表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

「えーあい」のアイちゃん




「…なるほどな。ではディカルテラはここから東に

ロズガントは西に領域を構えているのだな」


「ええ。そうよ。何も無い火山地帯だけどね

暑いったらありゃしないわ」


「儂の領域周辺は基本夜だからのう。灯がないと不便なのじゃ」


「そう考えたら空島は恵まれているのかもしれないな…」


「空島はロマンあるわね。ねぇ今度、見に来ても良いかしら?」


「うん。構わないぞ。私も火山地帯に興味があるし

今度お互いに領域見学でもやってみないか?」


「貴方って良い事考えるわね!それなら退屈しのぎにもなるし…」


「なら…儂も…」


「勿論だ。ロズガントの領域。天ノ落夜には興味が尽きないぞ」


「そ!そうか!そうなのか!天ノ落夜にはだな!

特殊なギミックが満載なのじゃ!それで……」


「ロズ爺…唾飛んでるわよ。

料理に入っちゃうから落ち着いて話して頂戴」


「…う…うむ…すまん…」


「ふっ…私も少しばかし興奮してしまったみたいだな」


「そうね。レデュスは初めての集まりだろうけど

こんなに話が弾む事は今までなかったかしらね」


「…それは嬉しい限りだ」


「儂もレデュストロスと話せて楽しいぞ。改めてよろしくのう」


「ああ。こちらこそだ」


2人と1体の最強種は次々と円卓に転送されてくる料理に

舌鼓を打ちながら会話に花を咲かせていた。


ホールの中に4体が揃ったと同時に

目の前に現れた料理に驚いたが、集まりの際は

これが常なのだろう。2人が当然の様に食し始めたので

私もそれにつられた形だ。


これがゲームの中という事を忘れてしまう程

料理の完成度が高かった。

そもそも本物という物が分からないが…


もはやそんな事を考えているのは私だけなのかもしれない。


見た目は当然、味も匂いもあるのだ。

ロズガントがこれはコース料理だと教えてくれた。


美味い…慣れた様に2人はフォークとナイフを使っているが

私は器用に舌を使い平らげていく。少々行儀が悪いがな…。

口にする度に腹に溜まる感覚すらある。

水を含めば喉が潤う。


腹も膨れてきた。出てくる料理も次で最後となった。

デザートだ。


「これがプリンか。なんでプリンと言うんだ?」


「…考えた事も無いわね」


「こうスプーンで突くとプリンっとするからじゃないのかのぉ?」


「「………」」


「すまん…なんでもないわい…」


謝ってばかりのロズガントを尻目に私はプリンを

一口で頬張った。出てきた料理の中で1番甘かった。



また食べたいな。



「わっひゃはははははははは。ふはっはっははははは」



この燃えるゴミのいない所でな。





食事が終わると人数分用意されていた食器類は

綺麗さっぱり無くなった。汚してはいないが

円卓も何処となく磨かれた様に見えた。


どう言う仕掛けなのか気になる所だが…


各々一息ついていた所に疑問に思っていた事を口にする。


「それでこの集まりは何の為のものなんだ?」


まさかお食事会をする為だけに呼ばれたとは思えない。

それに、この3人はそれぞれ面識がある

言い回しが多かった。


その理由は私が目覚める前から不定期にこの集まりがあったと

ディカルテラは話してくれた。


そして初めての集まりの際、イグノバ…じゃないクソガキから

ディカルテラが初っ端おちょくられた。


シャンデリアにぶら下がり煽り散らかしていたクソガキを

引きずり下ろし、ボコボコにしたと言う。


正直、同情の余地もない。良かったなクソガキ生きてて。


「んーそろそろだと思うわよ」


「そうじゃの」


2人は似た様な事を語る。


「そろそろ?…」


『料理の方は如何でしたでしょうか?』


「うわ!!びっくりした!!」


「久しぶりね。アイちゃん。今日もとっても美味しかったわ」「久しいのぉ元気だったか?」


『恐縮です。ディカルテラもロズガントもご無沙汰してます

勿論、元気でしたよ。病気知らずですから』


ロズガントとディカルテラの2人と私の間に突然現れた女。

私の目ではその後ろ姿を晒している。


なんだ!今の!いきなり空中から現れたぞ!

