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限界オタクが悪役令嬢に生まれ変わって最推しに出逢えて尊い!ので、推しの闇落ちルートを全力回避します  作者: 睦月のにこ


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第二部・隣国の白獅子将軍アレクセイ様がウチのお屋敷に泊まりに来ました。

 戴冠式が終わったその日の夜。

 キャルロット公爵邸は少し浮き足立っていたわ。


 王宮から帰ってきたキャルロット公爵であるロベルトお父様が、とんでもないことしてくれましてよ。


「今日からウチに滞在することになった、ドルンゲン帝国のアレクセイ・ヴァン・ベルツ将軍だ。

 皆、粗相のない様に」


 アレクセイ様はうやうやしく会釈して。


「こんばんは、初めてお会いできて光栄です。

 僕はアレクセイ・ヴァン・ベルツと申します。

 しばらくご厄介になります」


 アレクセイ様ってドルンゲンの将軍だから、ドルシュキー家の残党や、先王派に目を付けられている。

 だから王宮や、ドルシュキーに関係しているホテルに滞在しにくいそうよ。


 だからってお父様、安請け合いでうちのお屋敷に泊める?



 リオが、スッゴい嫌そうな顔をしているわ。


 若いメイドやメアリー達は。


「きゃー!カッコいいー!」


 甲高い黄色い声を上げているわ。


「……おや、貴方は。

 大聖堂ではどうもありがとうございました。

 レディ?」


「私、セルシアナエリーゼ・フォン・キャルロットと申します。

 どうぞお見知り置きを」


「ああ、フィオナ新国王の元婚約者の?

 舞踏会で婚約破棄されたと、それはお気の毒に。

 今は婚約者をお探しで?


 よろしければ、僕と婚約しませんか?」


 微笑みながら私の手の甲にキスをして、流れるように顎クイするアレクセイ将軍。

 近い近い!オタクの情緒が死んじゃいます!

 その目はまるで白獅子、捕食者の様だわ。


「その提案はとても魅力的ですけれど……申し訳ありませんわ。

 私、リオネル王子と婚約したもので」


「リオネルって……レオニード?!

 第二王子の闇魔法使いとですか?


 ははは!なかなか豪胆な方ですね。


 ところで、セルシアナエリーゼ様。

 カミーリア・バートンと言う女性に覚えはありませんか?」


 私は思わず反応する。

 それって……間違いなくミステリアスローズの次作のヒロインの名前ですわねー!?


 

 物凄い形相のリオが、私とアレクセイ様の間に割って入ってきたわ。


「アレクセイ!

 彼女、セルシアナエリーゼは俺の婚約者だ。

 これ以上彼女に手を出すな」


「これはこれは、とんだ失礼を。

 ローズベル王国皇太子になられたのですね?

 レオニード様」


「レオニードではない。こちらではリオネルだ」


 うん?

 違和感あるわね。

 例えばだけど、イギリスとロシアでは名前の読み方が違うってやつかしら?


「リオはアレクセイ様とお知り合いなの?」


「……ああ、そんな所だ」


 リオが私とアレクセイ様の間に入って、警戒心むき出しにするなんて。

 嫉妬……してるのかしら?

 ちょっと嬉しいな。


「こんばんは、お邪魔するよ。


 エリーゼ。

 いい加減リオネルとの婚約解消してくれないか?


 お陰で、私は独りで戴冠式を……」


 そこにフィオナ陛下までやって来たわ。


「こんばんは新国王陛下、いい夜ですわね。


 ……って、何でフィオナ陛下までウチのお屋敷にいらっしゃるのですか?

 王宮で休まれているはずでは?


 まさか、晩餐をウチで取るおつもりですか?」


「あんな堅苦しい所では、私の気が休まらないよ。


 どうせ公式の晩餐会は後日開くんだ。


 式典の後の晩餐ぐらい、家族や親戚に囲まれてゆっくり食事を取らせて欲しいよ。


 ロベルト公爵が、今日の晩餐は公爵秘伝のレシピのビーフシチューだと言うんだ。

 私から直々にロベルト公爵に頼んで、ここに連れて来てもらったのさ。


 君のお屋敷ならば毒見も必要ないだろう?


