夏休みが終わる前に…
夏休み最後の日。翌日の学校に向けて、各々がそれに備えて支度を始める中、木塚ケントだけは未だにランドセルを空っぽにした状態で机に向かい、一心不乱に鉛筆を走らせていた。
「だから少しずつやっとけば好かったのよ」
「煩いなぁ! そんな事、今言うなよっ! 」
そもそも五年生の宿題と三年生の宿題じゃ出される量や難しさが全然違うだろっ! と思いつつも、普段は喧しい口を動かして妹と口論するよりも、未だに片付かない宿題を着々に進めた方がイイと判断したケントは、口を閉ざして兎に角手を動かす。それに、最初は呆れた様子の冷たい眼差しを向けていたケイコだったが、溜息を吐いて部屋を後にした。
静かな部屋には、カッ、カッ、カッ、と鉛筆が走る音と、偶に、グッ、グッ、グッ、と消しゴムが削られていく音が響き渡る。そして、時折漏れる溜息。
余りの静けさに、鉛筆を机に放ったケントは、椅子に仰け反り、天を仰いだ。
「………明日から学校かぁ…」
学校は嫌いでは無い。寧ろ好きの部類だ。
……只、勉強したり、宿題を出されたりしなければの話である。
「みんな元気かなぁ…」
夏休みに家族と旅行に行く者は多い。
憧れのアンリちゃんや春風さんもその例で、学校以外で会う機会が只でさえ少ないのに、夏休みに入ってからは更に会える頻度が減り、此処一週間は彼女達と全く顔を合わせてなかったりする。
「はあぁ…」
一つ屋根の下の家族以外と一週間の間に顔を合わせた人物は、近所の誰かと、こんな暑い中でも外で一緒に遊んでいた友人達、そして--
「木塚くーんっ!! 一緒に宿題片付けない? 」
「!?!」
今、思い浮かべた人物から呼び掛けられ、ケントはハッと現実へと意識が引き戻される。
声がした方へ振り返ると、部屋の出入り口にて、仁王立ちしている花山リンゴが視界に映った。
「えっ?! 花山さん!? 」
「なにボサッとしてるのよ。明日までになんとか終わらせなきゃでしょ? 」
言って、部屋に入ってきたリンゴは、持っていた手提げ袋を床に置き、其処から数冊の教科書とノートを取り出すと、此方へ歩み寄ってきた。
「……予想通り、ほぼ真っ白ね…」
「うっ…煩いなぁ!? 冷やかしに来たのなら帰ってくれよ! 」
「いや、あたしも似た様なモノだから…」
「………」
「まぁ、なんとかなるわよね」
ガッハッハっと豪快に笑うリンゴに、女の子ならせめてそーゆう処に恥らいを持ってくれよと呆れつつも、先程までの静けさだけが酷く目立ち、全く集中出来ずに捗らなかった宿題の事を考えたら今の方がマシか、と思ったケントは、無意識に口角が上がる。
「…あたしが来て、嬉しい? 木塚くん」
「………は? 」
なんでそんな事訊くのさ? と問うと、だってさっきまでむっつりだったのにさ…と言い掛けて、さて残りの宿題をパパッと終わらせましょうか、とリンゴは不自然に話題を変えた。それに、リンゴの言い掛けてた言葉が気になるも、なんとなく聞いてはいけない気がしたケントは、うっ…うん! と立ち上がると、茶の間に居る母に、普段中々使う事は無い、折り畳み式のちゃぶ台を持ってくる様頼んだ。
了
後書き
私は、夏休みが終わる一週間ぐらい前に焦り出して、泣きながら宿題を片付けていました(〃ω〃)ポッ…(←⁉️)
夏休みの間、どう過ごせば、宿題をギリギリまでやらないんだ、って話ですが……録画したアニメやバラエティ観てたり、昼寝したり、漫画読んだり、一人でままごとみたいな事したり、ボーッとしてたり…うん。。
時間を有効に使えなかったんですよね…。
やらなきゃならないコトを後回しにして、遊ぶ計画表に力を入れて……で、最終日が近付くにつれて泣く….°(ಗдಗ。)°.(←自業自得…。)
めちゃくちゃ情けない話だけど…( ;´Д`)
ので……私みたいになりたくない学生さん達❗️宿題は、早い内に終わらせよう‼️
楽十お兄さんとの約束だぞ?