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断罪イベントの危機を攻略対象の貴公子達が助けてくれました。

「嘘!教会騎士団長のヴィクトル様と、大聖堂教会からエルレン様がいらしたわ?!」


 炎の貴公子達フレイ様の、お兄さんであるビクトル様が、教会騎士団の礼服でいらしたわ。

 フロックコートにサッシュと、肩のふさふさしているエポレットが目を引くわ。

 威厳のある騎士の凱旋みたいでカッコいい!


「お久しぶりです。フレデリク国王陛下、ヴェロニカ王妃、ドルシュキー公爵閣下。


 王宮騎士団長を代々勤めております、ディクソン伯爵家長子、ビクトル・ヒュー・ディクソンでございます。


 今は教会騎士団に降り、団長勤めております。



 さて、先日の下町のモンスターが襲来した事件についてですが。


 たまたまウチの弟フレイと一緒に、セルシアナエリーゼ公爵令嬢と、リオネル王子が下町のお祭りに訪れていまして。


 魔物が襲って来た時には、危険を承知で闇魔法でもって奮戦していただいたお陰で、庶民も、我々教会騎士団も最小限の被害で済みました。


 教会関係者、教会騎士団一同、帝都の民一同、心より御礼申し上げます。



 ですが、そのリオネル王子が魔物召喚の疑いで捕まったとの事ですが、何かの手違いでしょう?


 教会騎士団の代表として、是非とも釈放していただきたく、参上しました」



 次に現れたのはエルレン猊下。


 こちらも教会の祭服だわ。


 司教様の格好だわ、ストラにアルパにカズラ、チングル等よ。


「教会の使者として参りました、エルレン・シメオン・ムーンローズでございます。

 リオネル王子、セルシアナエリーゼ嬢の事件当時のアリバイは教会と教会騎士団が保障します。


 また、セルシアナエリーゼ嬢は、魔力が無いのではありません。


 ただ、この方は魔法の出力障害をお持ちなのですよ。

 それも出力補助のアミュレット、タリスマンがあれば問題なく使える。


 それに扱える属性が……特殊なのです。

 

 普通の属性魔法には適性が著しく低い。


 それは教会、王宮の共通の公式見解であったはず。


 それとも、ドルシュキー公爵家は、ありもしない噂でセルシアナエリーゼ嬢とキャルロット公爵家の信用を失墜させ。

 リオネル王子を無実の罪で処刑するおつもりか?」


 えぇ?悪役令嬢って、魔力無いんじゃなかったの?!どういう事なの?


 二人の証言に、ニヤリと笑うフレイ様。


「……これのために夜通し頑張ったんだぜ?


 そのせいで、リオ王子の逮捕までに間に合わなかったんだけどさ」


 もう、フレイ様ったら。


 教会騎士団のビクトルお兄さんと、教会のエルレン様を巻き込むなんて、やってくれましたわね。



 これを受けて、フィオナ殿下が咆哮する。


「まず、王族に連なる公爵令嬢……

 それも青薔薇の聖女の直系であるセルシアナエリーゼ・フォン・キャルロット。


 彼女を魔力無しだの、ありもしない聖女へのイジメや嫌がらせ等を悪し様に吹聴して誹謗中傷し、民心を惑わせた。


 これは明白な名誉毀損である!


 さらにドルシュキー公爵家の嫡子ロナウド率いる騎士数名!


 キャルロット公爵家に押し入り、乱暴を働いた行為、これは不法侵入、窃盗行為、器物損壊、暴行未遂等である。

 貴族の身分を持って、法を踏み躙るとは!断じて許されない!


 ましてやリオネル第二王子を拘束し、ありもしない罪を着せて勝手に裁こうとした、これは紛れもなく不当逮捕、不当監禁である!


 王権と法を無視して私人が裁きを下すなど、もっての外!」


 続いて偽グレイル卿が手紙?文書かしら、複数枚の羊皮紙を掲げたわ。


 そして偽グレイル卿は声を上げた。まさか。


「また、ドルシュキー公爵家は国家叛逆を企んでいる!


 この書面を見たまえ!


 リオネル王子の暗殺、セルシアナエリーゼ嬢とキャルロット公爵家の失墜を企み。


 フィオナ王太子を王に祭り上げた後に、その王位を簒奪する計画書だ!


 ここにドルシュキー公爵とドルシュキー派の大臣、官僚らの署名がある!


 印章もドルシュキー家のものだ!」


「詭弁だ!よくもそんな捏造を!」


 するとそれを、ウィンデール様が取り上げて。


「ならば、この場で書面を読み上げよう!


