『あまり強い言葉を遣うなよ。弱く見えるぞ』……母:「ちゃんといわないとわかんないよ」俺「は?!」【2021/06/17原文作成】
「あかん。『一橋桐子の犯罪日記』めっちゃ面白くて、読み込んでまう。これやばい」
鴉野が言うと母ゆっこさんは。
( ゜д゜)<『ちゃんと何がどうなってどうしたのか言わないとわかんない』
は?!
「だから、『一橋桐子の犯罪日記』めっちゃ面白くて、読み込んでもうてアカンっていうとるやん。これやばいで」
「だからちゃんと主語とか省かずいってよ!」
「主語も動詞も省いていないのだが」
「言ってないじゃない!」
母がなにをいっているのかわからない。
しばし親子喧嘩勃発!
母曰く。
「つよいことばを使うとわかんないよ! 丁寧にちいさな言葉でしっかりいってよ。ぜんぜんわかんない! おとが飛んできこえない!」
「……この本は大層興味深い内容ですので、読み耽るあまり時を玩弄してしまい、生活に破綻をきたすかもしれません」
(※玩弄=がんろう。おもちゃのように弄ぶ意味と、大切にするという二つの相反する意味がある。例:「玩弄品のように家にのみ閉じこめられて〜」田山布袋『道綱の母』)
母が『一橋桐子(76)の犯罪日記』を熱心に読んでいる。なんでも図書館の期日が迫っているらしい。人気作なので延長できないらしい。
読んでみると文字が大きく読みやすい。
原田ひ香はいい本書く。
こういう作家にこそWikipediaは各作品解説詳細を載せて欲しい。
暴走族みたいななんとか12神将だのメインヒロインの一人が十人くらいあるクソ長い上、他で役立たない設定資料はWikipediaにはいらない(※個人的意見かつ炎上発言)。
現実世界の暴走族ならヤクザや半グレのスカウトには役立つ情報かもしれないが、読者には既出で読者でない人間には真面目にどうでもいい情報が5万字以上あったりする。自演で書いている方々は猛省し、素直に自分のマイページに書いておいてほしい。
鴉野は原田ひ香を読んだことがなかったが、母ゆっこさん曰く『日本百名山』より読みやすいらしい。深田久弥さん……。
いや、たしかに『日本百名山』は読みにくいが、山に興味のない筆者はさておき、やまに興味のあるゆっこさんが読んでなお読みにくいのか。
確かにアララギ派の各著者の句すべてまで筆者は覚えていないし、次々と現れる難解語を含む本文は一見落ち着いて書いているように見えてこまめに辞書を紐解いていくと『あ、深田久弥さんヒャッハーしている』になる。そりゃ文章が難しくても共感度が高いだろう。
筆者鴉野は文豪調の口語など『何いっているかわからない賢ぶった、あるいはその人しか理解していない演出』という位置付けであるが、ゆっこさんの意見はだいぶ違うらしい。
オノマトペは風の音を言語化した『ごうごう』とか『どっどど どどうど どどうど どどう』(※宮沢賢治)、犬の声『ワンワン』などがある。
厳密にはちがうのだが、働き的には若者の使う『チョー』とか『めっちゃ』『やばい』なども含めていいかもしれない。どちらもかなり『強い』言葉だ。
なんせ『ももたろう』のストーリーラインを忘れても『どんぶらこっこどんぶらこっこ』だけは覚えている方がいらっしゃるらしいのだ。
この場合どちらもゆっこさん曰く『強い言葉』である。
昨今の若者言葉は当然鴉野のようなジジイも使う。
つまり、恐ろしいことに鴉野の周囲にいるジジイどもの意思疎通は五割以上共感で成り立っていることになってしまう。
オノマトペや『チョー』『スゲー』『めっちゃ』『やべえ』は口語としては便利なのだが『現代人強調しすぎ』でもある。
それが老人には聞こえないとゆっこさんはおっしゃるのだが、多分鴉野のようなオッサン含め若者たちも自分たちの会話の半分以上を聞き飛ばしていることになる。
