第33話 既婚者アプリで出会った人たち
エレナが既婚者アプリを始めたきっかけは、自身の離婚に協力してくれる人を探すのが目的であったので、特にこれと言って、出会いなんて期待していませんでした。「ここでいい協力者と出会えますように」とまるで喉から手が出る思いで、“チョコ”というニックネームで、色んな男性とマッチングしました。
ただ、エレナも日向のことがトラウマになっていたことから「誰でもいい」っていうワケではなかったので、「書くだけならタダだし、いいよね」という思いから、予防線を張るつもりでプロフィール欄に
“自分の言ったことに対して口だけではなく、行動でも示すことができ、誠実で責任感があり、自分本位ではなく、相手を思いやる意識が強くて、嘘をつかない正直な人。清潔感があり、一緒にいて安心できる人。デート代は、好きな子のためならカッコよく負担できるくらい、経済的に余裕のある人と出会いたいです!”
と記入しました。
それがいい効力になったのか、エレナとマッチングした男性はまともそうな年上男性ばかりで、なんなら、メッセージのやり取りで、「チョコさん、いいね返しありがとうございます! 口だけではなく、行動で示すのは当然のことですよね」とエレナに共感するメッセージを送ってきた方もいたくらいでした。
ただ、エレナ自身、恋愛する気なんて、これっぽっちもなければ、「同年代とか歳が近い男性よりも、父親くらいの年代の男性の方が気を遣わず、自分らしくいれそうだし、離婚に協力してくれる人と出会えるかも」と思ったので、エレナがマッチングした相手はエレナから見て、父親くらいの年代の方ばかりでした。
ですが不思議なことに、自分から“いいね”を送ってきたのに、エレナが“いいね返し”をした途端、「いいね返ってこないと思ってたから、正直困惑してます」っていうメッセージを送ってきた人もチラホラいたので、エレナは「それなら、なぜ私に“いいね”を送ってきたんだ」とツッコミたくなりました。
ただ、マッチングした相手の中で、残念ながら1人だけ、クズ野郎がいました。
その相手は40前後の方で、マッチして早々に
「チョコちゃんは、どうしてこのアプリを登録してるの」とか、その他にも、エレナがモヤっとするような質問を馴れ馴れしい感じで、このクズ野郎は根掘り葉掘り聞いてきたのです。
クズ野郎の質問に対してエレナは「この人、なんだかメッセージのやり取りの日本語がおかしい」と少しだけ違和感を感じましたが、ノリよく「色んな方と出会いたいから」っていう感じで、そのクズ野郎に当たり障りのないような返信をしました。
それから少しだけやりとりした後に、このクズ野郎は「俺たちはきっと運命だと思うし、このマッチングアプリはヤリモクが多いけど、自分はヤリモクではないから安心して。よかったら、メッセージアプリのID教えてくださーい」と言ってきたので、エレナは直感的に「まだマッチングしたばかりで会ったこともないのに、恋愛感情を抱かせるようなことを言って、すぐメッセージアプリやSNSで繋がろうとする。こいつはちょっと怪しい人物かも」と瞬時に察知し、サイトに「怪しい人物である」と通報しました。
同時に「お互い既婚者っていう立場なのに、運命だなんて、お前自分の立場分かってんのかよ。ヤリモクではないって断言するヤツに限ってヤリモクが多いし、そもそも私プロフィール欄に“こういう人と出会いたい”って記載してるのに、絶対読んでないだろ! 私は脳内お花畑野郎のお前と違って遊びじゃないんだ」とエレナはこのクズ野郎にそうツッコミたくなりました。




