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限界オタクが悪役令嬢に生まれ変わって最推しに出逢えて尊い!ので、推しの闇落ちルートを全力回避します  作者: 睦月のにこ


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【ノーマルエンド】悪役になれなかった限界オタク令嬢、裏ルートエンドで最推しと婚約するのはおこがましいのでしょうか?

「ヴェロニカ王妃の発言は、我が王命である。


 聖女ローズティアを妃とし、光の御子を産ませよ。何人も何人も。


 また、亡きリリー妃の開発した遺産、リオネルの背に刻んだ闇の呪術魔法式を起動させドルンゲン帝国を蹂躙、掃討させよ。

 魔法式の起動の魔力源としてセルシアナエリーゼ公爵令嬢を使用せよ。


 ……さもなくば、聖女の妹の命は無い」


「お父様……どうして!?」


 フィオナ殿下の声が震える。


「許せ、フィオナ。

 私も……愚かな王として侮辱されるのには、もう疲れたのだ。

 結局、私は……ヴェロニカと同じ。己のエゴを守ることしか考えられぬ性質なのだよ」


 一瞬だけ、国王の顔に哀しみの色が走る。


「持参金目的の結婚相手、仮面夫婦でしかなかったのに……王族の誇りを、ヴェロニカに守らせた……。

 あの娘は、ただの平凡で気弱な少女だったのに。無理に王宮に召し上げたばかりに……私は、可哀想なことをした。


 私とて、あの戦上手で知られたドルンゲンの悪帝アルヴェインを相手に、過去の栄達の様に戦の華を飾りたいのだよ」


「父上……貴方の口から、覇道を語るとは……」


「何をおっしゃっているのですか?陛下。

 一見平凡でも平和な統治者こそ、誇るべきではないのですか?

 血や炎で名を馳せる覇王になど、戦の時代以外に価値はあるのかは……」


 でも、フレデリク王は首を横に何度も振るわ。


「……ふん。覇道すら為せぬのなら、私の生には何の意味も残らぬ!

 私は、光の魔力も持たぬ……。

 父にも母にも、諸侯貴族はおろか民にも……


 闇持ちと疎まれる存在だったのだ。

 なのに、何も成せぬ。

 闇の魔力を持つというだけで何もさせてくれぬ!

 私は何者にもなれず、凡庸にすり潰されていくだけなのか!


 だからこそ……リリーが、リオネルの存在が、あまりに優秀で、まぶしすぎて……到底、私の息子には思えなかったのだ。

 故に、ヴェロニカに言ったのだ。

 リオネルは私の子ではないのでは?と……」


 ……はい?国王陛下が闇魔法使い?

 リオネル様が自身の子ではないと王妃に吹き込んだ、ですって?!


「ドルンゲンの悪帝さえいなければ!

 私は優秀な王でいられた!


 リリーさえ、リオネルさえいなければ!

 私はこの国で最高の闇魔法使いだったのに……!


 だから、あの母子をドルンゲン帝国掃討の道具として使う事にしたのだ。

 術式に馴染むよう、触媒を仕掛けをして……!」


 その瞬間、会場は静まり返った。


 嘘でしょ。

 国王陛下が……闇の魔法使いだったなんて。


 しかも、リリー妃とリオを巻き込んでそんな事を企んでいたなんて。


「まさかその仕掛けって……?!

 嘘でしょ?だって、あの薬は王宮で使われている様な精度の高いモノではなかったはず……!」


 私はアニータから聞いた事を思わず呟くと。


「それは王族の関与がバレない様に、敢えてウチの領から取れる粗末な精製の薬を使ったからだろ!


 薬の調達を嫌がったグレイル卿とその家族……カミーユを、馬車の事故に見せかけて屠ったの、アンタですよね?

 調べさせてもらいましたよ。フレデリク王!」


 ヨハン様がそう吠えたわ。怒りを露わにして。


「はっ!証拠はあるのか?」


「証拠ならある!」


 リオが叫ぶ。

 懐から取り出したのは、かつて我がキャルロット家で差し入れた銀食器だわ。あの黒く変色したフォークとスプーンよ。


「ヴェロニカ王妃の差金だと思っていたが……やはり父上の指示だったのか!」


「でっち上げだ!

 リオネル第二王子とキャルロット公爵家はそこまで堕ちたのか!

