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「ケシュタルト王子様‼起きてください‼ケシュタルト王子様‼ 国王様の容態が急変いたしました。もう助からないかもしれない、と担当医が申しております」

 最悪の目覚めだった。ケシュタルトは飛び起きて、住み込みのシンファーがすごい勢いで寝室の扉をたたくのを聞いていたが、やがて扉のほうへ向かいながら、訪ねた。

 扉を開けるとシンファーが顔を真っ青にして立っていた。

シンファーは、今すぐ医務室へ、とケシュタルトに一言告げただけだった。

 彼女の感じから緊急事態だと察知したケシュタルトは、全速力で長い廊下を駆け抜け、医務室へ向かった。

 ケシュタルトが医務室に到着すると、母親のアリスが医師と話し込んでいるところだった。彼女が振り向き、ケシュタルトを見つけると手招きをした。そして少し微笑んだがすぐに暗い表情に戻った。医師は一言よかった、といっただけだった。

ケシュタルトは母親に尋ねた。「父上は大丈夫なんですか?」

アリスの代わりに答えたのはスクライド医師だった。

「最善の治療を施していますが、助かる見込みはかなり薄いでしょう。覚悟が必要かもしれません」

 その言葉を聞いて、ケシュタルトは頭がクラクラしてきた。父上が死ぬ? 父上がいなくなったらこのカルペン王国はどうなってしまうのだろうか?そもそも父上はなぜ致命傷を負ってしまったのだろうか? そのことを質問しようとしていたちょうどその時、ベッドのほうからケシュタルトを呼ぶ声が聞こえ、彼は国王が寝ている場所に近づいた。その国王の声は、今にも消え入りそうなほどか細く、弱々しい声だった。

 「次の国王に話しておくべきことがある」ルフラス国王は、ケシュタルトの手を握りながら苦しそうに言った。彼はケシュタルトに対して、このようなことを言った。

 王の決断を支持できない一部の愚かな人間が、王国に敵対する組織を作り上げてしまったこと。今日、ルフラスを狙って襲撃したのもその一味であるということ。次期国王となるケシュタルトにはまずそこの解体からしてもらわなければならないことを詫びた。

国王が弱々しい声で伝えた。

「まだまだ国の発展のためにやりたいことは山積していた。しかし、このままでは道半ばでお前に譲る事になりそうだ。強制的にとは言わないが、ある程度踏襲してほしいと思っている」

 言い終わった瞬間、ルフラスのケシュタルトを握る手が弱くなり、目を閉じた。それが国王の最後だった。

ケシュタルトには、わけがわからなかった。どこにも痛々しい傷跡などはなかったし、外見はほぼ変化がなかった。しかし、国王は襲撃にあったといっていた。よくわからなかった。

 振り向いてみるとアリスは目に光るものをためていたが、それ以上でもそれ以下でもなく、それだけだった。医務室には10人ほどの人がいたが、誰も何も言わず、ただ亡骸を呆然と見つめていた。それに対して、ケシュタルトにある疑問が沸き上がってきた。

ここにいる人全員が、彼の死についてわかっているのではないかと思った。

国王がなくなったのに、それを何も言わず、ただ黙って見つめているだけなのは、違和感があった。祖父が亡くなった時はもっと皆が嘆き悲しんでいた。その時との差は明らかだった。まるで、今日、この瞬間に亡くなることがわかっていて、その現実を受け入れているようだった。

 ケシュタルトは目にたまった涙を拭うと、スクライド医師のほうへ歩み寄り、尋ねた。

 「スクライドさん。父上は襲撃された、と言ってましたが、そのことは直接死因に結び付いていますか?」

医師は、眉根を釣り上げた。「というと?」

 ケシュタルトは疑問に思っていることをすべて彼に話した。スクライド医師はしばらく考え込んでいたが、意を決したのだろう。言葉を慎重に選びながら話し始めた

 


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