新しい職場で突然クビになった時でも、なんとかなる精神でいたので、そんな日向を理解できませんでした。「結婚したんだから、もう少し夫としての責任感っていうのを感じてくれないかな」と常々思い、日向といればいるほど、いつも不安を感じるようになり、「私の人生、こんなはずじゃなかったのに」ってエレナは日向といること自体、苦痛だなと感じ始めたのでした。