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29.初日が終わって

いつもお読みいただき

ありがとうございます。

話の都合で少し短めです。


キルアは夜会が終わった後も明日の準備に追われていた。


 アンネ公女は先程のリリーとの一件を見ていたらしく、どんな関係なのかと聞いてきたのではっきりと婚約者だと説明した。大変不満そうだったが今さら隠しても仕方がない。むしろこれで彼女と線引きが出来れば良かったと思う。


 毎年自分を指名して滞在期間中はずっとそばにいる事を乞われていたので大体彼女が自分に好意を持っていることは分かっていたつもりだった。昨年までなら両国の関係を考えていっそ彼女の思いに応えてしまうのも有りかと考えていたが自分はリリーに出会ってしまった。世の中は本当に予想がつかない事ばかりだ。


 公女が今年あたり言い出しそうなことはわかっていたのでなるべく早めにリリーとの事を既成事実として広めてしまいたかったが相手がいる事は予定通りに進まないものだ。やっとお互いの気持ちを確かめ合ったのは間の悪いことに公女の来訪が決まってから。


 まあ、彼女が来たからリリーが自覚してくれたのでそこはアンネ公女に感謝しなければならないのだが。


 「こんな時間まで明日の日程の確認とは流石ですね。」


 宰相のハインツが部屋へと入ってきた。手には水の入った瓶が二本。

 ハインツは机に大きく広げられた部面をじっと見つめた。


 「明日のパレードの際の警備の確認ですか?公爵が自らしなくても当日は警備の責任者がいるでしょう?」

 

 「わかっていますが自分が知らないことがあるのは嫌な性分なんでね。丁度喉が渇いていたんです。その水、一本貰えますか?」


 ハインツが答えるよりも先にキルアは一本奪い取るとそのまま線を開けて飲み始めた。冷たい水が美味しかったのか一気に半分ほど飲み干す。


 「良い飲みっぷりですね、先程までアンネ公女とご一緒でしたが何かされてたんですか?」


 宰相に含みのある言い方をされてキルアは彼を睨みつける。


 「パーティーが終わってもダンスを踊り足りないと駄々こねられて、楽団と共に彼女に付き合ってダンスという名の残業をしていました。」


 流石にあの大ホールは片付けが始まってしまったので別館の小ホールに移ってダンスを延長した。そして観客もいないなかで二人だけで延々とダンスをさせられたら喉も乾くというものだ。一時間ほどでやっと彼女が満足し、その後は自室に誘われたのだが勿論キルアは明日のための準備を理由に断った。


「リリー嬢とのダンス。目立っていましたね。」


キルアは勿論、豪華なドレスを嫌味なく可憐に見事に着こなしたリリーもそれはそれは美しく、二人そろって人々の目を釘づけにしていた。


 「リリーをお披露目させた反面、悪目立ちしていらない男達が寄り付く羽目になってしましました。」


 隣で踊っているキルアにもはっきりとわかる位に彼女は男性からの熱い視線を一心に集めていた。思い出すだけでも腹の底が沸々と熱くなる。


 「いや、最後の公爵からのキスで八割の男性が脱落したと思いますが?あれ、ワザとですよね。」


 ブツブツとぼやくキルアに、ハインツがクククと喉を鳴らして笑った。


「全員脱落してくれればよかったのですが、ダメでしたね。あの後、彼女がまんまと別の男性に声をかけられていたのは困ったものです。」


 残りの水を飲みほしてキルアは瓶を机に置いた。


「今日、彼女と踊ったご令息の名簿をお渡ししましょうか?」


 今日は陛下にも夜会でリリーの事を大切に扱うようにと言われていたのでダンスの最中は不測の事態が起きないよう、ずっと彼女を見守っていた。だからリリーが踊った男性の顔と名前は全員覚えている。

 キルアが欲しいというならすぐに紙に書き記す事は容易な事だった。


 「いえ、先程の父上の方とお話しましたので結構です。皆さん聞き分けがよろしい方たちでよかったです。」


 微笑むキルアをみてハインツは背筋がヒヤリと冷たくなった。自分の出る幕など初めからなかったことに気づいて目の前の男の怖さを再確認する。



「そう言えば、明日は騎馬に乗るんですね、公爵。」

 配置の確認が終わったようで地図を片付け始めたのを見て宰相はそれとなく話題を変えた。


 「はい、ここ数年はアンネ公女の馬車でパレードに参加していましたが、実は毎年陛下から騎馬での帯同を依頼されていたんです。」


 「そうなんですか。娘が楽しみにしていましたよ。リリーさんも誘って今夜は我が屋敷で泊まってもらっています。明日は二人で見学するみたいです。」

「それは良いところを見せないといけませんね。」


 アンネ公女の馬車を断る口実で騎馬での参加を予定したのだったが、思わぬ見物人の予告に自然とキルアに柔らかい笑みがこぼれる。


 明日は落馬などもっての外、何なら今からでも馬の調整具合を確認に行きたいくらいに気合が入ったのは言うまでもない。


 彼は憂鬱な行事が少しだけ楽しみになった。

週末に更新できたらなと思っていますが…。

あくまで予定なので。

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