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第18話 対決! ステファニア父!

「うるさいですわねえ……。なにごとですか、カッシーニ伯爵」


 カツンコツンと、わざとらしく靴音を立てて、わたしは玄関ホールまで階段を下りていく。


「二階まで、そちらの男性の声が響いておりましたが……?」


 じろり、と。ステファニアさんのお父さんを睨む。


「お前たちは、どこの誰? このカッシーニ伯爵家に招待されるような身なりではないようだけど……?」

「キアラ嬢。すまない。この者たちは私のほうで対処をするので……」


 カッシーニ伯爵が、わたしに頭を下げる。それを見ていたステファニアさんのお父さんが、わたしのほうが上位の者なのかと勘違いしたらしい。


「この屋敷で働いていたオレの娘が帰って来ねえんですよっ! 出るところに出て、訴えてもいいんですけどねっ!」


 あら、まあ。伯爵の声を遮るとは、なんて不躾な。なーんて言ってやっても良かったのだけれど。一応、お話は聞きますよー的に、にっこり笑ってみる。


「まあ、それは、心配ねぇ。娘さん? お名前はなんておっしゃるの?」

 

 心配顔の演技で。

 するとわたしなら話が通じそうだと踏んだのか、小娘なら丸め込めるとでも考えたのか、ステファニアさんのお父さんは、一歩前に出た。


「はい、ステファニアです。可愛らしい顔の娘で、この屋敷の坊ちゃんと懇意に……」


 ステファニアさんのお父さんの言葉が言い終わらない前に、わたしは笑みから怒りに表情を変えた。


「そう……、あなたたち……あのステファニアの、親、なのね……」


 ぎろりと二人を睨む。

 ステファニアさんの両親は「ひいっ」と叫んで後ずさった。


「……わたしはね、この屋敷に嫁いできたの。もちろんカッシーニ伯爵家の跡継ぎ、ジュリオ様の妻になるためよ」


 低く唸るように、言う。


「それが、どう? いざ嫁いで来たら、肝心のジュリオ様は、ステファニアとかいう女と駆け落ちですって」


 嘘だけどね。いなくなったのは、わたしが二人を猫化したからだけど。

 そんなことは当然言わずに、おもいきり怒鳴りつける。もちろん演技よ。


「ステファニアが……、お前たちの娘がいなければっ! 今頃わたしは、しあわせな結婚をして、ジュリオ様と夫婦になっていたというのにっ!」


 いやー、今となっては、ジュリオ様と夫婦なんて、冗談でも嫌だけどねー、あっはっは。

 なーんて、顔には出さないわ。

 そのまま怒りモードの演技、継続よ。


「すべてがステファニアのせいよ。あなたたちは、あの女の親、なのね……。だったら、この不始末、どうつけてくれる、つもり、なのかしら……」

「そ、そんなことを言われましても、うちの娘をだましたのは、こちらの、カッシーニ家のご令息のほう……」


 ぎろりとわたしに睨まれて、ステファニアさんのお父さんは口を濁した。


「馬鹿なことをおっしゃらないでくださる? わたしが、このヴァレンティーノ・ディ・コズウェイ の娘であるキアラ・ディ・コズウェイの夫となる名誉を捨てて、ステファニアなどという平民の小娘を選ぶなんて、本当ならあるはずがないじゃないの。お前たちの娘が、ジュリオ様を誑かしたに決まっているわ」


 と、わざとらしいセリフを言おうとしたのだけれど、その半分も言えなかった。


 なぜなら、わたしがお父様の名前を発言した時点で、「ティ、ティーノ商会の、ヴァレンティーノ・ディ・コズウェイっ⁉」と、ステファニアさんのお父さんが叫んだからだ。


 あー……、はい、わたしの予想は当たりみたいねえ。


「あら、ご存じ? もしかして、あなた、わたしのお父様からお金でも借りていらっしゃるの?」


 聞いた途端に、びくりと体が震えたのはステファニアさんのお父さんだけではなくて、お母さんもだ。


「あらあら、もしかして、借金の返済を迫られているのかしらねぇ……。それで、このカッシーニ伯爵家に言いがかりをつけてでも、お金を工面しなくてはならなかったと。なるほど。でも、ここにもティーノ商会の手は回っているのよねえ……」


 そんなことないけどね。お父様の商売と、わたしは無関係。

 でも、そんなことはステファニアさんのお父さんとお母さんにはわからないだろう。

 言いがかりをつけてでも、お金をもぎ取ろうとしたのに、そこにいたのはその悪魔の借金取りの娘。


 地獄の一丁目にでも足を踏み入れたような、そんなお顔になっておりますよー。




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