強欲
よろよろー!
ある日の授業中。俺は、机に突っ伏し眠りについていた。
理由は簡単。
興味がないからだ。
ここで一つ、俺について語ろう。
俺は幼い頃から本が好きだった。知識が好きだった。知らないことを知るのが好きだった。
そんな俺は、とにかく幼い頃から本を読み続け、周りからは変人として扱われた。
しかし、そんな俺のことを両親は『天才』といって、色々な本を買い与えてくれた。
5歳のとき、俺は経済学の本を読み込んだ。あらゆる参考資料やガイドブック、政治家が書いた本を読んだ。
7歳のとき、料理や洗濯、マッサージなどの生活に便利な本を読み、知識を蓄えていった。
9歳になり、俺は物理学や医学、科学、数学などの理系分野の本を読みあさった。
もちろん様々な教科書や論文、研究データを読んだ。
そのために多言語を覚えるにいたり、今は日本語を含め5ヶ国語は読めるようになっている。
12歳になり、心理学や占い、歴史や武器、防具などの本に手を出した。
初歩的な嘘の見抜き方や手相占い、戦国時代の武器やその製法に至る本をかたっぱしから読んだ。
もちろん、武術などは実際に体を動かしてみながら読んでいた。
14歳のころ、それらを一通り読み終わった俺は、初めてライトノベルに手を伸ばした。
衝撃だった。その発想が、トリックが、物語が。
当然、物理学的には不可能な事象であることは理解出来ていた。
しかし、こんなことが実際にあるのでは、起こり得るのではと思いながら、俺はライトノベルを読みこむ、所謂オタクへとなっていった。
そして現在、俺はネット小説を読みあさっていた。
次々と現れる作品。次々と現れる発想。
6億作以上もある作品を前に、俺はよだれが止まらない気持ちだった。
こんな幸せな日々が続けばいい。
そう思っていた。
だが、俺の平和は崩れることとなった。
突如、教室に眩い光の円が出現する。
それは、まさに魔法陣といった風貌で、俺の知らない言語で描かれ、陣の中心に六芒星型が描かれた所謂悪魔召喚の魔法陣のような風貌だった。
教室には困惑、恐怖、歓喜の声が響き渡り
そして数秒後ーーーーーーーーー
俺たち、クラスメイト34人+女教師1人は、白い空間へと飛ばされるのだった。
ーーーーーー
真っ白な、ただ永遠と真っ白な空間に飛ばされた俺たちは、この世の死を体現するかのような男と対峙していた。
怖い、恐ろしい、殺される。そんな思いが渦巻く。
そして男が、ゆっくりと口を開き始め…………
「へぇーーーーーーい?地球人の皆さま!ミーの世界へご招待!」
なんだろう。このがっかり感。
あと、あいつに纏っていた死の気配全てが霧散した気がする。
そんなふざけた雰囲気に、周りはざわつき始める。
まぁいい、とりあえずはこの男の話を聞こう。
大体のところ予想はついているが………
「はいはぁい!地球人の皆さま。お静かに!騒ぐなら殺しちゃうよぉ?」
瞬間、全身を突き抜けるような寒気が体を襲う。
これは…………なんだ?!
「うんうん。いい子で大変結構。ってあり?ほとんど気絶しちゃってるなぁ?ま、いっか、じゃあ話を続けるねぇ?
僕の名前はアルカナ。
生と死を司る神様だよ?君たちには異世界にいって貰います!まぁ君たちに拒否権はないんだけどネ!
とはいえ、その目的は僕にも分かんないから。僕、召喚の橋渡し的役割だし。
それでね、君たちには後で、ランダムでスキルを与えます。
その他の職業選択や種族選択、SP分配は各自でやってもらうからそのつもりで。あぁ後、そこの気絶してる人たちにも今の話を伝えて上げてねー。
それじゃあ1人1つだけ、この世界の知識をプレゼントするよー!
