第2章 豊穣の村⑦
「あ!アイツ洞窟に居たビビって全然動けなかった奴!」
ミキヤを指差し、以前出会っていた事を思い出しながらダイキが罵倒混じりに確認する。
指を指された本人はというと、足が震え自分一人では何も出来なかった事を思い出し、苦虫を噛み潰したような表情で剣を構えている。
「また我らの邪魔をするか…!貴様!何者だ!」
洞窟では、ミキヤに何の興味も持っていなかったカイトが素性を問う。
「俺はミキヤ!この世界を救う正義の味方になる男だ!」
ミキヤが絶対に聞き逃させないようにと、自信を持って大きな声で素性を明かす。
それを聞いたカイトは嫌な虫でも見たかのように眉をひそめる。
「正義の味方だと…?」
「プフフッ!聞きましたかカイト先輩!アイツ俺より年上だろうにガキみたいな事吐いてますよ!ハッハハハ!」
ダイキにはミキヤの自己紹介が大ウケしたらしく、腹を抱えて大笑いしている。
ミキヤにとっては不快な笑いではあるが。
「なるほど。そんな大層な肩書きを持ちたいから我らの邪魔をすると?」
「それも無くは無いが、今はただ友達の住む村を守りに来ただけだ!そのためにお前達を倒す!」
「ほう。前回とは違い言うようになったじゃないか?では、それが言葉だけでは無いという事を見せてもらおうか!」
ミキヤの宣戦布告をカイトがバリアを張って返す。
「レイジ、奴のバリアは威力逆転。バリアに当たる攻撃の威力が真逆になるんだ」
「…!そうか!そういう事だったか!」
割れないと思っていたバリアのカラクリが分かり、レイジの顔に希望が見える。
「何を話していたか知らんが、やるぞダイキ!いつまでも笑ってないで構えろ!」
「はは…はいっす!」
ダイキがもう何度目かも分からない闇を溜める構えをとる。
それを見たミキヤは剣をしっかり握り、ダイキを切るべく駆ける。
「まずはその面倒なバリアから!」
バリアの前まで辿り着いたミキヤが剣を振り上げ、バリアに剣が衝突する直前に力を抜き、撫でるようにバリアに当てる。
するとバリアは再び破れ、ガラスが割れるような音を鳴らしながら、破片が飛び散っていく。
「ちぃ!」
――やはりこのミキヤという男!私のバリアの能力を知っているな!
カイトが気付いた時にはもう遅く、ミキヤは手に力を入れ直し、無防備となったダイキを剣で突こうとする。
「よくも今までバリアに守られた安全な場所で突っ立ってやがったな!これでも喰らえ!」
ミキヤがバリアを破った成果に乗じようと、レイジがカイトに向かって水の弾を飛ばす。
無防備の黒騎士を襲う剣と水。
勝った――ミキヤもレイジの脳裏にその言葉がよぎる。
「ダイキ!」
「分かってますよっと!」
だが――剣も水も敵を貫く事は無く、その体をすり抜けていく。
「…は?」
予想していた手応えが感じ取れず、ミキヤはダイキの体をすり抜けながら、剣で突いた勢いのまま前のめりに倒れる。
「残念だったっすねぇ!」
嘲笑混じりにダイキが煽り、後ろに跳び跳ねてミキヤから離れながら闇を放とうとする。
――マズイ!
ミキヤは急いで飛び起きようとするも、ダイキとの距離は近く、避けるのは間に合いそうにない。
「これで正義の味方とやらも終わりっすねぇ!残念でしたぁぁぁぁぁ!」
ダイキの手から闇が放出される。
ある程度鍛えているレイジが両腕でガードしても、吹き飛ばされ暫く動けなくなるような威力の攻撃。
巨大な鉄球が振り子で揺られながら襲いかかって来るかのような威力の攻撃。
それが倒れている男の顔面に直撃しようとしている。
「死なせてたまるか!」
レイジがそう叫び、ミキヤの前に水のバリアを張る。
だが闇の放出による攻撃を前に、この水のバリアは仕事を果たした事が無いのだ。
それが分かっていても…レイジに今出来る事はそれしか無かった。
バシャャャャン!
「え?」
だが今までとは違い、水のバリアと闇の弾は衝突し、バリアは闇に耐えきれず弾ける。
そして闇の弾は直進しミキヤがいる場所に向かうが、幸いにもバリアが弾けた衝撃でミキヤは後方へ飛ばされ、闇の弾は地面を削るだけの結果を残す。
「ちっ。運良く避けやがったっすか。まあでもこれで分かったでしょう?俺達にはアンタ達の攻撃なんか通じないって事が!諦めて大人しく殺されたらどうっすかね!」
ダイキが勝ち誇ったように、両手を腰に当てながら降伏を推薦してくる。
――その通りだ。
威力逆転という不可思議なバリアに加え、それを抜けてもミキヤ達の攻撃は敵の体をすり抜ける。
まさに防御面は完璧とも言える二人だ。
(でも…今の俺のバリアはすり抜けなかった。つまりあのすり抜けにも何かカラクリがある筈だ。)
だがレイジの頭には、諦めるという単語はまだ浮かんでいなかった。




