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■■■だったボク

作者: アキマ

動かないキミ、

喋らないキミ

目を瞑ったままのキミ


たまには、ボクの話、聞いてくれない?


こっちばっかりキミの事を調べて、

ここで待ってるばかりでさ


暇なんだよ


いいじゃん

どうせ寝たままでしょ?


たまにはボクが自分の話するぐらい許してよ


喋れる人・・・・居ないんだ・・・・・


最初に覚えてるのは、

ぼんやりとした視界が広っていって、

強い光が差し込んでくるところだったかな。


水色のゴムのブ二ブニに、掬い上げられて、

抱きかかえられたのが最初だった。


おおきいてだった。

普通は、生まれた瞬間の事なんて

覚えてないでしょ?


ボクは覚えちゃってるんだ。


なぜなら、

転生者だから



あの時の感覚はヘンテコだった。


そうやって、

言葉で考えることができたかと思ったら、


突然、


きゅうに

になって、なにもわからなく

なる。


なに

なに

あれなに

これなに

このせかいは

なに


って。


頭の奥から、体の節々にまで響き渡ってきて

最終的に、それが喉の方に集まって来て、

声が出た。


そうやって最初に出た自分の声で、

ボクは自分が何なのかを理解した。


赤ちゃんだった。

産声が自分から出てた。


それで、何となく自分にとんでもないことが起きたってことは

気づいたけど、その後はすぐに寝ちゃって、

まともに目を開けることだってできなかった。


それがここに来た時、最初の記憶。


次に目が覚めた時は、

まだ周りは白かった気がする。


しばらく白にいて、

時間が経つと、また白の多い所へ来た。


知らない場所でしかなかったけど、

どういう場所なのかは一目でわかったよ。


似たり寄ったりの内装だったから


白い壁、収納棚、テーブル、椅子

床は暗い茶色の木みたいなナニカ


人が住む家、

ボクの新しい家だった。


そこの小さな寝床に預けられた。


訳もなく不安になった。

体の内からせり上がってくる衝動に

抵抗なんて出来るわけもなかった。


ただ

ふあん

ふあん

ふあん

だれかがくる

ふあん

なく

あったかい

・・・・・


それの繰り返しで


むずがゆくなった

きもちわるくなった

なにかがたりないとおもった

よぶんだとおもった


その瞬間、全部泣いて、寝た。


この時間がすごい長かった気がする。


自分で自分を認識できるまで

結構な時間がかかった。


でも、認識できるようになったら、なったで、


あれ?・・・・どうなってるんだ・・・これ・・・・ってなった


ボクってもっと

高い視点じゃなかったっけ?


もっと重くなかったっけ?


こんなに泣いてばっかりじゃなかったはずだよね?


ここまで小さくなかったはずだよね?


