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5.飲みすぎには注意しましょう!

「なぜお隣に寝ている……。」


目を覚ましたリリーの隣に寝ているのはマタドール公爵。勿論、ここは宿の借りている部屋ではない。恐らく、マタドール公爵のお屋敷。壁に飾られている絵など恐ろしく高価なものに違いない。


昨日、夕食を一緒にいただいて、はっきりあの提案は断った。そしてその後公爵家の馬車に乗って帰宅したはず。


「う~ん、宿に着いた記憶がない。」


一日緊張していた精神状態のままに勧められるままにお酒を飲み、気持ちよく馬車に揺られたら、人間は眠くなる。

そう、リリーも例外ではなく確かに寝た。うん、そこが問題。

何はともあれ、昨夜このお屋敷に運び込まれたことは明白だった。


「おはようございます。よく眠れましたか?」


彼女の独り言に目を覚ました公爵が、まだ眠いのか昨日と違うぼんやりとした口調でリリーに語り掛けてきた。


「昨日は馬車で二人とも寝てしまったようで、御者に指示をしていなかったので貴方の宿に寄らず屋敷についてしまったんです。起こすのが忍びなくてベッドまで運ばせていただきました。知らない場所で起きた時に誰もいないのは不安化と思いまして。一緒に寝てしまいました。」


ベッドから起きずにニコッと笑う公爵の顔が朝から神々しすぎる。

彼の視線が自分に向いている事を意識するとなんだか落ち着かないから止めてほしい。


「公爵、気を使っていただき、ありがとうございます。でもそういう時は容赦なく起こして貰っていいので!」

「キルアって呼んでください、リリー。昨日約束しましたよね。」


少し強い口調にピクリと反応して公爵を見ると、彼は誰にも拒否できない支配者の微笑を浮かべていた。



「昨日のお手伝いの報酬と食事代の代わりに、貴方がおっしゃったんですよ。ほら呼んで。」

彼の口調はとても優しくて勿論、命令されているわけでもないのに、どうしても否定の言葉が出てこない。


「キルア…さま?」


リリーにそう呼ばれた公爵は彼女の頬に手を片手を添えてふわりと笑い口角を上げた。


「いい子ですね、リリー。そろそろ起きて朝食でも食べましょうか。リリーの着替えのために人を呼んでおきますね。」

キルアはベッドから出ると、すたすたと出て行ってしまった。


「あれ、何なの……。」

忘れてくれていればよいなと思っていたが、やはりそうはいかなかった。確かに昨日二人は飲みながらそんなやり取りをした。


まさかあんな言い方をされるとは。


リリーが拒否することなど微塵も考えていない口調で語りかけてきたキルア。

それに答えてしまったリリー。あれが本来の公爵なのだろうか。まだ彼の手の体温が頬に残っている気がする。


「早く帰りたい。」

キルアが呼んだのだろう、メイドがドアをノックする音が聞こえた。


◇◇◇◇◇◇


メイドにシャワーを浴びたいと伝えたら心得ていたようで浴室まで連れて行かれた。

その後用意された服に着替える。着替えを手伝うといられたがとんでもないと断った。どんな凄いものを用意されたかと心配していたが割とシンプルな薄ピンクのシャツにひざ下丈のレースのスカートが用意されていた。そして先程まで来ていた夜着はいつの間にか無くなっていた。

そう言えば昨日は誰が着替えさせてくれたのだろう?


リリーはそのまま食堂に案内された。

そこには既に着替えが済んだキルアが紅茶を飲んでいた。


「洋服、ありがとうございます。」


美味しそうな朝食が並ぶテーブルの席についてリリーはお礼を言った。そして先程の疑問を恐る恐る聞いてみる。


「あの、記憶がないのですが昨日の着替えは誰が?」

「リリーが自分で脱いでいましたよ、慌ててメイドを呼んで着替えを手伝って貰いましたから安心してください。見ていません。」


紅茶を飲みながらあっさりと言われた。

この反応、たぶん嘘だ。

なんとなくだがそう感じたがそんなこと今更言っても仕方がないので諦める。


「この前のドレスといい、私にぴったりのサイズの服が有って驚きました。どなたかの者ですか?以前住まれていた方とか?」

「いえ、事前にギルドからサイズは教えてもらってありましたから。ドレスは流石にありものを数点用意させて間に合わせましたが、洋服は今度お会いする時に何か不測の事態がったとき様に数着準備してあったんです、こんなに早く役に立ってよかった。まだまだ用意していますからそのまま着て帰っていただいて大丈夫ですよ。」

「そうですか……」


買い取るのが筋かとは思うが、きっと丸め込まれるだけのような気がする。


「そうだ、犬の散歩。募集してましたよね!洋服のお礼に今日は私がやります。」


先日ギルドの掲示板に貼ってあった依頼を思い出してリリーは提案した。あの時は暫く公爵と関わりあいたくなくてスルーしたが、ここまで関わり合いになってしまえば関係ない。寧ろ洋服のお礼としてはぴったりのものだ。

リリーは思いついた名案にキルアも喜んでくれるだろうと思い、目を向けた。


しかし当の本人はなんとも深刻な表情で悩んでいる最中だった。


「犬の散歩ですか……身体の小さいリリーにはかなり大変かと思うのですが……。まあ、私が隣にいれば問題ないか。寧ろリリーの安全のために今日は室内で散歩のほうが良いか?」

その上、何やらぶつぶつ呟やいている。



「私、犬好きですから安心してください。」

心配そうにしているキルアにリリーは任せてほしいと胸を張った。

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