お外でつくろう
「"野外鍛冶"──おっ?」
お、おでれぇたぜぇ。スキルを発動したと思ったら、右手に鎚を左手に鐫を。の状態だったんだぜ。何を言っ─以下略─。
もう1度、両手の道具と周囲を確認する。鎚と鐫だけだ。作業台も無く、作業着にも着替えず、もちろん炉なんてものは絶対に無い。
「まじでこれだけかよ……」
"鍛冶"スキルの劣化版みたいな感じかと思ったけど、相当だぞこれ。修理と製作は出来るみたいだから良いけど。スキルレベル上げたら良くなるらしいから、めっちゃ使い込まんとな。まぁ鍛冶をメインにするつもりもないし、自然とこっちを多く使うことになるだろうから特に意識しなくてもいいか。
物の製作は"鍛冶"と同じ仕様で3種類の製作方法から選ことができるようだ。この時点でめちゃくちゃ安心した。正直、道具のショボさを見た後なのゲージ製作しかなくて、スキルレベル毎に解放されるパターンかと思った。初めから3つとも使えるならまじて有能だと思う。
修理は修理したい部分と同じ材料を乗せてゲージゲーで叩くだけのようだ。楽だし早くていいね。
・石の槍(作:ラグメル)[ランク:1][質:B]
━ATK:20,耐久値:10/25
修理:石(小)×1━+2、石(中)×1━+5、石(大)×1━+15
とりあえず(小)と(中)でやってみると、それぞれ1回ずつゲージに合わせて叩いて終わった。判定が悪かったら耐久値の回復量も減少するのかもしれないが、別に試す必要もないので放置。
うーんこれは。他の2種類と比べて石(小)はダメージは期待できないし、小さ過ぎて加工の余地もない。叩く回数は増えるけど(中)以上は勿体ないので、残りの修理は全て石(小)で行った。
石の槍を修復し終えたところで、再度周囲を見渡す。見える限り蟻は居らず、むしろプレイヤーと思われる(初期の簡素な布の服上下を着た、武器だけ立派な)人がちらほらと増えてきていた。
レベル上げのためにもっと増えてくるだろうし、リポップが足りなくなったら先に進むだろうし、安全そうだからお次は武器でも増やすとしようかな。
「いざ投擲槍といこう」
"野外鍛冶"を発動し直してマニュアル製作を選択、石(中)を取り出す。そして考え直す。
(中)ちっせぇ。思ってたよりちっせぇ。こんなサイズで造っても大きめのダーツにしかならんわ。投擲槍は(大)で作ろ。
でもこれどうすっかなぁ、(中)の使い道も考えておかないとなぁ。取り敢えず今日のところは球にしておくかなぁ。
「まずは練習、練習」
石(中)を両手の人差し指に橋を架ける様に乗せ、人差し指同士の距離を徐々に近付けていく。ぴったりくっついたところが重心になるため、そこを中心とするように端を落として球体になるよう削っていく。ヤスリは無いが、少々凹凸がある方がグリップが効くと言い聞かせながら整形を終わらせる。
最後に、名前をつけて工程を入力することでレシピへと登録となる。
・投丸石(作:ラグメル)(ランク:1)(質:C)
━ATK:5,耐久値:3
登録時に現在造れるレシピを見ると、投石用の石のレシピなんぞは無かった。最低でも石のナイフからだった。悲しい。でも、クオリティが落ちる"野外鍛冶"で(質:C)が出来たから、工房でだったらBも、更にサポート付きならAも狙えるかもしれないので嬉しい。下げ上げ。
ダラダラしてもいられないので、数打ちで10個仕上げる。そして再び周囲を確認して石(大)を取り出す。
比較的形の良い(小)に乗せて重心を探す。重心を見つけたら、もう1つ(小)を隣に入れて離していき(大)を3等分するように置いたら、1つを抜く。
3等分にした(大)の2/3を(小)を起点にして棒状になるよう割っていく。握った時に親指と中指が少し離れる太さになるようにして、棒の半分から下に指の太さくらいの溝を螺旋状に尻まで彫っていく。これで柄は完了。
次に穂先。柄の延長線を基準にして、そこから半径が柄1本分くらいになるよう落としていく。刺突用というか投擲用なので矢尻のような四角錘を目指して削っていく。更に刺さりやすいように角と角の間を凹ますように削っていき、それぞれの角を際立たせる。
鐫の側面や石の槍を使って(耐久減っても戻せるし)研いで完成だ。
・投石槍(作:ラグメル)(ランク:1)(質:D)
━ATK:10,耐久値:10
Dという結果は残念たったが、個人的には結構満足だ。帰ってから他の道具も使って質を上げてからレシピとして登録きするとしようかな。