 何と嘆かわしい!」


「……それだけではないですよね?フレデリク国王陛下。

 アタシの叔父さん、アルベリック・マリー・ルイーズはリリー妃付きの騎士でした。


 リリー妃の食事、銀食器を使うと必ず黒くなるって言ってましたよ?食後、体調を必ず崩すって。


 その時の証拠、アルベリック叔父さんから渡されて持ってます。

 だから隠蔽するために、まず、アタシの家を焼いたのですよね?

 そして、アルベリック叔父さんの家も。こっちはボヤですみましたけど」


 そう言って、ロジーは黒ずんだ銀製の指輪、それもローズベルの王家の紋章入りのものを掲げたわ。


「リリー妃が試しに銀の指輪を入れてみたらこうなったそうです。それから間も無く亡くなったと。


 アタシの大好きなローズマリー叔母さんが、死産まもなくして亡くなったのも、その話を叔父さんと、ドルシュキー家で聞いたからじゃないかって……」


「違う!あれはグレイル卿が悪いのだ!

 闇魔法の触媒にあの薬を飲ませるといいと言ったのだぞ!

 なのに、いざとなったら尻込みしおって!」


 責任転嫁するフレデリク国王。その姿はまるで滑稽な道化の様だわ。


「近衛兵!その無礼な連中を始末しろ!

 どうした?!私の指示になぜ従わない!

 私こそローズベルの王!光の聖女、青薔薇の聖女の正統な後継者だと言うのに!」


 国王の激昂に、誰もが押し黙るわ。


「今宵はボイドが長い。


 召喚にはうってつけの夜だな。

 のう?リオネル。


 我汝を召喚す。

 おお、天高き王より

 頂戴せしみ力において汝に命ず!

 イービルシャドウ」


 すると黒い闇が轟轟とゆらめいて騎士のような悪魔の影が現れたわ!


「させない!サモン・バアルゼブル!」


 リオの闇の魔力を帯びた声に応じ、現れたのは。

 雄々しい山羊のツノ、紅い瞳の威厳のある老王。


 赤黒い雷光を解き放ち、激しい礫の様な嵐雨で影の騎士を翻弄する!


 室内には暴風が吹き荒れ、シャンデリアが激しく揺れる。壁や天井にヒビが入ったわ。



 危ない!リオを助けなきゃ!と、私は咄嗟に。


「ロジー!それ貸して!」


 私はたまらず、ロジーの手にしている光の魔力を帯びたレイピアを借りて駆け出す。


 それだけなのに、ふわりとドレスが舞い、青薔薇の花びらが舞い上がった。

 まるで、ダンスを踊っているかの様に。


 私は迷わず、フレデリク国王に、示現流初太刀の一撃を振りかざそうとすると!


 すると光のレイピアから魔力が溢れてる?

 いいえ、レイピアからではないわ。

 私の手から放たれた美しくも鮮やかな魔力の光が、瞬間、嵐が吹き荒れる空間とデーモンたちを切り裂いたのだった。



「青薔薇の魔法!無詠唱か?!もうモノにしたというのか!」


 驚愕するフレデリク国王。顔色が青白いわ。


「……やっぱり詠唱無しだと、魔法のコントロール取り辛いわね」


 対して私は、光のレイピア装備でようやく使えた魔法の文句言っていたわ。

 だってこれ、無双感はあるけど本当に使い勝手が悪いんだもの。


「エリーゼ姉上!?

 いきなり魔力を暴発させないでくれないか?!

 危ないだろう!


 青薔薇の魔法は、闇の魔力ほどではないが扱いにくいと有名だろう!

 もっと心を平静に保ち、かつ細心の注意を払ってコントロールを保たないとだな?!」


 はい。リオのおっしゃる通りです。

 つまり、これ魔力の暴発なのよね。


 お陰様でフレデリク国王陛下を一撃必殺……つまりはチェストしなくて済んだけれど。すれば良かったかな。


 以前、お爺様の書き付けを見た事がある。

 無詠唱魔法はコントロール効かないし、小回り効かなくて使い勝手悪いってぼやいてたって、書いてあったわ。あれって、本当だったのね。


 私が発生させた魔法の蔦が壁や柱、天井まで伝い、次々と青薔薇を咲かせてゆくわ。


 ……えっと、この青薔薇の蔦、消えるわよね?

 消えなかったら王宮の庭師総出で草刈りよね?


「草刈りどうしよう?除草剤ってあったかしら?