これは由々しき、そして実に興味深い。
漫画だと『splash!』といって登場人物は水に飛び込む。日本の漫画だと『どっぽん!』だろう。
漫画作品独特だと『斬!』『?!!』『ざわ…ざわ…』なども挙げられる。斬はオノマトペなのか極めて疑問だが母曰く『強い言葉』であろう。
漫画では登場人物が喋らない『効果音』も多い。爆発して『ドカン』とか豪快にものや敵を斬って『斬』とかだ。
微風や登場人物がその場に入ってきたときには心地よいときに『ふわっ』とか、風や人がこちらの了解と関係なく『スッと』入ってきたり(スマートな意味合いもある)と同じ事象の表現でも変わってくることがある。
だいたい、日本人は花が散るとか落ちるとか花の種類によって変えたりするのだ。
前述したが昔話だと『どんぶらこ、どんぶらこ』というオノマトペも存在する。インパクト絶大すぎるわ。他にどこで使えと。
オノマトペの強力さを示す例として、主語を省きさらに動詞も省いてなおもオノマトペで返答することは一部可能だ。
『お客さん。牛丼(の汁)どれくらい』
『だくだく!』
『ちょちょい』
冷静に考えなおすとよく理解できるな。
漫画のセリフももう少し掘り下げたい。
『オラワクワクしてきたぞ』
冷静に考えたらオラで主語、ワクワクを表すとしたら『敵の強さにバトルマニアとして感情が昂ってしまいとても嬉しい』になるだろうか。
つまり、オノマトペやこれほどに強い言葉と言える。言い換え出来過ぎ問題だ。
そのくせ『どんぶらこ』みたいなよそでどう使うのかなものまである。
生き物の鳴き声として
『わんわん』『バウバウ』(犬)
『にゃー』(猫)
動詞を修飾したり強めたり弱めたりする用法としては
『じゃんじゃん』持ってきて!
『ちょっとだけ』持ってきて。
この場合動詞を省いても『じゃんじゃん』や『ちょっとだけ』でも先に問われていれば意味は通じる。
『ワクワク』してきた(※漫画『ドラゴンボール』)
この場合は動詞が無く、主語もないにも関わらず状況から本人が興奮状態を相手に伝えている。
英語のオノマトペは前述したがslash!とかboom!とかsplash!とかバウバウなどがあり文化圏によって同じ音や雰囲気を示すオノマトペは変わっていく。
もっと狭い範囲、特定の世界だけの独特のオノマトペだと『ざわ……ざわざわ……』(※カイジシリーズなど福本伸行の作品限定)が有名だろうか。
もう少し広い使い方ならば『!??』(講談社関係の漫画作品)などがある。
もうオノマトペと呼んでいいのかコレ、記号だぞ。
強い言葉としては『めっちゃ』『超』とかも最近は入れてもいいかも。
冒頭に戻るが老人(※母)いうところ、強いオノマトペは主題に置き換わり、結果老人の脳には文章が頭切れを起こすそうであり。
「この本『めっちゃ』面白い。『やばい』きづいたらすげえ読み込んで『やばい』」
と、言われると彼女の脳は『やばい』(※百歩譲って『めっちゃ』『やばい』『やばい』)しか聞こえない状態になるそうです。
「何言っているのかわからないから最初からちゃんと話して」
「この本は大層興味深い内容のため、時を忘れて読み込んでしまい、今日の用事を忘れそうです」
これなら聴こえる。
文豪調の文章や強い言葉を使わない配慮は口語において重要。
逆を言えば、チョーを連発する若者は五割以上共感のみで会話を成立させているとも言えるので、外国人がよくわからない表現や単語を飛ばして日本人に伝える場合は『すっげー』『チョー』『わかるー』を語尾に『アル』を入れる要領で誤魔化せそうである。
こんなことを教える輩は多分試験に落ちるだろうが。
あんま強い言葉を使うなよ……バカに見えるぞ。
筆者の事である。