キミを待つその日まで...8
燐は、希来里、奈岐、睦月を連れて家に向かっていた。
「燐、まだ続くのか...?この道」
「....もう少しで着くよ。」
と奈岐が燐に問いかけたあと背中を向けたまま、私は答えた。
「着いたよ....ここが私の家...。」
と言い私は鳥居の前に立つ。
「「「.......。」」」
3人ともその風景を見て唖然として口をポカーンと開けてしまっていた。
「ここ....稲荷さんの”家”?」
「ここ確か....地図には載ってない神社だ...。取り壊されてたはずじゃ..」
と希来里と睦月は、驚きのあまりに言葉があまり出なかった。
確かに燐の家は元々、この神社は廃墟化としていたもので有名であまり知られていない神社でもあった。
でも昔の夕凪の街の前、村だった頃は神社として残っていた。
だけど、それ以来...人間がいなくなってから燐と燐の妖狐たちがここで暮らし続け
た。
もちろん、今の夕凪の街の地図にはここは記載されていない。
住所ももちろんない。
「....ここは、この夕凪の街って名前になる前からある神社で...」
「___”私たちの家”なの...。」
と私は答えるとある言葉に反応して奈岐が問いかける。
「燐....”私たちの家”ってどういうことだ....?燐だけじゃないのか?」
「....うん。今中に入ればわかることだよ...」
と言い私は、家の玄関の前に立ち
「ただいま....」
とドアを開ける。
すると....
「あ、稲荷様。おかえりな....お前ら誰だ...」
とカイが玄関前を通った瞬間、燐の後ろにいた奈岐たちを見て刀を構え始めた。
「ひっ...!?」
「なっ...」
「.....⁉」
と3人はびっくりして後ずさりしてしまった。
「カイ....大丈夫。この人たち私のクラスの子...。」
「__刀を下げなさい...」
と私は説明をした後、カイにはわかる目つきと黒い霧が燐を囲む。
「し...失礼いたしました!稲荷様のクラスメイトだと気づかず申し訳ございません...」
とすぐに謝って刀を閉まった。
「カイ....今からこの子たちとお話があるから....私が呼んだらみんなを連れてきて...」
と元の状態に戻りカイに伝える。
「承知いたしました。」
と言いお辞儀をして下がった。
「みんな....こっち....」
「あ、うん...」
「あ...あぁ」
「おう...」
と私が部屋に案内すると3人も応答し中に入る。
___ガラッ
と燐の部屋の戸を開ける。
「「「.......。」」」
「中...入って、何もないけど....」
と3人を誘導し、部屋に入れ座らせる。
「り...燐...」
「奈岐君....わかってる。みんな知りたいんだよね....?」
「___”私が何者”ってこと....」
と私は、奈岐の言おうとしたことを自分から答えた。
「「「......。」」」
3人は小さく頷いた。
「じゃぁ.....始めようか....」
と私は話を始めようとした。
「今更だけど....改めて自己紹介からするね...」
「私は稲荷燐...”鬼の子”として生まれた。奈岐君たちよりずっとこの街を見てきた...」
「そして、さっき睦月君が言ったように...ここの神社は廃墟としてある。けど、ここは夕凪の街の前からある神社...。」
「ここは確かに地図には載っていない場所...そしてちゃんとした住所でもない。」
「ここは、さっきの子...あの子は今の時代でいえば、使い魔ってことになるのかしら...他にも3匹いるわ。」
「ちょっ....いったんストップ!」
「訳わからなくなってきたよ~....」
と睦月と希来里が混乱し始めた。
「燐...その鬼の子って...本当なのか...?あのおとぎ話である..」
と奈岐は質問をしてきた。
「そうよ....私は鬼の子として生まれた。両親は....村のルールで”殺害”された....」
「私の頃の村は、普通の人間が鬼の子を産んではいけなかった...だから殺された...」
「村の...ルール...」
と燐の言葉を聞いて奈岐は黙りかけてしまった...。
「でも..両親が殺された後は、”ある人”が引き受けて育ててくれた...」
「___けど私を庇って妖怪に殺されてしまった....」
「ある人...?妖怪ってあの時みたいなやつか?海の時の...」
と睦月は問いかけてみる。
「そう....あの海の時、あれも妖怪よ。普段は人間に化けて暮らしてる妖怪たちが多い。」
「さっきのうちの子みたいにね...?」
と戸の方に少し振り向き答える。
