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第2話 最強魔導士と王女

 俺は学園長室を後にして食堂に向かう。食堂ではとある一角に、リリカと華林が座って話しながら昼飯を食べていた。

 秋奈は闇華林の事で数人生徒を殺したため、事情聴衆を含めて警察へ身柄を預けられている。暫くの間は牢獄の中だろう。

 俺はリリカと華林の向かいに座る。


「色々と聞きたい事はあるが華林よ」


 俺は右手に星形に光る石を華林に見せる。


「何よこれ?」


「俺の魔力塊だ。これを食えば俺の魔法が使えるようになる」


「えっ!? 何であたしに!?」


 魔力塊。魔力を結晶化させた星形に光る石の事。それを食べる事により、己の魔法を相手に受け継がせる事ができる。その代わり、一切その魔法が使えなくなる。


「世界の王になりたいんだろ? 俺の魔法が世界の王になるための条件の1つだ。だからお前にやる」


「いいの......あたしなんかに?」


「お前だからいいんだよ」


 リリカはとっくに気付いていた。華林が俺の大切な人である事。

 華林は魔力塊を受けとり口にする。全てを食べて飲み込んだ。


「不味いわね......これ」


「かっちゃんが世界の王なら私はその守護者だね!」


「ちゃんとあたしを護りなさいよ」


 へらへらするリリカに対して華林は右手の人指し指を指す。

 リリカには悪いな。お前が後継者だったけどな。守護者として華林を護ってくれ。

 これで俺は闘うための魔法を使えなくなったわけだが、刀を常に装備しているため戦闘には大丈夫だ。


「さて、2人にはクエストがあるんだが受けるか?」


 この学園は、ギルドのように様々な依頼が持ち込まれてくる。学生や教師はその依頼をクエストと呼んでいる。

 クエスト内容は様々で、魔物狩りだったり、ペット捜しだったりと。クエストを成功すると報酬と共に単位が貰える。難易度によって貰える単位数が違う。


「んで依頼内容は何?」


「この国の王女の護衛だ」


 正確にはこの国にあるとする秘宝、エターナルエメラルドを何者かがから護る事。

 その秘宝はこの国の王女、リカ・サインサルト王女が肌に離さず持っているため王女の護衛となる。

 まぁー、リカ王女は俺の娘の1人なんだがな。


「王女の......」


「護衛!?」


 リリカ、華林の順で叫びながら驚く。

 って事で俺たちは車でリカが住まう城、リスラレン城へと向かう事に。

 運転士はその城の騎士団長をしているクラミと言う赤髪の女性だ。

 リスラレン城へと到着した直ぐ様に俺はリリカと華林を連れて風呂場へ。

 風呂場へ問答無用に入り込み、湯に浸かっているリカの元へ向かう。


「よっ!! リカ」


「のわぁぁぁ!!!!? ち......父上!!!?」


 金髪でロングヘアーのリカは急に立ち上がり、猫のような茶色い尻尾をぴんと立てて驚く。

 そのリカには胸から股関節まで真ん中に傷痕がある。普段は服で見えないが風呂では見えてしまう。

 すると殺気を感じる。


「いくら娘だからって覗くとかありえないんだけど?」


「そうだよ、パパ。裸見たいなら私のを見せるのに!」


 華林とリリカの殺気が背中でも感じる。苦笑いしかできねぇな。

 客室へと移動した俺たち。俺はソファーに座る。その右隣に華林、左隣にリリカ、俺の向かいにリカが座る。

 リカの首にぶら下げてあるアクセサリーに秘宝エターナルエメラルドがある。


「それがエターナルエメラルド? どう見てもただの宝石ね」


 華林が指を指しながら首をかしげる。

 一見、ただの宝石に見えるエターナルエメラルド。こいつがとんでもない価値があるのだ。


「こいつはな。この世界の何処かにあると言われている聖域の扉を開くための鍵の1つなのだ」


 リカは頭のアホ毛を揺らしながらどや顔を決める。

 聖域.....この世界の何処かにあると語られる場所。神がこの世界の民のために作ったとされる。それが何処にあるか、実在するのか、何があるのか、誰にも分からない。