でも、

現実は・・・・って

また泣いてた。


ボクを抱きかかえる誰かが

ボクの体を揺らして、暖かい言葉をかけてくれたけど、


結局、根本的な解決なんて

今の今までできなかったから、

その時だって、そのままなわけで、


どうしたらいい

どうしたら

どうしたら


そう思って

涙が止まらなくて

泣き叫んでいた。


ボクだけがそうなのかもしれないけど、

こういうのの性質が悪いのはさ、


そうやって迷惑をかけたところですら

こうやって覚えているところなんだ。


みんな、赤ん坊のころのことなんて

忘れてしまえるのに


ずっと覚えちゃうんだよね。


よく抱き上げられたことも、

よく話しかけれたことも、


そして、あの二人の腕の中の居心地がとてもわるかったことも、


ある時、いっぱい喋りかけられたんだけど、

何を喋っているのかさっぱりわからなくて、


でも、やろうとしていることはすぐにわかったから

すぐにおうじて、


ふたりが口を開けるのを真似して

音を出したんだ。


まま

ぱぱ


って、


こういうのは、

どこでも同じなんだね


よろこばれた

とてもとてもとても


ぎゅってされた。


でも、そうするとね。

やっぱり頭によぎるんだよ。


後二人、

そういう呼び方をした人たちがいた気がして

頭にチラついて


まだあの時は

それすらおぼろげだったけど、

また泣いちゃった。


違う二人に抱かれる気味の悪さと

あの二人が居なくなった不安で


わんわん泣いて、

あの時のあの二人の顔も覚えてるんだ。


どうしたの

どうしたのって


どうにか泣き止んで・・・


すっごい胸が苦しかった


この人たちが向けてくれた愛は

どうやったってボクを癒してくれなかったんだ。


癒されない自分がすっごい嫌になった。

申し訳なかった。


そんなことまで、

覚えちゃうんだ。



ボクにとって、

赤ちゃんの時期って

そういう時間だったんだよ。


頭に、体に

なだれこんでくる

景色と音と、匂い、触り心地、味


新鮮な気もするけど、

多分一度味わったことのあるもの


前よりきっと刺激は少なく、

覚えのあるもの


それでも、

一生で一番、重くて、多くて、

わからないもの


どうしようもなく

それに振り回されて、

それと相対して、疲れて、泣いて、寝る。


それで手いっぱいで、あっという間だった。


長い様で、あっという間だった気もする。


ボクはその中で、色んな事にも気づいていったんだ。


例えば、ボクが住んでた場所がマンションで、

それの一室にいるって。


窓の外に広がる景色で気づいた。


前もそうだったし。


それにすっごく広く感じた

実家も、実はそこまで広くなかった。


狭いわけじゃないけど、

ハイハイで進んだ当時のボクですら


頑張れば、隅々まで

行けるぐらいの場所だった。


まあ、普通の家だよ。


後、ボクの名前、

クレア・ガードナーって言うんだ。


あの二人に、そういう音で呼ばれていた。

それが自分だって気づけた。


不思議だよね


前はマコトだったのに。


そういえば、

その時ぐらいだったっけな、

前の事を思い出したのも。


あた・・・ボクはマコトだった。

『姫屋 誠』、だった。


今の身体とは何もかも違う、


というか、住んでるところだって

まるで違う別の誰か


それが今や

『クレア・ガードナー』、

立派なこの世界の大人だ。


当時は赤ちゃんだったからか

本当にどうしたらいいんだかわかんなくて、


でも、

前の世界の事を思い出すたびに

意識や、視界や、頭が

段々と整理されてきていってさ。


不安が増えてった。


そりゃそうだよね。

だって、あの時の自分は17歳


少なくとも、今より子供じゃなかったし、

もうちょっと世界に慣れてた。


その記憶が

感覚とは遠い所にはあるにせよ、

自分に戻ってくるんだから


意識は言葉を紡ぐし、

視界は意味を探してくれる。

頭は余計なことを考える。


でも、感覚はあかちゃんだから


あの2人に抱かれると

なんだか変な気分になって

泣いちゃう。


不安で不安で、

それをどうしようもないから

泣くしかなかった。


いっそ、

前の事なんて

思い出したくも無かったな。


意味とか

思考とか

別にいらなかった。


ここで新しく

見つければよかった。


だけど、

二人の友達のことを、

人見知りのマコトと、自分と

一緒に居てくれたあの二人の事を思い出しちゃうと

そうもいかなくなって。


名前は、ジンとカズユキ。


中学の時にカズユキと知り合って、

彼の幼馴染であるジンとも友達になった。


変わり者のジンと

面倒見が良くて優しいカズユキ


2人とも、あた・・・じゃなくて、ボクとは違って、

元気で、明るくて、活発で


2人がやろうとしたことに巻き込まれて

先生に一緒に怒られたことだってあった。


そこまで、ママ以外の誰かに怒られるなんてなかった。

怖かった。


けど、二人が横にいるんだって思うと

怖いって感情がスってひいて、冷静になれる、勇気が湧く、

そんな友達だった。


そんなことを思い出すと

気になって仕方なくて、でも、不安になるのは嫌で


毎日、地を這って、地に手をついて、

四つん這いで生きている間、


そんなことをずっと思っていた。


