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「別に解かなくても問題はないけれど」

「陛下! オルテンス様にかけられている誓約を解くための人材を探してください!!」

「は?」



 急に執務室にやってきたミオラの言葉に、デュドナは何を言っているんだとでもいうようにそちらを見る。

 ちなみにミオラがこういった無礼な態度をとるのは珍しいことである。デュドナとの付き合いの長いミオラだが、王城に務めている侍女としてこういう風に動揺することはあまりない。

 オルテンスが花嫁候補としてこちらにやってきてから、ミオラは今まで見せたことのないような態度を度々見せているようだ。



「誓約というのは?」

「魔法での縛りですよ! オルテンス様、サーフェーズ王国の連中にそれ、かけられています!」



 魔法と呼ばれる力がある。

 人の中には、魔力と呼ばれるものを持ち合わせている者がおり、その魔力を用いて様々なことが出来たりもするのだ。一番分かりやすいのは、その魔力で炎などを出現させたりといった魔法だろうか。

 ただミオラが言っているような人の行動を縛るような魔法を使えるものも、世の中には存在する。



「……どんなものだ?」

「自死を許さない魔力による縛りです。……オルテンス様のことを虐げていた様子のサーフェーズ王国の連中のことですから、それがオルテンス様を思ってのものではないことは明白でしょう。私は詳しくはありませんが、オルテンス様のことを自由に出来るものだったら大変です! オルテンス様の命がサーフェーズ王国の連中に握られているなんて考えるだけで怒りを覚えます!」



 そんなミオラの言葉にデュドナと、その場にいたセールフィはオルテンスにかけられている魔力による誓約について理解する。

 ちなみにデュドナもセールフィも数少ない魔力持ちである。ただし、人のことを魔力で縛るといった性質は持ち合わせていない。


 オルテンスにかけられているその縛りを解消するためには、それらの魔法に詳しいものが必要だろう。




「……ああ、だから死にたがっているのに自分で死ななかったのか」

「陛下! 何を納得したようにつぶやいているんですか! オルテンス様はあんなに可愛くて見ていて幸せになるのに、それを言っても理解してくださらないのですよ。ぽかんとしていて!」

「そういう暮らしをしていたのだろう。……その魔力による誓約を解いたらあいつは死なないか?」

「それをさせないために、死なないでくださいって言い続けるんですよ! オルテンス様のことを私たちが大切にしていて、大好きだってことを理解してもらえたら大丈夫なはずです。陛下も、オルテンス様が自分から死なないように愛を囁いて下さい」

「は? なんで、俺が……」

「陛下も、オルテンス様のこと、嫌いじゃないでしょう! 死なないでほしいと思っているのならそれぐらい伝えてください」




 オルテンスのことを思い、ミオラはそんなことを言い切る。

 デュドナもオルテンスに対して悪感情を抱いているわけではない。寧ろ嫌ってはいない。なので、「愛は囁かないが、死なないように言うことぐらいはする」と結局そう口にするのである。……そういうことをまわりに言うあたり少しずつ絆されてきているのだが、本人は自覚がない。



 さて、デュドナから魔力による誓約について詳しい人材をオルテンスの元へと遣わすことを約束してもらったミオラは、オルテンスの元へ向かってにこにこしている。



「オルテンス様、貴方を縛っているものは私たちが責任をもって取り外しますからね!」

「別に解かなくても問題はないけれど」



 ベッドの上に腰かけてきたオルテンスは、必死そうな様子のミオラに何とも不思議そうである。心からどうして解こうと必死なのか分からないのだろう。



「オルテンス様、そういう誓約はない方がいいんです。自分自身の命は、その人一人一人のものです。誰かが縛っていいものではありません」

「そうなの?」

「はい。私たちはオルテンス様がそう言った誓約に縛られ、あの国に命を掴まれていることが許せませんし、悲しいです。だからどうか私たちのためにも解かせてください」

「……私のそれがなくなると、ミオラは嬉しい?」

「はい!」



 満面の笑みで頷くミオラ。ミオラがどうしてそんな風ににこにこ笑っているのかオルテンスには分からない。でも自分に優しくしてくれているミオラが笑っているならいいかなと思った。



「でも誓約が解けても自分から命を落とそうとはしないでくださいね。私はオルテンス様に生きてほしいのです」

「……うん」



 オルテンスは、ミオラの言葉にこくりと頷いた。


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