 いやそもそも、魔法の蔦って除草剤効くの……?」


「心配するのはそこなのか?エリーゼ姉上……」


 前世の田舎のおばあちゃんが、除草剤マニアだったのよね。その理由が今なら分かる気がするわ。


 

 それでもなおフレデリク国王は反撃しようと試みる。だが。


「凍てつく氷の鎖よ!フロストチェイン!」


 詠唱と共にフレデリク国王陛下が立つ床から、氷の鎖が生まれ何本も国王陛下を縛り上げる!


「フィオナ、貴様……!」


「おや、そちらが先に魔法で仕掛けてきたのですから、私が宮中で魔法を使っても正当防衛ですよね?フレデリク陛下。

 それ以上動かないでください。少しでも動いたら撃ちますよ。

 私の大事なリオネルと、セルシアナエリーゼに手を出すと言うのならね」


「闇よ!我が呼び声に応えよ!デモンズランス!」


 リオは闇の魔力を纏った槍を召喚する。


「父上、貴方だったのか……!リリー母上の仇!」


 そして、父王にその矛先を向け……!



「フィオナ!リオネル!そこまで!


 フレデリク、いい加減になさい!


 光の魔力と闇の力は対なんだ!憎むべき対象ではない!

 桜子お祖母様は、異世界から飛ばされてしばらく諸国を放浪していたのは知っているだろう?

 それを見かねたドルンゲンの闇魔法の大家に手厚く保護されてローズベルへ来たのだよ?!


 ……もうここまでで、よろしい!退位されてはいかがですか?」


 お父様はため息を吐く。深い悔恨を悲しみを添えて。


「フレデリク、正直言うとね。

 僕は光の聖女だの、闇の魔法使いだの、青薔薇の聖女なんてものには、本当にウンザリしているんだ。


 それで、亡くなった青薔薇の聖女だった桜子お祖母様は本当に幸せだったとお思いか?

 あの方は気丈な性格でしたから、そもそも弱音は吐きませんでしたが。


 そもそもドルンゲン公爵家の暴走は国王陛下自身の管理不行き届きでしょう?

 英雄だろうと平凡だろうと愚劣だろうと、評価などもうどうでもいいじゃないか。

 最後ぐらいは責任を持って幕を引くべきでしょう」



 いつの間にか、私はレイピアを落としてしまったみたいね。

 地面に転がっているレイピアを、ロジー拾い上げる。


 そして、ロジーはフレデリク王の喉元に、レイピアの切先を突き付けたわ。


「国王陛下、アタシは貴方の意見には従えません。

 それはフィオナ王太子も、リオネル第二王子も同じ。


 それでも抵抗するなら……王殺しの罪は、アタシが背負います」


 慌ててお父様が一喝する。


「よしなさい、ローズティア嬢!

 貴方はまだ保護すべき子どもだろう?


 その罪は、王宮に仕える我々大人が背負うべきだ。


 フィオナ王太子殿下は、父と私、スターリングシルバー公爵がお支えます。


 ご心配なさらず。陛下、ご譲位を。

 さもなくば、どうなるかお分かりですよね?」


「……全く、ロベルトはおっとりしている様で、相変わらず強情だな。

 その頑として譲らない態度。大嫌いなお祖母様に似たものだ。


 やはり、私では無理なのか。悔しいものだ。


 光の聖女も、青薔薇の聖女も、闇の力に愛されたリオネルすら、私には眩しい……」


 そう呟いて、フレデリク国王。観念したかの様に、王冠を静かに下ろしたのだった。


 この後、北方のスターリングシルバー領の最果てにある離宮へ幽閉されるそうよ。




 キャスは腰が抜けたのか、へたり込んで座っている。なかなか動かないわ。


「ちょっと、何してくれてんの!

 アタシこそが聖女なの!ヒロインはアタシなの!

 なんで誰も言う事を聞いてくれないの!」


 そう喚くも、誰もが嫌悪の表情を浮かべて遠のいていく。


 聖女ではないと分かった途端、誰にも相手にされずにスルーされていくのは、なんだか物悲しいわね。


 結局、お兄さんのウィリアムロブさんにしょっ引かれて、外へと連れて行かれたわ。


 聖女を騙った罪、王侯貴族を謀った罪で、本来なら極刑……だけれど清貧禁欲で有名な厳律派修道院の独房みたいな所に終身隔離になるそうよ。



「……ちょっと!

 こんな政変にいきなり付き合わせるなんて、酷くないですか?フィオナ殿下!」


「ぷっふふ!あはは……!そうだよね、エリーゼ!