だから、2歳になるぐらいまでは変わらず、泣き虫がひどくて、

いい子にはなれそうにも無かった。


だけど、そんな自分でも、

2人に喜ばれることがあったんだ。


本棚にある本をね、

その表紙に何か見覚えがある気がして、

よく見てたんだけど、


よく見ると、少し日本語だったり、英語っぽくて、

なぜか読めてしまう、似た意味で使われるとわかったんだ。



中身が気になって、読んでみると、

自分で驚くぐらいに、するする頭に入ってくる。


それを二人に見せてあげると、喜ばれた。


自分が立ったり、

喋ったりすると、

喜ばれた。


数を数えると

沢山褒められた。


だけど、

足し算やら引き算までやってみせると、

驚かれた。


確かに、二歳ぐらいの子が

そんなことしたら驚くのは自然だったかな


そういう時は、

褒めはするけど、一周まわって不思議そうな目で、

見られることもあった。


気味が悪いと思うことがあっても、

あの二人がボクを愛してくれてたことは事実だったから、

喜んで欲しかったし、

喜ばれるのが嬉しかったから、

そういう事を続けてた。


それに、それ自体普通に楽しかったし、

本もよく読んでた。


でも、そんな風に過ごしていると、

いつしか、外に連れ出されることが多くなって、


家以外の場所に居ることが増えた。

家族以外の人と会うことが増えた。


何だか学校の試験みたいなものを解かされたり、パズルを解かされたり、


そんな風に過ごしていた時、

ある白衣の人の前に


家族三人で座って、

話を聞くことになった。


その時のことは

今でも鮮明に覚えている。


ずっと、

褒められていた。


頭がいい的な感じだったと思う。


でも、

自分を指して、その人は


「転生者」


そう言った。


その言葉は、ここの言葉だった。

それでも、もう何となくわかってしまった。


もう

その頃には読み書きだって

出来たぐらいだったから。


何でも、

この世界の人って、

自分がいた世界、「元世界」の人が

突然、この「現世界」にやって来て、繁栄した結果の子孫らしいじゃん?


それがちゃんと事実として公表されて、

もうニ、三十年経つらしいし、


ボクみたいなやつの見分け方も

確立されてるらしくて


ボクが答えた

あの問題の中に、

この世界の常識とは違う

前の世界の常識問題が、

違和感のない形で何問も潜り込んでたみたい。


ほんと、意地悪だよね。

なんでそんなことするかなあ・・・


まあ、いっても仕方ないんだけど


それで、

その瞬間にね


自分がどうやって

ここに来たのか思い出したんだ。


あの日、

ジンとカズユキと

いつも通り、一緒に学校から帰っていた夕暮れ


家が近い二人と別れて、

自分の家に向かっていた時のこと、


夕暮れで堕ちてきた影を、

少し寂しくなって、肩を落とした自分の、黒い写し見を

ぼんやり眺めていた、


ボクはその時思いだしたんだ。


(あ、シャーペン、借りっぱなしだった。)


筆箱を忘れて

2人から色々借りてたのが、そのままだったこと


別に明日返せばいいんだけど


(返しに行こ)


そう思って、来た道を振り返った。

駆け足気味に、歩こうとしたんだ。


でも、そしたら、


(え?)


遠く遠くからやってきた

舗装された道路も、コンビニも、住宅も

標識も、信号も、雑貨屋も、

地面も、空も、


何もかもを包む

白い光が、膨張する光が自分を包んだ。


その次からは

ここだった。


そうやってここに来たんだ。


それが頭にふっと湧いて、

それに憑りつかれた。

それが頭を埋め尽くした。


でも、はっと気づいて、

周りを見たら、ちょっと大変なことになってた。


まず、正面の白衣の人が見えたんだけど、

こっちを見てなかった、

両親を見てたんだ。


ボクの横にいた二人を見ていた。



言いづらそうな顔をしてたよ、

なんでか申し訳なさそうな顔だった。


ほんとに、そんな顔しないで欲しかった。


なんで、そんな顔するんだろう

別に、ただ事実を伝えただけでしょ?

それがあろうとなかろうと何が変わるんだろうって


そう思ったけど、

横にいた二人を見た時、


そんな顔にもなるな

って納得できた。


あれは拒絶じゃなかった。


憎しみやら

軽蔑みたいな


そんなものでもなかった。


もちろん、

喜びでもなかった。


感動したわけでも

感謝したわけでも


もちろんなかった。


驚いていた。

戸惑っていた。

怖がっていた。

躊躇っていた。


迷っていた。


こっちを見る目が、変わった。


色々、気になるところがあったのかな

合点がいくところがあったんだろうな

きっと


横にいたはずの二人との距離が

べったりとくっついて離れない、

決してどこへも行かないだろう、

触れられる距離に居続けるだろうと思っていた二人が

ずっと遠くに行ってしまった気がした。


まあ、自分の子供だと思ってた奴が

実はその中身は、他の人として何十年か生きたかも知れない他人でしたって

言われたら混乱するよね


帰りの道、


2人に挟まれて、

2人に手を握られて、

帰ったけど


熱いぐらいに思っていた

二人の手の温もりは、

その時から生温くなってた。



そこから、ボクはどうなったと思う?