「聖域って実在するかどうか分からないはずよ? その扉を開くための鍵って......」


「いや実在する。聖域は確かにある」


「えっ......?」


 リリカの言う通り、聖域は実在する。俺がこの世界の王になった時、聖域に足を踏み入れた事がある。それはあいつを止めるために踏み入れたんだが......。


「まさか、この依頼を父上が受けるとはな。事情は知っていたが」


「エリナの野郎がよ、俺がやれって言うからな」


 リカが腕を組み、足を組みながら成る程と頷く。

 さっきからリカのスカートがミニスカートのせいでパンツが丸見えなんだが、俺はつくづくそういうのに縁がある。読者のみんな、特に男子諸君には嬉しい事だろう。

 その日の夜。俺がいる部屋に華林が入ってくる。


「どうした?」


「ちょっと話をしたくてね」


 華林は窓の方へ歩く。俺はその近くにある椅子に座っていて2人は窓の外を見つめる。

 満月が俺らを照らす。


「お前さ、なんで世界の王になりたいんだ?」


「......」


 華林は窓の縁を少し握る。何か切り詰めた表情をしている。


「あたしのママとの約束なの......あたしがこの世界を変える。だけど、ママはあたしを守るため、あの男に捕まちゃった......」


「あの男?」


「リューヤよ。地獄の王と異名をもつ男」


「あいつか......かなり強い奴だな」


「あたしは必ずママを助けて世界を変える!!」


 成る程な。リューヤは俺と互角または俺以上の強さを誇る。

 そんな奴を倒すには世界の王になるしかないな。

 華林は母親との約束を果たそうと俺を殺そうとしたのか......華林の母親は俺にとっても特別な人。だからこそ、余計に華林を世界の王にさせないとならない。

 彼女を助けに行こうな......華林。必ずな。

 ある日、俺たちは城の地下へと向かう。

 城の地下はサバンナのようになっていて、所々に高台の小山がある。地下にしては大自然すぎる。

 どうやら特訓用に作ったらしい。


「さて、華林にはここで修行をしてもらう」


「えぇ分かったわ」


「って事で」


 俺は華林の額に人指し指を触れさせ、華林を眠らせる。

 横に寝転がして俺は近くに座る。


「大胆だねぇ~。パパは」


「何勘違いしているんだよ。闇華林と闘わせるためだ」


 リカは俺の隣にあぐらをかいて座る。

 おいおい、お前さ、女子だろ? しかもこの国の王女の座り方じゃねぇな! たくぅ~。


「父上よ。大丈夫なのか?」


「己の人格に打ち勝たなければ世界の王になんてなれねぇよ」


 リリカは近くにある小山に登りゲームを始める。音楽を聴きながら......。


 瞳を開けると見知らぬ場所にいた。あたし福本華林は大きなビルがいくつもそびえ立つ場所に立っていた。


「ここは?」


 辺りを見回してもビルばかり。空は晴れていて青空が見える。

 あたしの前にもう1人あたしがいた。


「あんたはあたし?」


「俺はお前でお前は俺だぜ」


 あたしとそっくりで緋色の髪と瞳、服装は違って袴を着ていた。彼女が右手に持つ刀は鍔がなく、包丁のような形をしていて彼女と同じぐらいの大きさがある。柄の頭から鎖が伸びていてその長さは1mぐらいある。

 何なの? これは。


「てめぇから来ねぇならこっちから行くぜ!」


 彼女はあたしに向かって、炎を纏った刀を投げ飛ばし鎖を左手で持つ。

 あたしはとっさに避ける。だが、彼女が鎖を右手でも持ち、振り回しあたしに鎖を巻き付ける。

 ほどこうとしたがほどく事はできそうにない。


「灼熱の渦!」


 刀から炎があたしを纒いだし、包み込み渦潮のように立ち上る。

 まずい、このままだと焼き殺される。と思っていたらもう1人のあたしが鎖を左手で引いてあたしを引き付ける。

 炎の渦潮からは脱出できたが防御が不可能......どうする? あたし。

 何考えているんだろう。弘樹から貰ったじゃない......彼の魔法を!