んじゃあ、きみ!」
そう言って神はクラスの委員長を指差すと、彼女と共に消え、一瞬で戻ってきた。
「はい次君ねー!」
次はサッカー部のやつだったかな?そいつも一瞬で消え、戻ってきた。
気絶したやつらも連れて行かれ、太鼓を叩くようなテンポでどんどん消え、戻ってくるなか、俺はもう聞くことは決めていた。
そしてついに俺を指差し、俺は宇宙のようなところに飛ばされた。
「さて、君は何が聞きたいんだい。冥玲 綺凛くん?」
…………何故俺の名前を知っているのかは気になるが、そこはもう神様パワー的なやつなのだろう。何も言うまい。
俺は今、ウズウズしているのだから。
「異世界の知識全て」
「へぇ?僕は1つと言ったはずだよ?」
「全てと書いて1つだ。誰も全てが1つじゃないとは言ってないはずだ」
「ふふ、僕の思考を誘導しようっていうのかい?なら…………殺しちゃうよ?」
神がそう言った瞬間、またも俺を寒気が襲う。
だが、だが俺は知識が欲しいんだよ。
全てが、知らないもの、こと、知識、力何もかもが欲しいんだよ。
「っ……………本だって1つにつきいくつも情報が含まれているだろ。それと同じだ」
「あくまで1つの『知識』と言い張るんだ……………まぁいいや。うん。君には世界の、異世界の知識全てをプレゼントしよう!」
そう言って彼は、手に光を纏い、俺の頭に触れた。
瞬間。
「いずっぁ?!」
急激に情報がなだれ込んだ影響だろうか。俺の脳に負荷がかかり、頭を突き刺されるような痛みに襲われる。
それと同時に、脳内に声が響く。
『エクストラスキル・完全記憶を獲得しました』
『レアスキル・痛覚耐性Ⅰを獲得しました』
『痛覚耐性Ⅰが痛覚耐性Ⅱにレベルアップしました』
そんな言葉と共に、頭の痛みが収まる。というか、スキルって定番のあれ?
そんなくだらないことを考えていると、神が驚いたようにこちらを見た。
「ねぇ君、よくその情報量で耐え切れたね?絶対脳が焼ききれて死ぬと思ってたんだけど」
「ふん。死ななくて済まなかったな腹黒神。まぁ、授業料だと思って諦めろ」
俺はそう、皮肉そうに言う。つか、死ぬと思ってんなら先に言えや。まぁ腹黒神に求めるのは間違ってるだろうが。
「ははは、君は神にすら容赦ないね。いささか高い授業料だった気もするけど………まぁいいや。んじゃ、さっさと戻ろうか。他のみなはもう職業選択に移ってるとおもうよ?」
そう言って神は、指をパチンとならす。
すると今いた空間が瓦解していき、元いた場所に戻ってきた。
とりあえず、俺は皆に倣って職業選択に移ることにした。
やり方は、先ほど神から得た知識にあった。
「職業選択」
そう口にすると、俺の目の前に光のボードが現れた。
ーーーーーー
剣士見、魔法使い、槍士、拳闘士、斧使い、僧侶、盗賊、召喚士、強欲
ーーーーーー
そう書かれたボードが現れ、俺は驚愕した。知らない職業があったのだ。
『強欲』
俺の知識にない職業。
そんな文字が現れ、俺は思わず指が伸びる。
ボードに書かれた強欲の文字に触れると『本当にこの職業にしますか?』と表示される。
なかなか親切設計なこのボードに感謝しながら、俺は迷わずYESの文字へと手を伸ばした。
『職業・強欲になりました』
『職業スキル・強欲の瞳を獲得しました』
『職業スキル・強欲の剣を獲得しました』
『職業スキル・強欲の鞄を獲得しました』
『職業スキル・強欲の手を獲得しました』
『職業スキル・素質を獲得しました』
そんな言葉が脳内に響く。小説だと、こういうシーンでは痛みが発生するものだ。しかし俺はそんなことなく終わり、あっけないものだった。
次に俺は、種族選択へ移ることにした。周りを見渡すと、もう既に種族を決め終わっている奴らもいた。
とりあえず俺は、種族選択画面を開く。まぁ大体は決めてあるのだが。