酷い事言われた?

無視された?

暴力を振るわれた?

家を追い出された?

私たちの子供じゃないって言われた?


そんなことなかったよ

一切、なかった。


あるわけない。


あの人たちは良い人だから。


そんなことするわけない。


家だって

電気代とか、ケータイ代だって

ご飯だって、洗濯だって、教育費だって、


親が子供にするようなことは

全部やってくれた。


そういう項目で

チェックして行ったら


減点なんて

ほとんどなかった。


むしろ、他の家族よりも、恵まれてる方だと思う。


良い両親だと、

感謝すべき人たちだと

客観的に見たら、そう確実に言える。


だけど、

三歳の時、弟が産まれた時、


あ、ボクはあの子と違うんだって

何となくわかっちゃった。


家族の風景を監視カメラで録画して、監視してたって、

ほとんどの人にはわからないだろうけど、

何となく僕にはわかった。


見る回数が違った。

こっちを見る回数が違った。

父の見る目が違った。

母の見る目が違った。


ご飯を手渡す時の丁寧さが違った。

弟の方が雑だった。

ボクはお客さんみたいに渡された。


話しかけられ方が違った。

弟の方には、ノックをした後、返事なんてあんまり待ってなかった。

ボクの部屋に入る時は、返事を待ってから、絶対にボクが返事をした後に入ってきた。


弟は何回勉強しろって言われたのかわからないけど、

ボクは勉強しろなんて、言われたことなかった。

する前にやってたって言うのはあるだろうけど。


やっぱり、ボクの方が、丁寧に接されることが多かった。

だけど、ボクの方が大切にされてるかって思ったら

それは多分違う。


今から話すけど、

ボクが剣道の大会で優勝した時、

やったな

よく頑張ったね

って褒めてくれたけど


弟が志望校に合格した時、

母親と弟は一緒になって泣いてたし、


その晩は父親も調子に乗って

お酒の量が増えてた。


何かがやっぱり

ボクと、弟じゃ違った。


そんな兆しがどこかにあった気がした。


そう思いだした頃には、

もう前の世界の事も思い出すことは少なくなってた。


学校が始まった時、

ボクは六歳、弟は三歳、


その時から、

ボクは一人で朝、ちゃんと起きた。


朝ごはんだって、

お母さんが作ってくれたやつをいち早く受け取って

綺麗に食べて、お皿を洗った。


頂きますとごちそうさまを言う文化は

ここにはなかったけど、お礼はたまに言ってた。


もうちょっと大きくなったら

自分で作った。


家庭科の勉強で習ったから

やりたいって言って、自分で作り始めた。


お弁当が必要な時も自分で作った。


広めのキッチンだったから

2人が別の事をやってても良かったけど、

できるだけ、作り置きを用意して、

さっさと弁当に入れて、キッチンを空けた。


帰ってきたら、

絶対に手洗いうがいを忘れずにした。


宿題をやって、復習をして、運動もした。


休んだりしないように

健康でいた。


学校の中でも、真面目だった。

先生の話はちゃんと聞いた。

寝たりなんて絶対しなかったし、私語もしなかった。


成績上位でいることにこだわっていた訳じゃないけど

ずっと一位だったから、そこから落ちないようにした。


困ったことは、

困らせるようなことは、

駄目なことは


絶対にしないようにした。


大変だったけど、

だからかな


余計な悩みなんて

ほとんど湧くことなかった。


まあ、それは

もっときつい悩みが

一つあったのもあってなんだけどね。


「え、アイツって転生者なの?」


誰かがそう呟くのを聞いたんだ。


二年生だったかな、

気づかれたんだ。


ボクが転生者だって


ヒソヒソ後ろの誰かがそう話してて、

その瞬間、身体がビクンと跳ね上がったの、

今でも覚えてる。


「だって、めっちゃそれっぽくない?」


正直、

何でわかったの!?

