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第15話 魔王と商談

「で、金儲けの相談とはなんだ、キアラ」

「……いらっしゃいませ、お父様。まずはお茶でもと言いたいところですが、そんなことを言い出せば、時は金なり。無駄な時間を過ごすなら即帰宅するでしょうから、工場のほうへどうぞ」


 やって来たわたしのお父様。

 金儲け大魔神。


 久しぶりに会う、しかも嫁いだ娘に対する思いやりの言葉などは当然ない。

 即座に、相談、いや、商談モード。

 さっさと工場のほうへと案内する。


 で、ついて即座に、先日アスラン様に見せたのとおんなじに、ミシンの実演をしてみた。


「……というわけで、この右の部品を改良すれば、売るに足るモノになるかと愚考いたしまして……」


 改良後のミシンはまだないけど。

 わたしが書いておいた手書きの設計図的なもの……手回しハンドル付きミシンと、足踏みミシン……その用紙を、お父様は奪うようにして手に取って、じっくり見入っている。


 わたしの実演に対しても、いろいろ微に入り細に入りツッコミ……ではなく、質問をしてきたし。

 お父様の頭の中は、今、すごい勢いで計算がなされていることだろう。電卓でも叩く……って、この世界、電卓なんてないけど、そんな幻聴までもが聞こえてきそうだった。


「……なるほど。わかった。で、キアラ、私には、この道具を改良する職人の手配をすればいいだけなのか、それとも、完成した製品の、管理販売までをさせようとしているのか」


 どうなんだと睨まれる。

 さすが、一気に話を詰めてくるわね……。


「……正直に申し上げまして、製造、販売、管理……、全てお父様にお任せしたほうが、売れると思っています。わたしといいますか、カッシーニ伯爵家側からは、こちらの在庫をすべてお父様に売らせていただきたいのです。それで、カッシーニ伯爵家がお父様からお借りした借金はほぼ相殺になるかと」

「ふん、まあ、そうだな」

「で、ここの工場は、カッシーニ伯爵家の所有地にあり、所有権がございます。お父様にはこの工場の使用料を、月々にこの金額で、カッシーニ家にお支払いいただいて、それで、工場は自由にお使いいただければ……と」


 工場使用の契約書。それをさりげなく、お父様に手渡す。

 使用料はね、そんなに高いものではない程度に抑えてある。


「なるほど。工場使用料と、製品の改良を行うための材料費。新たなる職人の雇用……。それらがかかるとしても、できた製品が売れれば、かなりのもうけが出る……というわけだな?」

「ええ、まあ……。製品の加工はそれほど難しいものではないはずですし。たいしたこともないでしょう」


 あくまでも、改造して完成した製品が、売れれば、だけど。


 でも、アコギな商売人であるお父様が、この程度のモノ、売れないわけがない。

 だって、元々、アスラン様のお父様が売ろうとしていたときは、完成品もなかったのに、買いたいって人が殺到したほどのものだったのだから。


「ふん、まあな」

「で……、わたしのほうは、完成した製品……ミシンの、使い方を、皆様にお教えする……ですとか、この製品、糸が絡まるなどの故障が生じやすいので、そちらの対応に回ろうかと」


 油を挿すとかね、糸が絡まるだけではなくて、糸埃というか、ミシンの中身のお掃除も必要なのね。


「……指導や対応は、お前の無料奉仕か?」

「……まさか、お父様。ただ働きほど馬鹿らしいものはない。それがお父様でございましょうに。わたし、製品の売り上げの、三割をいただきたいと思いますわ」

「使い方の指導や故障対応ごときに三割も出せるか。面倒なことは私が全て行うというのに」

「使い方を知らないままに売りつけても、購入者宅の単なる飾りになるだけですわ。それに、故障の対応ができなければ、製品の評判も落ちることでしょう。三割は無理でも二割は欲しいところですわね」


 お父様はしばらく考えたのち、言った。


「こちらで契約書を作成した後、カッシーニ家に届けさせる。それでいいな?」


 よっしっ!


 一割って言われるかと思ったけど、二割でなんとかなったみたい。


 よーし、面倒なことは全部お父様に任せて、わたしは売り上げだけ、もらうわよーっと。クレームだって、購入者の皆様が、ミシンに使い慣れれば少なくなるだろうし。


 ふっふっふ。

 もうけたお金で、お猫様の住環境を更に整えましょう。

 そして、更にお猫様を増やせればいいなー。






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