 ああ、疲れたな。私も一晩泊まっていこうかな?

 バスルーム借りていい?」


 フィオナ陛下、まるで仲のいい親戚の家に遊びに来て、ついでに泊まりに来たぐらいの感覚だわ。


「……おや、アレクセイ将軍。こんばんは。

 今日の宿はこちらでしたか」


 アレクセイ将軍はフィオナ陛下に歩み寄る。


 アレクセイ将軍は右手を胸に置き、それは見事なボウ・アンド・スクレープをして。


「非公式の場で申し訳ないのですが。

 ローズベル王国の新国王フィオナ・ダマスク・ローズベル陛下。

 ドルンゲン帝国より祝意を表します」


 フィオナ新王は穏やかに微笑む。


「ご来訪、大変光栄だ。

 ドルンゲン帝国代表、白獅子将軍アレクセイ殿」


 フィオナ新王とアレクセイ将軍の雰囲気が凄い。

 高貴さと威厳というか尊みしかない……息が出来ない。助けて。


 アレクセイ将軍、少し頬が紅潮している様な気がするわ。

 緊張でもしているのかしら?


 フィオナ新王は、とびきりの営業スマイルをしてこう仰る。


「しかし戦場の勇猛さのみならず、あのような祭典の場でも華やぐとは。

 流石ドルンゲンの勇将アレクセイ殿」


「お褒めに預かり大変光栄です。

 フィオナ新国王陛下。


 今後とも、ローズベル王国との友好を深める所存です」


「ふふ、まるでアレクセイ様こそドルンゲン帝国の次期皇帝の様な振る舞いだ」


 私もフィオナ陛下と同意見よ。

 そもそも戴冠式って異国の来賓として皇太子が参加するのが慣わしよね。


 アレクセイ様って、何処かの皇太子かな?と思わせる気品もあるわ。


「僕のような若輩の身がその様な重役など、とてもとても。


 ……ところで、何故フィオナ新国王陛下。


 どうして、先に見つかったという光の聖女を妃として迎え入れないのですか?

 王権の示威にはもってこいでしょう?」


 和やかな空気に、ピリッと亀裂が入る発言ね。

 この場に光の聖女であるロジーがいなくて良かったわ。


「ローズティアさんは聖女である前に。

 我々王族が守るべき国民であり、学園での友人だよ。


 この王都ブルーシャトーの下町を愛し、自分の家族を大切に思っている。

 そんな少女を引き離して王宮に据えるなんて、酷だろう?」



 そうよ、大聖堂からお屋敷に帰ってきて、ロジーはすぐにメイド服に着替えて。


「アタシ、こっちの方が気が楽ですー!」


 って言っていたもの。


 ちなみに、今ロジーは晩餐の為に厨房でジャガイモやタマネギの皮むきしているわ……なんて絶対言えないわよね。


 あれだけ、私の侍女として大人しくしてなさいって言ったのに。



「……ふむ、光の聖女と結婚の為に、キャルロット公爵令嬢と婚約破棄したというのに?

 僕はそう伝え聞いていますよ」


「それはドルシュキーの陰謀を暴くための演技でだね……?

 すぐに再婚約するつもりだったんだけれど……

 リオネルにしてやられてね?」


 アレクセイ様に突っ込まれて動揺したのか、フィオナ国王陛下はいつもの素の口調に戻っちゃってるわ。

 まだまだね。


「フィオナ兄上。


 お言葉ですが、公式の舞踏会中に婚約破棄され、エリーゼは傷心となったのですよ?


 前にもお約束しましたよね?

 何かあったら俺が責任持って貰い受けると。


 それに何の不義が?」


 リオったら、フィオナ国王陛下やアレクセイ様に張り合おうとしてない?


「そういえば、昨年の舞踏会でドルシュキー派の一斉摘発をしたと伺いましたが。


 あの一件、どなたが筋書きを書いたのですか?