と思ったけど、理由はなかったみたい。


けど、偏見って意外と馬鹿にならないみたいだね。


偏見って

ある種、経験則だから

たまにドンピシャで当ててくることもあるみたいで、


この子達は、

多分、何となく聞いた偏見を寄せ集めて、

ボクにそれを当てはめた。


「え?ってことは、ガードナーってあんなんだけど

 中身、おじさん?」


そういう印象的で、劇的で、面白い設定まで盛り付けて、

ボクをそういうものにした。


そっから、

ボクは

ボクになった。


その疑いに


「ば、バレちゃったか―」


ボクは耐え切れなかったから。


もうあんな顔、誰にもされたくなかったから

先に言ってしまった。


だから、そういう風に自分から言った。


「え、まじなの!?」


落ち込んでる人も居た。

大体は、驚いてるか、面白がってるか、

そんな感じだった。


内心、言ってほっとした自分も居た。


だからって、別にここからの人生、

それのおかげで楽しくなったことなんて

全くなかったけど。


変に周りが期待してる時は

トイレの行く方を間違ったり、

男子たちが好きなエッチな話に興味があるように振舞ったり、

したからかな、


飲んだこともないお酒の話とか、

大人向けの話だってしてさ。


正直、すっごい息苦しかった。


でも、皆の興味を惹ける話をしたり、

有益だって思わせないとさ

いじめられちゃうじゃん?


だから、先にそういうことを言ったし、やった。


皆が何を望んでるのか

ずっと考えてた。


陰口を言われる時だってあったよ?


けど、知らないふりをした。


聞こえるか聞こえないかの距離で言われたら

聞こえないってことにしていた。


でも、聞いてないと

何を期待されてるかわからないから


ああいうのも、

ちゃんと聞いてないと駄目なんだ。


けど、何があっても明るくいたら、

そしたら、結構、交友関係は出来たんだ、

友達・・・・というか知り合いはできた。


大分、距離は取ってたけどね


塾があるから~とか

習い事があるから~とか

こういう生まれだから期待が重くて~とか


そんなこと言って、家に帰ってた。


まあ、勉強はしてたよ?

運動もやってた。公園で筋トレしてた。


途中から見かねた両親が

やりたい習い事ないか

って言ってくれたから、


剣道と塾だけ行かせてもらって、

嘘からでた誠にしてもらった。


まあ、そんな感じで、

前でいう小学生が過ぎていった。


その間に、やりたいことは早めに見つけた。


できるだけ真っ当で

皆に誇れるもの


警察になろうと思った。

この世界だと、前は騎士と言っていたらしいね。


だから、剣道にしてもらったのもあるんだ。


それなら立派で、誰からも文句は出ないでしょ?

両親的にも嬉しいだろうし


だから、それに向けて勉強してたんだ。


小学校の途中から意識して、

中学に入ってからはそこにずっと意識を向けていた。


でも、勉強だけやってても、

がり勉とか言われて、

周りと上手くいくわけも無かったから、

他だって頑張った。


まず、身綺麗にした。


中身を知られると、終わりなんだけど、

初対面の認識って大事じゃない?

