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第31話 牛乳と砂糖を混ぜるとね 

「ねえ、ニルス、ケント。あの箱みたいなの、なあに?」


棚の一角に、ドドンと大きい木箱みたいなのがある。

木箱というか……ファンタジーマンガなんかでよく出てくる宝箱みたいな形。

ほら、実はミミックっていうモンスターで、宝箱を模していて、冒険者がその宝箱を開けた瞬間に襲い掛かってくるっていう、あれ。

その形によく似ている。


「開けてみても大丈夫ですよ。牛乳とかヤギミルクとか、冷やしておいた方が良いものの、保管箱です」

「へ?」


冷やしておいた方が良いものの、保管箱?


恐る恐るふたを開けてみる。すると……確かに、箱の中身……空気は、ちょっとひんやりとしていた。

え? なにこれ。電気もない世界に冷蔵庫?

まさかっ!


「箱の右側に氷を入れておきまして、そして、左側に冷やしておきたい食品を入れる箱、という感じのものです。我々は保冷箱呼んでいますが」

「あーっ! クーラーボックスっ!」


なるほどっ! キャンプとか、釣りのときとか、日本にいたとき使ったわね。

とりあえず、入っていた牛乳を取り出してみる。

瓶入り牛乳は、そりゃあ冷蔵庫で冷やすみたいにキンキンに冷えているというわけではないけれど。

それなりに冷えている。

そう言えば、お猫様のご飯を作る時に、出してくれたヤギミルクも、ここで保管されていたのかぁ……。そうだよねえ。常温保存なんてしていたら、あっという間にダメになりそうだもの。


「すごいねえ。でも氷なんてすぐ溶けちゃうから……、ずっと冷えているわけでもないんでしょ?」


うん。氷を大量に入れたとしても、四時間とか、半日とかくらいしか、保冷できないんじゃないの? それを毎日冷やし続けるって……大変。というかその氷はどこから調達しているんだ? 近所に氷室でもあるの?


「あ、いや。カッシーニ伯爵家にはケントがいるので。氷の補充はしなくても大丈夫なんですよ」

「へ? ケント?」


若いほうの調理人。ニルスと一緒にお猫様のご飯も意欲的に作ってくれているんだけど……。


「ほんの少しですけど、魔法使えるんです」

「えっ! 魔法使いなの⁉」

「いやあ、液体を凍らせることしかできなくて……」


使いどころのない魔法で、ここの調理場で、ようやく役に立ったくらいで……なんて、ケントは言うけど。


「あ、あのー、ケント? もしかして牛乳とかも凍らせることができる……?」

「やったことないですけど……。やってみますか?」

「う、わわわわわ、ちょっと待て。牛乳をそのまま凍らせると不味いから」


疲れている場合じゃない。さあ、レッツクッキング!


まずは鍋に牛乳を入れる。そして、砂糖も入れる。比率は四対一くらいかな……? もうちょっと砂糖を多めでもいいかな……。


まあ、味の調整は後からでも。


で、鍋を火にかける。ふつふつして来たら、弱火にして、そのまま木べらで練りながら煮詰める。水分が蒸発して、そこが見えてきたら、火を止めて、水を張ったボールに入れれば、はい、練乳の出来上がり。


ニルスとケントに試食してもらった。


「う、うまい……っ!」

「甘くておいしいでしょう」


だけど、これで終わりではない。


できた練乳に、牛乳をまぜてから、グラスに入れる。


「これ、これをね、凍らせてほしいの」

「はい、わかりました」

「糖分が多いから、ガチガチには凍らないはずなので、冷えればそれでいいんだけどね」


作りたかったのは、ミルク練乳かき氷アイス的なもの。

そこにフルーツなんかを添えれば、見栄えもいい。


できたそれを、試しにカッシーニ伯爵やアスラン、それから使用人のみんなにも試食してもらった。


皆さん、目を見開いて、無言で、ものすごーい勢いで食べていたわ。


「陛下にお出しするケーキ代わりにこれはどうでしょう?」


カッシーニ伯爵の承諾もできたというより「こ、これをもう一つ、もらうことはできないだろうか……」って言っているくらいだから、相当気に入ってくれたのかしらね。

暑いと冷たいものが美味しいものね。

工場視察で疲れた体に甘いものも沁みるだろうし。


そういうわけでおやつはオッケー。


着々と、準備はできている。


あとは服を……って、これもミシンでちょろっと作るかぁ。あ、猫服も、新調しよ。

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