第27話 心の闇を抱えた生徒
放課後、色んな生徒を個別に指導していた賢人ですが、その中でも1人だけ、賢人に自身の家庭環境を相談してきた生徒がいました。須山ひかりという女子生徒が、小川先生のクラスの教え子として在籍しており、彼女の悩みというものが、かなり複雑なものでした。
ひかりの話だと、彼女が2才の時に、彼女の産みのお母さんが亡くなり、それ以降、父親と2人で暮らしてきたそうですが、彼女が小学生になった頃、父親が再婚し、歳の離れた弟が生まれましたが、継母との折り合いがあまり良くなく、父親に継母のことで何度か相談したこともあったが、あまり受け入れてくれなかったそう。
また、腹違いの弟が生まれたことで、「お姉ちゃんだから、しっかりしないといけない」というのが自然と擦り込まれている状態で、家庭では自分の味方になってくれる人がいなかった為、思春期に入った頃からリストカットを繰り返しては、自分の存在価値を確かめるような人生を送ったり、「もっと自分を見てほしい」ってことから、恋愛依存症に走ってた時期もあったそう。その為、彼女はいつもリストバンドを手首にハメていました。
なので、賢人もひかりに捕まった時は、1時間くらい相談に乗ってたため、他の生徒の指導を終えてから、ひかりの相談に親身になってたこともあったので、日が暮れてから彼女と一緒に帰宅したことも何度かあり「夜遅い時間に、女子高生1人はさすがに危険だ」と賢人は感じたので、彼女の身を心配して、いつも自宅まで送り届けていました。そういった出来事から、ひかりは賢人に対して陽性転移をしてしまい、とうとう暴走し
ひかり:先生、私賢人先生のことが好きすぎて、頭から離れなくて、この気持ちを止められないんです!
ってついこないだ、彼女と一緒に帰宅した時、思い切った告白をひかりにされた賢人でしたが、賢人には既に“有里”という彼女がいたこと。ひかりと自分は生徒と教師という立場であるため
賢人:須山さん、君と俺はあくまでも生徒と教師の関係だから、君とは男女の関係にはなれない。今はまだ分からないかもしれないけど、君はまだ若いんだし、これから素敵な出会いがきっと待ってるはずだから、まずは自分を大事にしていくところから始めてみない?
と彼女にアドバイスをしました。
だけど、ひかりは
ひかり:私、味方がいなくて、私の存在って何なんだろうってよく思うんです。これまでいろんな人と付き合ってきたけど、気が重いっていう理由でいつも見放されるし…
と彼女は泣きながら、賢人に訴えました。
賢人:須山さん、これまですごく辛い思いをしてきたんだね。けど、辛い体験をしてきた分、心の痛みを分かってあげられる人になれるんじゃないのかな? 須山さんって何が好きかな? 何をしてる時が1番楽しい?
と賢人はひかりの目を見ながら、優しく問いかけました。
ひかり:そういえば私、お菓子作りがすごく好きで、お菓子を作ってる時が1番楽しいんです!
と一瞬ではありましたが、彼女が少しだけパァっと笑顔になったような気がしました。
賢人:須山さんはお菓子作りが好きなんだね!それなら、ワクワクするなってことを日常に取り入れてみると、毎日が充実してきて、楽しくなるんじゃないかな? それでもやっぱり変化がなければ、また考えればいい。君の彼氏にはなれないけど、俺がいる間はいくらでも相談に乗るから!
ひかりに突然の告白をされ、少し戸惑いもあったり、それ以上に彼女に粘着されたらどうしようと不安が過りましたが、それ以降、ひかりはお菓子作りに没頭し、無添加で美味しいおやつをどんどん生み出していき、そこにどっぷりハマった彼女は、これを機に、自身でブログを開設し、“無添加で食べた人が健康になるスイーツ”をテーマに紹介するようになり、自身で自作したスイーツをブログに欠かさず更新していったので、1年後にはフォロワーも100万人を超えるほどの人気ブロガーとして活躍していました。
同時に無添加スイーツのレシピ本の出版も決定し、人気が絶えないくらいにまで上り詰めていったので、その頃には恋愛に依存しなくても、自力で生きていけれるようになっていました。