『我々ドルシュキー家は、ドルンゲン帝国の前身であるドルシェ旧王国の王族の末裔であり、本来ならばドルンゲンの実権を握っているはずであった。


 かつての雪辱を果たす為に、当家は現政権を改める。


ローズベル王国の実権をドルシュキー家で掌握し、ドルンゲン帝国に天罰を下す事を決議……』」


 あれ?私がお母様から聞いた話と違うわ。


 ドルシュキー家って、元はドルンゲンの旧王国の数多くいた王子の中でも末子の方の家系で、実権なんてもらえないような方だったって言っていた様な……。



……しかし、やたらと長いわね。計画書の読み上げ。


 大体、私やリオが被害喰らった事が読み上げられているわ。

 前世の◯社のやり口じゃないんだからさぁ……って内容ね。


「『なお、王位簒奪後はドルシュキー公爵家の嫡男ロナウドを王位に据え。

ヴェロニカ王妃を摂政とする』と……」


 読み終わった瞬間、フィオナ殿下が叫ぶ。



「衛兵!」


 その瞬間、ボールルームの扉が一斉に開き、城内に配置されていた王立近衛隊が舞踏会場に雪崩れ込んだわ。


 そして。


「おや、奇遇だね。グレイル卿。


 私もちょうど今日の午後、同じ様な手紙をロナウドから貰ったんだよ」


 羊皮紙をペラペラと振って、にこやかに行ってのけるフィオナ殿下。その様子が白々しいったら!

 その後ろには、真っ青な顔をしたロナウド様が控えているわ。


 ちょっとロナウド様が?何処からそんなもの持って来たの?実家のドルシュキー?

 今朝あんな偉そうにしてたのに、心変わりにしては早すぎるし、様子が変よ?

 フィオナ殿下は一体ロナウド様に何したの!?怖っ!



「ドルシュキー公爵、ヴェロニカ王妃!

 並びにその派閥に連なる者たちを国家反逆の容疑で拘束、連行せよ!」


「な……!?」


「まさか……この舞踏会は、王太子殿下の策略……?」


「最初からセルシアナエリーゼを庇うためだったのか……いや、違う。


 王都にドルシュキー派の子女と家族を呼び寄せ、敵を一網打尽にするための陽動?!」


「セルシアナエリーゼ嬢が、あれほど静かに笑っていたのも……!」


 そう、計画通りよ。


 これは私とフィオナ殿下で仕掛けた大博打。



 万が一、フィオナ殿下が裏切ったら成立しなかったわ。


 推しのフィオナ殿下が、もし自分の親から期待された役割を貫くために、私を切り捨てるなら、それもアリなのかな、と思っていた。


 でも……違ったのね。フィオナ殿下。あの方は、私を、リオネル様を切り捨てなかったわ。

 私の婚約者は、忠義に値する方だったのね。



 ……それにしても、私はやはり悪役になれなかったわね。


 悪役令嬢って、ヒール役、ヴィランなりのカッコよさがあって結構素敵だと思ってたのになぁ。


 断罪イベントまで来ても、前世限界オタクだっただけに、シナリオ通りに行けなかったという、一抹の後悔があるわ。


 それでも最推しのリオネル様のために……いえ、前世でも今世でも私にとって一番大切なリオが酷い目に遭わずにするなら、冤罪を晴らせるなら、隣にいられるなら……と、断罪イベントまで来て。


 本来なら、悪役令嬢と敵対して断罪してくるはずの、ヒロインの攻略対称の貴公子達に守ってもらえるなんて……。

 私、また何かやらかしてしまったのかしら?いえ、心当たりしかないけれども。




 この騒ぎに、聖女と偽るキャスリーンはまだ喚き散らしているわ。


「何をしているの!


 アタシは光の聖女ローズティアなのよ!

 私がこのゲームのヒロイン、私が正義なの!


 さっさとこの悪役令嬢とその一味の方を捕まえなさいよ!」


「いいえ!皆、騙されないで!


 その者は光の聖女ではありません!」


 今世の私の友達。

 私の知っているロジーの声だ。


 本当の光の聖女、ローズティア・マリー・ルイーズの一喝が響き渡った。


 そして、聞き覚えのある、低い声。


「その者は、この国に害をもたらすドルシュキー公爵家、ドルンゲン帝国の間者です!」



 私の一番大切な、テノールのようなリオの声が王宮に力強く響いた。



 それは、教会の高らかな鐘の音のようだったわ。

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