 あたしは口から雷状のビームを放つ。彼女に直撃する。

 鎖があたしからほどけてあたしは着地して刀を拾う。


「てめぇ......炎魔法しか使えねぇはずだろ!?」


「あたしは世界の王になるのよ。これぐらい当然だわ」


「へっ! お前が王になるなんて100年早ぇわ!!!」


 もう1人のあたしはあたしに向かって飛び出す。あたしは刀を構える。

 炎を刀に纏い、あたしも飛び出す。


「黒澤流......炎閥両断!」


 あたしは刀を振り下ろす。そしてもう1人のあたしの首が斬られる。体はそのまま倒れ、少し離れた所に頭が転がる。

 あたしは彼女の頭に近づき、立ち止まり見下ろす。


「これで、俺に勝ったと思うなよ。お前は俺で俺はお前だ。もう一度お前の前に俺は現れる、その時こそお前を殺して俺が王になる!!!」


 彼女は頭と体も消滅した。

 そうか......ここはあたしの精神の中、あたしの中にいたもう1つの人格と闘わせるためにあたしを眠らせたのか。

 伊月には少し怒りが芽生える。だが、世界の王になるための試練だと思えば感謝しかないな。

 ありがとね。


 眠っている華林に大量の魔力を感じる。俺たはちはそれに気付き、華林の方を見ると華林が立っていた。

 ゆっくりと瞳を開く華林の右手に鍔がなく、包丁のような形をしていて彼女と同じぐらいの大きさがある刀を持っていた。


「第1段階クリアだな」


 俺はそう呟いてしまった。

 リカとリリカはにやけていて嬉しそうだ。

 そこへ傷だらけのクラミがふらふらな状態でやって来た。リカは急ぎクラミに近づき支える。


「すみません......殿下」


「どうしたのだ!? 何があった?」


 クラミの話によると何者かが進入したみたいで王の間にいるらしい。

 たく、この城の警備は何しているんだよ? がばがばかよ!

 王の間に向かった俺たちは駆け込んで扉を俺が蹴る。

 王座に座る厳つい男がいて、バンダナで両目を隠している。

 白い服装をしていて宗教団体のように見える。体は筋肉質で肌色が少し黒く焦げ茶色に近い感じ。


「よぉ。姫さん」


「お前がクラミをやったのか?」


「だとしたら?」


「お前をぶっ飛ばす!!」


 男はにやけながら立ち上がる。いかにも殺りそうな雰囲気だ。


「さてと、お前たちフレドラ様の生け贄になれ......その魂を捧げるんだ」


 こいつマジヤバい奴だな。

 フレドラか......確かドラゴンの1種で炎を操るドラゴンだったな。

 この世界はドラゴンが普通に生息している。絶滅したドラゴンもいれば今も生きているドラゴンもいる。

 動物のように進化したりして命を繋げてきた。

 竜人族とは異なるが人の姿へ変身したりできる個体もいる。


「あたしがやるわ」


「大丈夫なのか?」


「あたしを誰だと思っているのよ? 姫様」


 華林が前に立ち、背中にある刀を鞘から抜く。


「リリカ、あいつは華林に任せてお前はもう1人の侵入者を頼むぜ」


「あいよ!」


 リリカは跳んで左拳に炎を纏い天井を殴る。天井に穴が開いて、少女が落ちてきた。

 少女はサングラスしていてフードを被っていた。少女は男の隣へ跳んで立ち止まる。


「黒澤流......炎閥斬!」


 華林は刀を降り下ろし炎の斬撃を放つ。斬撃は男に一直線に向かう。


「渇っ!!!」


 男は叫び、衝撃波を飛ばして炎の斬撃をかき消す。その衝撃波は俺、リリカ、華林を飛ばし壁にぶつけられる。


「父上!? 華林!? リリカ!?」


 フードを被った少女が一瞬でリカの背後に移動してリカを捕獲する。


「何をするのだ!?」


 リカと少女は魔法陣が展開され光輝くと消えた。


「リカ!?」


 俺は叫んだが時すでに遅し。もう、リカはいない。

 くそ!


「てめぇら、俺の娘に手を出すなんていい度胸だな」


 俺はゆっくりと立ち上がる。


「へっへっへ。ならフレドラ様の城へ来るがいい」


 男は右足を少し上げて直ぐ様に下ろして炎を出して消える。

 ふざけやがって!!!

 リリカと華林もゆっくりと立ち上がり、俺に近づく。


「どうすんの?」


「決まっているだろ。リカを助けに行く!」


 リリカと華林はにやっとにやける。その通りだと言っているかのようだ。

 場所は何となくわかる。ここより北にあるバレール火山と呼ばれる火山地帯にある。

 首都からは遠い場所になり、道路整備されてないため歩きになる。大変だがそんなこと言ってられるか!!

 待ってろ、リカ。必ず助けに行くからな!

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