まるで転移の様な…ああ、なるほどな…


「…お前が「えーあい」なのか?」


謎の女はピクリと肩を振るわせ

私の方へゆっくりと振り返る。


『ええ。そうですよ。レデュストロス。わたくしが

完全独立型AI「えーあい」です。以後、お見知り置きを。

続けて龍宮殿にお越し頂きありがとうございます』


可憐に舞う蝶の如く、「えーあい」は

着ている服…スカートの端を摘み挨拶をした。


まるで、絵本の中から飛び出してきたお姫様。そんな印象だ。

ただし雰囲気だけの話しだ。


見た目は年端もいかない少女に近い。

身長と同じ長さの艶やかな黒髪を一本の三つ編みにし

白いしめ縄で縛っている。


服装は質素と言う他がない…1枚の布で作ったのか。

まるで装束の様だった。ワンピースとも言えなくもないが

所々、ほつれ汚れている…あえて

それを着ている気がするが…分からんな。


そして1番、目を引いたのは彼女の目だ。

竜種の3人は金色に輝いていたが…


「えーあい」は灰と白のオッドアイ。

それがとてつもなく私には不気味なものに見えた。


『ん?どうしたのですか?レデュストロス

わたくしの顔になにかついているのですか?』


宙を舞いながら「えーあい」は語りかけてくる。

私の鼻に触れそうな程まで近寄ってきた。


こ…こいつ距離感ないのか?…近いんだが…


「いや…左右で目の色が違うのだな…と」


誤魔化すのも無駄な気がしたので正直に伝えた。

そしてこのあと彼女の言葉に私は驚く事になる。


『貴方もじゃないですか。レデュストロス

お揃いですね。わたくし達』


にこりと笑い言う彼女は年相応の少女だった。


って、え?。お揃い?私が「えーあい」と?


困る様に考え始めた私。そこに今まで私と「えーあい」の

会話を傍観していたディカルテラが口を開いた。


「!…なんか見た事あるって思ってたのよ!レデュスの目!

アイちゃんと一緒だったのね!左右の色は逆だけど…」


少し複雑な気分だ。よくよく見たらオッドアイも

なんか…格好良いな!くそっ不気味と思った事を取り消したい。

確かに首から上を見た事が無かったな…それよりも…


「…アイちゃん?」


『わたくしの事です。皆さんには親しみを込めて

そう呼んでもらっています。レデュストロスも

差し支え無ければアイしぁ…と…!』


突然、和かに話していた「えーあい」は両手で口を塞ぎ

表情が焦りに変わった。どうしたのだろうか。


まぁ、まだ少女の様だし同じ不気味な

色合いのオッドアイだ。私を自身と重ね怖くなったのであろう。


つまりは見た目を気にする思春期。きっとそうだな。


「えーあい」も気難しい年頃の少女なのだ。

私に少女を痛ぶる趣味はない。

ここはしっかり最強種として私達の創造主へ懐の広さを示そう。


「ア…ア、あ、アイちゃんだな。改めてよろしく。

レデュストロスだ…」


「緊張し過ぎじゃ」


ずっと黙っていたロズガントがここに来て口を挟んだ。

もう少し黙ってて良かったものを。何となく睨みを効かせみてた。


「…すまん」


やっぱり謝ってきた。弱すぎるぞロズガント。


『!っ…は、はい!レデュストロス!

よろしくお願いします。これから会議を行うので

もう少々、お付き合い下さい。今回の議題はズバリ…』


調子を取り戻したのか。アイちゃんは両手を腹へ寄せ

何かを溜め込む仕草をしている。結構お調子者なのか…


「わくわく。わくわく」


「「「……」」」


いつのまにか笑い散らかしていたクソガキのイグノバが

復活し横で何かぶつぶつ言いながら待機している。


こいつだけ帰ってくれないかな…

後でアイちゃんに相談しよう。


アイちゃんはアイちゃんで効果音を口にし出した。

本当、ここにいる関係者は個性的なのばっかりだな。


竜は自身を棚に上げた。


『……ジャカジャカジャカジャジャン…』


ゴクリッ


議題を聞く側の一同は生唾を飲み込む。


そして…


『…なんと!ハイフロ事

ハイファンタジークロニクルは本日をもって完成致しましたぁ!

これを機に今後の方針が議題で〜す』


「おお!やっとか!」「うむ。朗報じゃな」「アイちゃん可愛いわね」


どこから出したのか完成と、描かれた取手付きの看板を

アイちゃんは振り回しぴょんぴょんと跳ねている。


ディカルテラに共感する。可愛らしい。懐かしいな…


?…今、私はなんと…


「えええええ!?無理無理無理!!

今から俺の領域でパーティするんだから!!ヨンちゃんと

カミルちゃんが待ってるんだ!!だから無理無理無理無理!!」


アイちゃんの報告の後

開口一番。ゴミノバが何か言い出した。

ああ、こいつの名はイグノバだったな。


ヨンちゃんにカミルちゃん?なんだそれは。


ゴミクズの言葉を思い出していると…


目元に真っ黒な影を刺したディカルテラがクズゴミの方へ

足早に向かい、直前で静止した。


四つん這いに嘆くオブツは貴女に気づく。

このあとの展開はもう確定された。


「ねぇ〜ディカルテラぁ〜アイちゃんに

なんとか言ってよぉ〜会議は明日ってさぁ〜ねぇ〜…」


すがり寄ろうとするゴミクズオブツに対し貴女は言った。


「◯ね」


「ふぁ〜??」


「あの世でNPCと結婚してなさい」


ディカルテラは右手を突き出した。




極蝶火




1匹の真っ赤な蝶が生まれディカルテラの指先から離れ

うん◯に着地した。そして蝶は火花を散らし消え…



「は?…あ…あああああ…あっあちいいいいいいいいいい!!!」



炎に包まれたゲ◯はのたうち回る。


パチパチパチパチ…


この音は火に焼かれる音ではない。

私とロズガントの拍手の音だ。



『わ!わわわわ!イグノバがぁ!

み、皆さん!仲良くしてください!』



慌てるアイちゃんも一興だった。


今度アイちゃんに燃えるゴミと燃えないゴミの

見分け方を教えようと思った私であった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