ーーーーーー
人類種
成長速度が早いが、肉体強度が上がりにくい。初期SPは10
森人種
成長速度は遅く、肉体強度も上がりにくい。その分不死とも言われる寿命を持ち、魔法適性が高くなる。初期SPは5
獣人種
成長速度は普通。身体能力が上がりやすい。魔法の一切が使えなくなる。
初期SPは5
悪魔種
成長速度は普通。魔法適性が高くなる。エルフと同じく永遠とも呼べる寿命を持つ。
初期SPは8
吸血種
成長速度は早い。身体能力、魔法適性共に高くなる。寿命という概念はない。
初期SPは2
天使種
成長速度は遅い。身体能力、魔法適性が高くなる。寿命という概念はない。羽の出し入れは自由。
初期SPは7
ーーーーーー
そんな選択肢の中、俺は迷わず天使に手を伸ばす。
この種族選択、ぶっちゃけ意地悪すぎるのだ。
まず、各種族のメリットデメリットが書いてあるように見えるが、実際は吸血種一択のように見えてしまう。
実際クラスメイトのほとんどが吸血種を選択している。
しかし、吸血種には色々と弱点がある。
銀の武器に弱い、陽の光を浴びると弱体化する、にんにく料理が無理になる、聖魔法に弱い、子供が生みにくい、自分以外の血を吸わないと栄養が取れないなどなど、もはやデメリットの集まりのような種族である。
その点天使種は、一見吸血種の劣化版のように見えるがほとんどデメリットがなく、更には特殊能力がある。
デメリットは、夜に羽が出せないだけである。
そのため俺は、天使種にした。
俺が決め終わった頃には、もう全員決め終わっていた。
見た感じ人類種8人、森人種4人、獣人種2人、悪魔種3人、吸血種17人、天使種1人といったところだろうか。
まぁ天使種は最初、羽の出し入れを選択できる。つまり俺も人類種に見えることから、周りが見れば自分以外天使か、もしくは天使がいないように見えるだろう。
まぁそれは俺も同じで見れないから、天使種が人類種であることは見抜けないだろうけど。
そして最後に俺は、ステータス分配に移ることにした。
ーーーーーー
HP 20/20
MP 100/100
STR 17(+2)
INT 17(+2)
VIT 16(+1)
RES 16(+1)
DEX 21(+1)
AGI 30(+0)
ーーーーーー
と、この様に割り当てた。
DEXとAGIは大事だが、天使種はそれらの初期値が比較的に高い。
そのため俺は、他のステータスにSPを割り振った。
俺がステータスを割り振ると、上空にまたもや神が現れた。
「うんうん!全員ステータスまで終わったようだね!じゃあ最後に、2人組を作ってくれたまえ!」
そう言って神は、またピエロのように消えていった。
てか、二人組?そう思いながら周りを見渡すと、既に全員組み終わっていた。
え?え?
そう俺が思っていると、その気持ちを察した様に神が現れ…………
「んじゃ地球人のみんなぁ?二人組で頑張ってね〜〜〜wwwwwwwwwwwwwwww」
そんな神の言葉で、俺たちはまた光に包まれたのだった。
てか、叫んでもいいだろ
「ふざっけんなや!このクソ腹黒神いいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
ーーーーーー
「アハハハはっ!やっぱり君は面白いね、冥玲クン。君には期待しているよ。いずれ、戦うことになるかもしれないけど…………アハッ」
誤字があれば報告くれると嬉しいです!
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『マジック&ガールズ』以下略………の編集版をカクヨムにて投稿中。なろうとはちょっと違うのでぜひ!
まあ1話しか投稿してないけど
なろうのマジック&ガールズは明後日か明々後日更新予定です