第42話 スポンサーは国王陛下
「猫カフェとはなんだ?」
「はい、陛下。猫と遊んだり触れ合ったりしながら、飲食が可能な癒しの空間でございます」
「なんとっ!」
陛下の目が、ぐわっと開いた。
うんうん、欲しいでしょう。猫カフェ、必要でしょう。
よし、ここが攻め時だ。
「たとえば郊外のヴィラ。敷地内が宿泊客だけのプライベートな空間。贅沢にくつろぐことのできる一室」
「ふむ……。視察のときの宿泊施設……と考えればいいのか?」
「はい。宿泊も可能ですし、数時間の滞在でもよいでしょう。そうですね、裕福な商人や貴族の別荘を想像していただいてもよいかと」
「なるほど……」
「そのような場所にお猫様が数匹自由に過ごしている。宿泊客はお猫様と戯れたり、おやつを上げたりしながら、自由にくつろいでいただきます。お茶を飲み、ゆったりと読書もよいでしょう。その時に、そっとお猫様が忍び寄り、お客様の膝に乗る……。つまり、お猫様と魂の主従契約を結ばずとも、お猫様と戯れることが可能」
「おお……っ!」
あら、陛下だけでなく重鎮の皆様までもがうっとりと、夢を見ていらっしゃるわ。
「お猫様は騒がしい場所は嫌いますが、奥様がたやご令嬢がたのいつも通りのお茶会を、猫カフェで行うのもよいでしょう。普段の社交の場にお猫様が紛れ込む……。恋のお話などをされている若いお嬢様たちのお膝に乗るお猫様。足元でじゃれつくこともあるかもしれません……」
「ま、まあ……」
王妃様もうっとりとしている。
よし、プレゼンは順調だ。
この場で不機嫌な者はお父様だけかな。
ご自分の出番が先だと、イラついているのだろう。時間を無駄にするのが嫌な人だからね。
だけど、猫カフェはわたしの念願なのよ。
希望通りの猫カフェを出店するためにはお金が必要。
そりゃあ、ミシンで稼いだお金を全部使ってもいいんだけど。
国王陛下っていう、太いスポンサー様がいれば。
一号店、二号店、三号店……と、出店も可能になってくる。
国中に、支店を作りまくるのも可能になるだろう……ふっふっふ。
だから、ちょっと待っていてお父様。
「ほかの国にはない、我が国特有の癒しの場になれば……」
「他国の要人たちも、喜んで過ごすかもしれんな」
「はい、たとえば国と国との関係も、好転するかもしれませんわね……。猫は、わが国だけのもの。他国へは渡さず、この国に来た時だけ、戯れていただくもの……。さすれば我が国が近隣諸国に対して優位に立つかもしれません……」
うっとりとしている方、他国への対応を計算している方。うん、妄想……いえ、空想の翼を広げてください。
ふふっ! 猫カフェ始動しますわよー。
「そのような場所を作ることがわが使命。カッシーニ伯爵家の領地にて、最初の猫カフェを作ろうとは思ったのですが、それでは陛下がたが気の向くままにお越しいただくのは無理。王都中心部の屋敷を借り上げるのも、カッシーニ伯爵家の資産では無理で」
「王城の西にある離宮を提供しようではないかっ」
話が早いな陛下。
それだけお猫様を求めていらっしゃるのね。
ふふふ。
猫カフェ一号店のオープンもすぐかなー。
だって、国王陛下のお墨付きだものねえ。
陛下もお望みなら、最速最短で出来上がることだろう。ふっふっふ。
と、受かれている場合ではない。お父様のご機嫌が……。
「ありがとうございます陛下。離宮を使わせていただき、お猫様が住みよい環境を作る。そして、陛下や重鎮の皆様、お客様方の憩いの場を提供する……。それらの采配は、我が父、ヴァレンティーノ・ディ・コズウェイにお任せいただければ……」
「許すっ!」
陛下、即答。
まあでもね。わたしのお父様ならね。顧客やスポンサー様の満足のいくものを作ってくれるでしょ。
わたしも「こんな感じのでよろしくー」とお父様に投げちゃえばいいだけで楽だし。
お父様は「まず対象となる離宮の視察を、娘とともにさせていただいたうえで、猫カフェとやらの設立計画書を書かせていただきましょう」とか何とか、即座に動いてくれている。
うん、さすが魔王様。仕事が早い。
お父様に任せていれば、まず大丈夫だと思う。
それだけじゃなく。
猫カフェの功績をもってして、陛下の覚えが良くなって、お父様がバリバリ国政にでも携わる……のは無理でも、陛下や宰相様や国を動かす重鎮の皆様と懇意になってくれれば。
何か知らないけど、爵位をあげるとかいうお父様の野望にも近づくでしょう。
うん、さっさと伯爵位でも、自力でゲットしてくれれば。
カッシーニ伯爵家を、乗っ取る必要はなくなるよね?
わたしは、アスランとお猫様と一緒にカッシーニ伯爵家でのほほんとしていたい。
お父様は目的のためにがんばって。
相互利益?
三方良し?
なにはともあれ、全部ひっくるめてハッピーで行きましょう!