 フィオナ国王陛下?」


 フィオナ陛下は慌てて私の方に視線を向ける。


 私はアレクセイ様に困ったような笑みを返して。


「ええと。私には何を仰っているのか分かりませんわ」


「……なるほど、分かりました。末恐ろしいお方ですね」


 フィオナ陛下、アレクセイ様にバレちゃうでしょ。




 フィオナ陛下がコソッと耳打ちする。


「……エリーゼ、気を付けてくれ。

 白獅子アレクセイ将軍はローズベル軍を何度も負かし、何度も撤退に追い込んでいる手練れだ。


 あのドルンゲンの悪帝アルヴェインにも気に入られている要注意人だよ。

 こちらに不利になる情報は一切漏らさないように」


「……分かりましたわ。気を引き締めます」


「アレクセイ将軍は、リリー妃の異母弟に当たる方なのにね。薄情なものだよ」


 そう答えるも、フィオナ陛下の視線はアレクセイ様に向いたままだわ。



 お父様はにこやかに。


「こんな所で立ち話もなんだ。

 込み入った話は晩餐でしないかい。

 そろそろアレクセイ将軍をお部屋の方へご案内してもよろしいかな?」


「そうですね、公爵閣下。

 ……ところでバスルームお借りしても?」


 アレクセイ様も疲れているご様子ね。


 フィオナの戴冠式は、歴史的瞬間であると同時に、私にとっては推し三人の初邂逅の瞬間でもあった。



 ドレスを着替えて、食堂に行くと特別なメニューが私たちを出迎えてくれたわ。


 晩餐には前菜として、ヘルシーな野菜のキッシュ。


 メインには、鴨肉のパイ。

 それにコロネーションチキンという、チキンにあんず、レーズン、マヨネーズとカレー粉を混ぜたソースを和えたものが出たわ。


 スープには、ウチの秘伝ビーフシチューが出ました。

 牛の良いお肉にローリエ、赤ワインに香味野菜をコトコト煮込んだ特別製のブラウンシチューなのよね。


 デザートは昔の女王が好んだ、ローズベル伝統のビクトリアスポンジ。

 ラズベリージャムを挟んだシンプルなケーキよ。



 戴冠式の今晩は、庶民にもローストビーフやプラム・プディング、パンやエールが無料で振る舞われるそうよ。


 フィオナ陛下は疲れが出たのかうつらうつらしながら、手にしたスプーンが止まってるわ

 リオはやたらとアレクセイ様に小言を言いながら。


 アレクセイ様はと言うと、疲れなど素知らぬ顔でテーブルマナーも慣れた手付きで召し上がっていたわ。


「アレクセイ将軍の出身国、ドルンゲン帝国の宮廷料理はフレンチがメジャーだと聞くが。

 ベルツ公爵家も同じなのかな?

 よろしければ今後、ウチの料理もフレンチに……」


「いえ、お気遣いなく。


 そもそもベルツの家は、元々エウロペ大陸の中央諸国の平原地域の出身で。


 先祖が次男坊だか三男坊で家を継げないからと、ドルンゲンの母体となった北方植民騎士団に参加し、武功を立てたのが始まりなのです。


 貧乏なお国柄でしたので、元は食事は粗食、ソーセージやザワークラフト、硬いライ麦黒パンで済むような家だったのです」


 なんて、お父様と談笑していたわ。


 ただ、お酒には一切手を付けないのが気になる所ね。

 軍人の癖?それとも警戒されているのかしら?


 ところでリオ?フィオナ陛下?

 あのね?私はアレクセイ様に、重要な話をしなければならないのよ。


 アレクセイ様がお探ししているカメリアという女性、ウチのお屋敷で侍女として働いているのよねって。



※※※


 動揺したのか、遠目で見張っていたカメリアは呻いて。


「……うそ、あの方が。冗談でしょ?」


 ヨハネスは険しい顔でカメリアの耳元で囁く。


「……まさか本国から、あの方が来られるとは。

 見つかるなよ、カメリア。

 絶対に計画を漏らすな」


「ねえ、ヨハネス。

 まさか、アレクセイ様もターゲットに入っているの?」


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