「え...あの子も妖怪なの?妖怪って人間には見えないんじゃ...」
と今度は希来里が質問をしてきた。
「うん....普通なら”人間”には”見えない”...。でも、ああやって人間の姿になれば普通
の人間にも見えるようになる。」
「私は昔から妖怪も見てきたからすぐにわかる....。」
と私は質問に答えた。
そう、人間には普通は妖怪などは見えないのだ。
霊感が強い人でも見えるのは幽霊が多いこともある。
けど、燐たちは普通に見えるように人間の姿として生活させたり人間のことなどを知るために、あえてルイやカイたちに人間の姿で過ごしてもらっている。
いい例が、麗奈だ。
海の水着を選ぶときや普段から出かけて歩き回っている。
そして自分が好きなもの買いたいという気持ちで最初、燐に内緒でバイトというものを始めていた。
燐は、それを聞いても反対はしなかった。
”模様”も消えていなければ燐の家でのルールは破っていない。
「あの子たちには、人間の知識を覚えてもらうために人間の姿で買い物やお出かけをさせているの...」
「あとで、みんなに見せてあげる...」
「「「......。」」」
と3人は真剣に聞きながら頷く。
「えっと....あとはこの間の件と関係することだよね...」
「あぁ、稲荷さんの背中の痣。それと...」
と睦月が言いたいことがわかり、私は手の平を目の前で出し「大丈夫...」
と言う。
「じゃぁ...まず背中の痣から話そうか...」
「頼む....」
と睦月は頷き答えた。
「この背中の痣は、”呪いの証”。周りには今まで影響は起こさなかった。
けど、私にとっては影響が出やすい...。」
「この呪いの痣、希来里は気づいてたと思う...。合宿の時より”大きく”なっている...でしょ?」
「う、うん...なんでわかったの...?」
と希来里は思っていたことが読まれてびっくりする。
「海の時では、違和感持ったのがわかっていたから...」
「この呪いの痣は、妖怪たちが私に裏切りの心を持った時に出てきてしまうの...。」
「妖怪たちとは、”契約”みたいなものを私としているの...。だけどその時の契約の印が薄くなって消えれば、私に呪いとしてかかる....」
「その印って....どんなの...?」
と希来里は質問をする。
「うん...後であの子たち呼んだら見せるよ...」
と答える。
「あとは....寝てるときと傷がすぐ治ることだよね...?」
「あ、あぁ...」
と私は奈岐のほうを向き答えると、奈岐は頷く。
「寝てる時の息をしないで寝ているの....あれは”あの人”が亡くなってからな気がする....。」
「あの子たちも私の寝ているところに様子見に来るみたいなんだけど....やっぱり息をしないで眠りについているって毎回言われるの...」
「原因とかわからないのか...?そんないきなり亡くなった人からって...」
と睦月は疑問になって質問してくる。
「.....。原因はわからないの。でも、もし”あの時”が関係しているなら呪いの可能性もある...。」
首を横に振り、質問に答える。
「あとは、傷のことだけど....。あれは、私が”生まれてからの証”。」
「「生まれてからの証?」」
「それ、どういう...」
と3人は首を傾けては不思議そうな顔をする。
「生まれてからの証というのも、簡単に言えば私の鬼の子の特徴...。私は、何十年に1回の”不老不死”の鬼の血を引いている...」
「だから、傷もすぐ治ってしまう...。私は、見た目みんなと同じぐらいだけど....歳ではもっと上だよ」
と答える。
「え....稲荷さん...何..さい...?」
と希来里は恐る恐る聞く。
「.....496歳だよ」
と少し苦笑いをして答える。
「「「えっ⁉496歳!!?」」」
と3人息ぴったりで驚きの声を上げる。
「....う、うるさい...」
と私は耳を抑える。
「「ご、ごめん...」」
「ごめんなさい...」
と3人は謝ってきた。
そして大体話が終わったかなと思い3人に問いかけてみる。
「どう...?話、聞いてて気になったのとかなんかある...?」
「え....俺は、特に...」
「希来里も...」
「....俺は一個だけある...」
と奈岐が答える。
「燐が海の時に使用していたあの、紅い刀....」
と妖刀の話をしてきた。
「あ。妖刀のことね...」
「あぁ...」
「いいよ、一応本物かわからなかっただろうから出すよ...」
と言って私は、小さく呪文を唱える...