 私も疲れたよ。

 ああ、気が抜けたらお腹空いたな。

 君の唐揚げお腹いっぱいに食べたいよ。


 新メニューのカツカレー?と言うのも美味しそうだ。


 是非とも私のためだけに作ってくれ」


「私、一応は公爵令嬢ですから厨房に立った事もありませんわよ?

 それに料理作れるなんていつ言いまして?」


「ああ、君の家の厨房の料理長が知り合いなんだ。

 屋敷の中での事も、全部聞かされてるよ?」


 嘘?公爵家の中の事、全部フィオナ殿下に筒抜け?怖!




 ロジーがおずおすと、口を開こうとしているわ。なんだろう?


「……ごめんなさい、エリーゼ様。


 アタシみんなの為に光の魔法使っていたら。

 家が焼けちゃって。身寄りが無くなって……。

 『生きてくためだから』って妹のキャスに強制されて、聖女になって。

 何度も何度も同じ時間を繰り返して、その度にセルシアナエリーゼ様を不幸にして……!


 でも、今回エリーゼ様がリオネル王子を助けた時から。

 マリー・ルイーズ家が光の聖女を隠したと言う噂を流されて。

 入学前に家が焼かれなかった時、アタシは助かったのだと思いました。

 家を焼かれて、家族を失ったあの時から止まった時間が、まるで流れ出したかの様でした。


 本当にアタシを助けてくれてありがとうございました」



 ああ、やっぱり。全てはリオを助けた時から、フラグが崩壊していたのね……。

 なんとなく気が付いていたけど、ヒロインとキャスは、やはりタイムリープしてたのね。


「アタシ、やっぱり修道院に入ります!

 今までのエリーゼ様に悪い事をした罪に耐えきれない!

 青薔薇の聖女セルシアナエリーゼ様に、こんなアタシじゃ相応しくない……!」


 泣きっ面のロジー。


「こら!いけない子ね!許さないわよ。

 ……でも罪を告白してくれたのね。

 ロジー、今まで辛かったわね。


 でも、ロジーがいなくなったら、私寂しいわ。

 今後、例えどんな選択をしようと、これからも友達でいてもらっていい?

 手紙ぐらいなら送っていいよね?」


「そんな……!嬉しいです!

 セルシアナエリーゼ様は聖女様ですか?

 あ、青薔薇の聖女様だった!」


 いや、許さないって言ったんだけど。何故懐かれるの?


 なんか勝手に青薔薇の聖女とか言われてますけども。たったこれだけの芸当で……?




 ロナウド様が改まって。


「我がドルシュキー公爵家の者がとんだご無礼を働き、申し訳ありませんでした。


 光の聖女ローズティア様。

 リオネル第二王子、セルシアナエリーゼ公爵令嬢。


 フィオナ王太子殿下……

 いえ、フィオナ次期国王陛下。


 この後、下される処遇は甘んじてお受けします。

 今後ドルンゲン帝国が攻めて来る事でしょう。


 どうか先鋒はこの私、ロナウドに……」


「君は、祖父や母上の言う事に従わなければならなかった身なのは理解しているけれどね。

 本当に信用していいのかな?

 裏切る可能性のある、ドルシュキー公爵家の者であるという自覚は?」


「……ドルンゲンの悪帝は、元は一将校から成り上がった身。旧王家の者ではありません。

 それに裏切り者には、手厳しいはずですよ?

 僕の様な旧王家の血を引く家柄だけの……成果や実力も無く、血の繋がりもない若造など、相手にしない方だ。


 それに仮に死んでも、あの世でローズマリーにまた叱られるだけですよ」


 寂しげに微笑むロナウド様。これから大変だろう。

 お家は降格、または……。






 リオが不意にこちらを見つめているわ。


 なんかその宝石の様なオッドアイの目線熱くない?

 なんで、そんな嬉しそうに私を見つめて微笑むの?


 悪役令嬢になれなかった私じゃなくて、聖女の方を見てあげて。


 そんな私の意思に反して、リオネル第二王子は近づいてくる。

 改まって私の右手を取り、膝をつく。まるで求婚する王子様の様だわ。


「それにしても、エリーゼ姉上は未来視持ちの預言の聖女だと睨んでいたのに。


 まさかこんな無茶までして、俺を助けようとしてくれたなんて。


 しかも、青薔薇の聖女だったなんてな」


「……私、聖女でもヒロインでもないの。未来視なんて、もう出来ないわよ」


 だってゲームシナリオはもうほぼ終わってしまったもの。


 この先は何も書かれていない、真っ白なページのような新しい未来が広がるのみよ。



「そんなのはいいんだ、姉上。

 可哀想に、兄上から婚約破棄されて。


 ならば敬愛する青薔薇の聖女、セルシアナエリーゼ。

 ラストダンスはどうか俺と。

 

 どうか、俺と結婚してくれませんか?」


「は、はいぃ〜!?」


 驚愕のあまり叫んでしまったわ。

 はいぃ?!私が?前世からクソオタクが全然治ってないのに?

