第5話 彼と結婚してから
エレナ自身、別にどこかで「式を挙げたい」
って願望もなければ、装飾品は苦手なので、「結婚指輪が欲しい」ってわけでもなかったんですが、かたちあるものというか、記念に残るものをいただいたわけでもないし、仕事が多忙な時に籍を入れたからか、「本当に結婚したのかな? 入籍はしたけれど、結婚したんだ」という自覚がエレナの中で一向に湧いてきませんでした。日向は結婚するまではいろいろとリードしてくれましたが、結婚した途端、エレナに対して頻繁に
日向:レナちゃん、今手元にお金ないからお金貸して、給料入ったら返すから!
エレナ:なんで、日向も働いてるんだから、お金持ってるでしょ!
日向:ホントごめん、競馬に使いすぎちゃって… 必ず返すから!
とか、この他にも2人でドライブデートした時なんかは、何かと理由をつけては、毎回レンタカー代をエレナに負担させたりすることもあり、そのお金を日向は自分のお金のように振る舞うこともありました。
また、日向は自分にはとことん湯水のようにお金を使い、足りなくなるとエレナに「お金貸して、すぐ返すから」と言ってくるようになったのです。
お金に対して厳しいエレナは、他の人にはもちろん、旦那である日向にもお金を貸すのに抵抗があったので、「お金貸して、すぐ返すから!」と口癖のように、それも脅すように言ってくる日向を理解できませんでした。
最初のうちはエレナも日向に言われるがままにお金を貸していたものの、日向は次第にエスカレートしていき、エレナから借りる金額も徐々に増えていき、旅行などの多額の金額も日向はエレナに支払いさせるように、エレナの許可なしにエレナのスマホで無断で操作し、後払いペイの分割払いに関しても、日向の図々しい行動が原因でエレナに支払いさせるよう、仕向けられたので、エレナの毎月の負担額がどんどん増えていきました。
その度に日向は「俺が後から払うから」と言ってきましたが、何かと言い訳をし、結局払ってくれることもなければ、借りたお金も返してくれることはありませんでした。
なので、エレナもとうとう怒り爆発し、
エレナ:いい加減にしてよ、そうやっていっつもいっつも人のお金を当てにして、自分だって働いてるでしょ。いつも口ばかりで、ちゃんと返せないなら、最初からお金貸してなんて言うんじゃねーよ、お前には男としてのプライドというものがねーのかよ、本当に私のこと好きなら、私にもっと貢げよ。それにあんた私よりも7つも上で、私よりも7年も先を生きてる男のくせに、年下の妻にお金をせびるなんて恥ずかしいって思わねーのかよ、マジでふざけんな
という感じで時々エレナも日向に対して正論をぶつけてたものの、その度に日向は被害者ぶって、声をあげながらすぐ泣きじゃくるので、エレナはだんだん日向に対して呆れるようになっていきました。そんな日向を見るたびに、エレナは「泣きたいのはこっちだよ」と心の中で叫んでいました。
その後は日向も決まって、いつも反省してるようなフリをして、エレナにスイーツを買ってきては、謝罪してくるところがありました。
日向:いつもごめん、これ買ってきたから食べて
と日向はエレナにスイーツを買ってきましたが、そのスイーツはスーパーなどで値引きシールが貼られたものばかりでした。
エレナ:仕方ないな
とは言うものの、エレナは内心「スーパーの値引きシールが貼られたスイーツかよ。所詮売れ残りじゃねーか。本当に反省してるなら、有名なスイーツを買ってこいよ」と毒吐いていました。
このあたりから、「籍を入れて、日向と家族になったけど、来年の今頃は別々に暮らしてるだろうな」とエレナの中でじわじわと勘づいてきていました。