それに、この見た目だと

知られないうちは、

肯定的に見てもらえるし、

綺麗にしてるのが普通だから

まず目立たないようにした。


前と違って、

この世界の学校って

飛び級もあるから


あんまり長い間、同じヒトと関わるわけでもなかったし


少なくとも

変な人として過ごす覚悟はボクにはなかったんだ。


まあ・・・正直、ちょっと楽しかっただけなのかもしれない。

自分が目に見えて変わるのが、楽しかっただけなのかも。


考えてる時間、結構夢中になれたし

着飾るって楽しかった。


でも、あんまり着飾り過ぎてもいけないって途中で気づいて、

勉強して、お洒落でも、ダサさでも浮かない丁度いい塩梅を

いち早く探した。


二度と


「気合入れ過ぎじゃない?」


って言われないようにした。


転生者ってバレて

「中身おっさんの癖に」

って言われた時は、流石に泣いちゃったから

余計にね


それから品行方正に努めた。

これも、浮かないためだね。


基本的にボクが接してたのって

年上の人とか、先生が多かったから


挨拶から、礼儀から、言葉遣いから、振る舞いからちゃんとしたし、

日頃から、そうした。


先生たちからは

良き生徒として、見られるために


他の生徒からは

なんか嫌な目で見られることもあったけど、


もうその時は距離を空けてたし、

さっきも言ったけど、さっさと上に上がっちゃえばいいしね


例え、相手が悪い時でも、

こっちは紳士でいるようにすれば


その方が気持ちが良いし、

その方が物事はすんなり進む、


そう思うようにした。


そうやって、過ごした。


勉強も結構頑張ったし、、

続けてた剣道でも結構な成績も残したんだよ?

普通に嬉しかったな。


まあ、

ボクは転生者

って知られると、


すぐ

「まあ、そうだよね」

「当然だよね」

「ガードナーは別枠だよね」


って顔されたけど。


ボクに負けた準優勝の子が、


仲間と集まって、悔しがったり、

惜しかったよって励ましたり、

あの子たちは青春してて、


比べて、ボクはぽつんと一人で

場違いなんじゃないかってぐらい

近くには誰もいない。


まあ、学校の部活とかじゃないから

後輩とか、先輩とか、そういうのあんまりなかったし、

っていうか薄かったし、


ボクとは、あんまり皆、話したそうじゃなかったし・・・・・


でも、なんだろうな。


ボクって、同じ「ヒト」とは思ってもらえなかった感じがする。


鼻から、同じ土俵で誰も

戦おうとしてくれないって言うか・・・・・・


まあ、でも、ボクも正直、

自分が普通に人生一回目で頑張ってるところに、

前世の記憶がありますって人がやって来て、

色んな大会で優勝して行ったら

そう思っただろうな


そんな奴、ズルだもん。

仕方ないよね。


・・・・・・ああ、そうだ。

中学校の途中からは、お金も稼いだんだよ?


せめて、

服とか、ライブのチケットとか


そういう

自分がやりたいだけ、

見たいだけ、ドキドキしたいだけのものは

自分のお金でやるようにしたくて。


そういう風に中高は過ごしてた。


振り返ると、

もうその頃になると、

前の世界の事なんて

忘れてた気がする。


だって、毎日忙しくてさ

昔のことなんて

ずっと思い出すことすらしなかったよ。


不思議と体調が崩れることも無くて

案外、やり通せちゃったのもあるけど

大変だったなあ・・・・・




そこを経ると、次は大学、

受験勉強は、前の方が大変かもね


前の世界だと

本番まで時間があったあの時でさえ、

結構、必死にやってたように思うけど、


今回はそうでもなかった。

割とすっと入れた。


特に受験に向けて、頑張った記憶もなくてね、


こういうこと言うと、

転生者っぽいとか

言われちゃうんだけどさ


勉強ってずっとやってたから

まあ、そんなに苦労しなかったよ。


大学だと法律の勉強が主だったかなあ。


後は、体育とか、心理学とか

一番印象的なやつだと

実戦的な魔法の勉強かな


専門施設に行って、

初めて魔法を使った。


キミは・・・名前とかそれっぽいけど、

今はそういう名前を付ける人も居るから

どうなんだろう・・・・


でも、同じだとしたら

わかってくれないかな


この世界、

あまりに前と同じすぎない?


普通に都市だし、

魔獣とか、何年も前に全部家畜化したか

滅ぼしたらしいから


全然、ファンタジー感ないし


かと思ったら、

急に、当たり前みたいにさ、

魔法とか魔導とか出てきた時、

びっくりしない?


小学生の時とかに

普通に魔法の授業とかあって

ほんとびっくりした。


一応、家電とかは、

魔法を代替する機械で動いてるらしいし、


それの動力になってる魔力のインフラって

昔、空を飛んでた竜を生け捕りにして

吸い上げてるみたいだから


よくよく見たらファンタジーしてるんだけどさ。


ボクらって

生まれた段階で魔力を制限するマイクロチップを

全員の体に埋め込んでるじゃない?