 前世からの最推しと?結婚?私が?嘘でしょ?

 そんな私如きが、最推しと畏れ多いと言いますか?

 どこぞの夢小説じゃあるまいし!リオは寝言でも言ってるの?


「よし!『はい』と、言質取った!

 嫌とは言わせないからな?


 エリーゼは俺が責任を持って娶るから安心してくれ。いいな、フィオナ兄上?」


「ちょっと待ってくれ!

 セルシアナエリーゼのラストダンスは私と踊るべきだ!


 さっきの舞踏会の茶番の勢いで婚約破棄しちゃったけれど、それ無しだから!


 婚約破棄キャンセルで!」


 ちょっと、ちょっと待って?

 どうしてフィオナ殿下……じゃなかった。

 フィオナ次期国王陛下まで?脳がバグりますわ!


 あと割り込みは嫌われますわよ。ちゃんと待機列に並びましょう。


「リオ?言質って何よ?

 さっきのは同意じゃなくて驚きの表現であって!


 フィオナ陛下まで、婚約破棄キャンセルってなんですか?

 もうこんな事にまで巻き込んで!

 せっかく国外への逃走経路まで計画していたのに!」


「嫌だよ!私は君の事気に入ってるんだ!

 絶対手放すものか!

 君は私と共にこの国の未来を導くべきなんだ!」


 これって独占欲ってヤツかな?

 一見爽やか裏は策士王子の独占欲美味しいですね。

 でも、ヒロインにそういう事を言ってよ!


 悪役令嬢、それもオタクの私がモテても嬉しくない……いや、情緒が混乱するぐらいには……嬉しいです?


「えっ?なら、陛下とロジーとの婚約はどうするんですか」


「だったらローズティア。

 オレと結婚しようぜ?

 そうすりゃお前も王宮騎士団の仕事に関われるぞ?」


「えぇ?いいんですか!やった!

 アタシ、フレイ様のお嫁さんになる!」


「ええ?早!本当にちょっと待ってくれ!」


 早!フレイ様とロジー、スピード婚ってレベルじゃないわよ?


「あれ?いや駄目!アタシ修道院行かないと」


 私の脳内では、宇宙の真理を見た猫ちゃんが驚愕しておりますわよ。

 何が、何をどうしたらこうなるの?

 そりゃフラグ破壊しまくりましたけども?



「エリーゼ姉上。結婚するなら当然前世から好きだった俺だよな?」


「ひぇ!前世……?本当待って!

 どうして、なんで知ってるの?」


「俺はエリーゼ姉上の事ならなんでも知っているさ」


「ひえ?!前世の人なんてイマセンヨ、当に亡くなりマシタワ」


 やめて!

 限界オタクだった前世の事、知られたくない!

 よりによって最推しに!認知されたくない!

 物凄い恥ずかしいんですけど!


「何の寝言だ?リオネル?

 セルシアナエリーゼは、私の婚約者だよ?

 生まれた時からね?」


「そんな!エリーゼ様はアタシの聖女様です!」


 光の聖女ロジーまで参戦しないで!


「お?ロジーの奴、もう浮気か?

 ははは、エリーゼお嬢はモテるなぁ!

 面白そうだからオレも混ざっていいか?」


 フレイ様、笑ってないで助けて!

 推しが近すぎて息が出来ないの!


「おいおい、アレに加わったら命が危ないわ」


 ヨハン様、冷静に分析しないでよ!


 エルレン様は。


「なら私も」


 ウィンデル様、ロナウド様も諦めたかの様な笑顔でこっち見てないで!本当に助けてよ!


「ねぇ?エリーゼ。誰を選ぶんだい?

 もちろん、昔からの婚約者の私だよね?」


「何を言っているんだ、兄上。

 前世から好きな俺だよな?エリーゼ」



 待って、本当に待って!

 どなたか、本気で助けて下さいまし!


 最推しのリオネル王子と、推しのフィオナ次期国王と、大好きな光の聖女ローズティアたちに囲まれて。


 元悪役令嬢改め限界オタク令嬢、解釈違いなんだけど、もう尊くて死にそうですわ……!

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