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入学

ゆっくり更新です!

すみません。

 婚約者問題は先伸ばしになったまま私は入学式を迎えることになりました。

 クラス分けは成績順のため、私はわざと半分問題を間違えておいたのであの二人と同じクラスになることはありません。

 あの二人のことですから成績は良いはずです。

 


 案の定、私のクラスは庶民の多いDクラスでした。

 貴族である白い制服は数人、残りは焦げ茶の制服です。

 その上、侯爵家の人間など一人も居ないクラスのため皆様から怯えられています。

 私的には皆様と何ら変わらない生活をしているので気兼ねなく話しかけてほしいのですが、上手くいきませんね。

 手始めに隣の席の可愛らしいツインテールの焦げ茶の制服の女の子に声をかけてみることにしました。


「ごきげんよう」

「!!!!はい!ごめんなさい!!!」


 物凄く謝られてしまいました。


「あっ、なんだかごめんなさい」


 上手くいきませんね。

 私はゆっくりと頭を下げました。

 すると、そのツインテールの彼女は慌てたように言いました。


「アミュレット様止めてください!悪いのは私ですから!」

「ですが、私が話しかけたりしたばかりに謝らせてしまいました。ですので、ごめんなさい」


 私はもう一度頭を下げました。

 周りがザワザワし始めたのが解ります。

 侯爵家の娘が頭を下げるのはあまり褒められたことではありませんので当たり前ですね。

 でも、私は爵位があるからといって謝れない人間にはなりたくないのです。

 

「アミュレット様」

「私、貴女とお友達になりたいのです。いけませんか?」

「そんな友達だなんて!」


 周りが更にザワザワし始めました。

 

「ダメでしょうか?」

「ダメ……じゃ」

「ダメじゃありませんか?」


 ツインテールの彼女は顔を真っ赤にしながら諦めたように一つ息をついた。

 

「私、イリス」

「グリシーヌですわ」

「グリシーヌ様ね」

「グリシーヌですわ」

「……グリシーヌ様」

「グリシーヌですわ!」


 イリスさんは深いため息をついた。


「呼び捨てなんかしたらアミュレット侯爵令嬢ファンに殺されちゃうわ」

「ファン?……私は貧乏侯爵家の貧乏令嬢ですので、ファンなんてできるわけありませんわ」

「……天然」


 私が首を傾げるとイリスさんは深い深いため息をついた。


「私は、商家の娘で焦げ茶の制服の庶民だけど良いの?」

「はい! 勿論! むしろ私も焦げ茶の制服を着たいですわ」

「本当に天然……侯爵令嬢ってもっと嫌な女なのかと思ってた」


 イリスさんはそう言いながら手を差し出し私はその手を握りました。

 握手という庶民の親愛の証です。

 私も領民の皆様と何度も経験していますので解ります。


「「グリシーヌ!」」


 私が新たな友達と親交を深めている後ろから現れたのは、苛立ちを隠せない様子の大嫌いな幼馴染み達でした。

 私も嫌な顔をしても良いでしょうか?


「ロキシス様にドライアズ様。ごきげんよう」


 私は笑顔を顔に張り付けて挨拶をしました。


「貴女は何故こんなクラスにいるんだ!」

「信じらんないぞお前」


 ロキシス様は額に手を置き、ドライアズ様は額に青筋をたてている。

 

「貴女がこんなに頭の悪い女だったなんて……がっかりしました」

「ロキシス様のご期待に添えず申し訳ございません」


 私は笑顔を絶やすことなく答えます。

 謝るのが最短で解放される手段だと知っているからです。


「僕はAクラスだしドライアズだってBクラスなんだぞ!」


 そうですわね。

 想定していた通りです。

 わざわざ半分問題を間違えたかいがありました。


「グリシーヌ、お前は俺の婚約者になる自覚が足りなさすぎるぞ!」


 なりませんけど?

 ドライアズ様の言葉に思わず笑顔が崩れそうになりましたが、私はかろうじて口元をヒクヒクさせるだけで耐えて見せました。


「来年には同じクラスになれるよう頑張るんですよ」

「そうだ!頑張るんだぞ」


 嵐のように言いたいことだけを言って、二人はさっていきました。

 

「消えて無くなれば良いのに……」


 どっと疲れが出たせいで小さく呟いてしまいましたが、私は悪くありません。

 

読んでくださりありがとうございます。

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