専用の施設に行ったり、特定の職業に付くとか、資格を取るとか、

そう言うことしないと、法を犯さない限り、魔法に直に触れる機会ってないから

全然、異世界感ないよね


魔法も魔法でいざ使ったら、

めっちゃつらい運動とめっちゃムズイパズルを

同時にやるみたいで、

めちゃめちゃ大変だったし

全然、思ってたのと違った。


まあ、楽しいけどね?

魔法撃つの。


でも、まあ、最初の日は死んだようにベッドに倒れ込んだなあ。

今じゃ、結構慣れたけど、


・・・・・そっからは・・・あれ、

案外語ることないなあ・・・あははは・・・


一人暮らし始めて、


勉強して、

ここでいう弁護士資格みたいなの取って、

ちょっと企業の法務部で働いて

連邦公務員試験を受けて、

合格して、連邦捜査官になって・・・・・


・・・19歳で大学卒業だから・・・・・

・・あれから八年たつのかあ・・・あっという間だったなあ・・・


・・・何にもなかったなあ・・・・・


いや、色々あったように思うでしょ?

これが何にもないんだなー


大人って、別にボクの出生なんて気にしないし、

だからと言って、深く踏み込んでも来ないし、


何にもないんだよね


ただ仕事して

帰って寝て

仕事して

帰って寝て


念願だった警察にも、

結構、エリートっぽい所に入って

今こうして、キミを見張ってるわけだけど、


なんか、やってって言われたことを毎日、こなしてるだけで、

毎日が終わっていって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ファッションとかも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あんまりできなくて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・一切、誰にも、話してこなかったんだけどね?


ここまで、あんまり女の子っぽい話してこなかったでしょ?

ファッションは、まあそうか


でも、恋バナとかしなきゃったじゃん?


まあ、いっちゃうと、何にもないんだ。


そういうこと、したことないんだ

誰かと手を繋いだことだってないんだ・・・・・・


興味がない?

やる気がない?

ほんとは望んでない?

しなくたって生きていける?


・・・・そうかもしれないけどさ・・・

でもさ・・・僕はさ・・・・・


転生者だからってさ

別に自分の身体に、そういう興味なんてないよ

興奮したりしないよ、自分は自分なんだよ・・・・・・


カズユキとジンの事なんて

全然考えられなかったけど、


今はもう思い出せないんだ。


なんでって?

忙しすぎたから?


それもあるよ?

前の世界に戻ろうとか、

そのためにどうしようとか

あの二人はどうしてるのかなとか

気にする暇なんてなかったから。


第一、元世界への行き方みたいなのは

もし見つけた研究者がいたら、

あらゆる賞を総なめにするって言われてるぐらいなんだから

ボク一人にどうこうできるものじゃないじゃない?


転生者だって、ボク一人だけじゃないし、

何億人に一人ぐらいはいるんだって。


でも、帰っていったみたいな話は聞かないしさ


調べたら

そんなことすぐわかるし、

どうこうする気はもうないんだ。


もう気にするだけ無駄だし・・・


でも、違う。違うんだ。


たまには思い出した時もあってさ、

アイツらの事


一緒に居た時の事

思い出したらさ


心臓がバクバクするんだ

・・・・友達として見れないんだ。


あんなに優しくされたの

あれ以来ないんだよ・・・・・・


こうなるってことは

アタシってもう・・・そういうことだからさ


小学生の時、

テレビに映った男性アイドルを見て、

心臓がびっくりしたのは、気のせいじゃなかった。


気になる男の子が

アタシが転生者って事を知らなかったみたいで、

一緒に遊ぼうって誘ってくれた時、

胸がときめいたのも、やっぱり気のせいじゃなかった。


可愛くなりたいって思ったのは、

血迷ったわけじゃなかった。


・・・・・・・そういう風に思ったのはボクだし、

しなかったのは、他でもないボクなんだけど・・・・・・


そうだよ、ボクのせいだ

ボクが勝手に気を遣ったから

ボクが勝手に浮くのを嫌がったから

ボクが嫌われたくなかったから


ボクのせいだよね

ボクが悪いんだよね

ボクが勝手に・・・・・・・


はあ・・・・・・・・・・27かあ・・・・・・・・・・







・・・・・アタシも恋したかったなあ・・・・

ごめんね

キミにこんなこと言っても・・・


っていいか、別に聞いてないだろうし

今、キミは地蔵と一緒だもんねー


あーあ・・・・・・

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