「我が主を....護る為の力を___」
______。
と燐の手元に桜が舞ってだんだん形を見せつける。
「.......。」
「はい....これがあの時の刀。妖刀”紅桜”___。」
と両手に持って見せる。
奈岐は口を開けて固まってしまっている。
「これ....」
と奈岐が刀に触れそうになったの気づき私はすぐ刀を下げた。
「だめ....これに触れれば....痛いじゃすまないの。この妖刀は私しか扱えない....」
「妖気が強すぎて人間に刺せば、苦しみを味わう...。妖怪たちもこれで斬られたものは楽には死なない....」
と刀を見つめそう答える。
「そう...なのか...。」
「これで....話についての質問とかない感じかな...?」
「「「うん....」」」
と3人は燐の問いかけに頷いた。
「じゃぁ、みんなを呼ぶね....」
と私は呟く。
「ルイ、カイ、麗奈、羅衣___」
「「「「はい、稲荷様。お呼びになられましたか?」」」」
と燐がその場にいない者の名を呼ぶと妖狐4匹が目の前に現れる。
ルイたちは、話の内容がわかっていたのか人間の姿で現れた。
「みんな、紹介するね。この人たちは私のクラスメイトの、奈岐君、希来里、睦月君だよ」
「き、菊池奈岐です...」
「咲奈希来里です...」
「睦月...守で、す...」
3人はぎこちない自己紹介をした。
「3人とも、この子たちは私の使い魔の妖狐たち」
「私の名は、ルイです。カイの姉でもあります。よろしくお願いいたします」
「先ほどはご無礼な真似をしてしまい、誠に申し訳ありません...。申し遅れました、
私は、カイと申します。先ほど自己紹介したルイの弟です。よろしくお願いします。」
「稲荷様のお友達さんですね。私は、麗奈と申します。いつも稲荷様がお世話になっております。よろしくお願いします。」
「俺は、羅衣だ。稲荷様のこといつもありがとう。よろしくお願いします。」
と4人も自己紹介をした。
「れ....礼儀正しい人たちだ...ぁ」
と希来里は、つい言葉が滑り口を抑えた。
「いえ、我々もそこまでじゃないですよ。」
とルイは少し笑いながら笑顔で答えてくれた。
「みんな、契約の印見たかったよね?」
「ルイ、カイ、麗奈、羅衣。手の甲も見せて...」
と言い「「「「はい、稲荷様」」」」
と4人は手の甲を見せた。
すると、手の甲には奇妙な形をした模様が4人とも同じものが刻まれていた。
「これが....」
「契約の....」
「印....」
と奈岐たちもそれを見つめては小さく呟く。
「この模様が消えてしまったら、私に呪いとして降りかかる....。そして、裏切りの妖怪たちは私を殺しに来る。だから戦わなきゃいけないの....」
と説明を簡単に伝える。
「「「......。」」」
「我々は、”あの方”と約束して稲荷様を裏切らないそう誓ったのです。」
「私たちは、稲荷様を守るためにずっと昔からお傍にいさせてもらっています」
とルイとカイが答える。
「ねぇ、稲荷さん....さっきから気になってたことなんだけど...」
「”あの方”って誰の事...?」
と希来里はずっと引っかかっている人物を問う。
「.....あの方は...」
と私は言いにくそうになる...。
「あ、無理に言わなくていいよ...」
と焦りながら希来里は答える。
「私のことを庇って亡くなった人のことだよ.....私の大切だった人....」
「ミレ様って言うんだ....昔からそう呼んでたの」
と私は答える。
「「「......。」」」
3人は気まずい顔になる。
「気にしないで....話しておいたほうがいいと思っただけだから....」
「あ、今日はもう遅いから....街まで送るよ...」
と私は外を見てそう答える。
「ルイ、ちょっと送ってくるから留守番お願いね...」
と言い、私は玄関前に奈岐たちと向かった。
「わかりました。夜は危ないので、気を付けてお帰りくださいね」
と言い「行ってきます...」
「行ってらしゃいませ」
と見送ってくれた。
ー夕凪公園にてー
夕凪の街に近い、夕凪公園まで3人を送った。
「今日は、ありがとうな...燐。」
「稲荷さん、話してくれてありがとう」
「稲荷さん、明日また学校で会える...?」
と3人が私を見て言う。
「うん....明日からは私も学校に行くよ...」
「また明日....学校でね...」
と少し表情を作り笑顔を作る。
「うん...!!」
「じゃぁ、稲荷さん。また明日」
「燐、またな」
と3人もその場で解散した。
私は、3人が見えなくなるまで手を振った。
(信じて.....いいんだよね.....)
という気持ちを持ちながら家に帰った。
そして、いつも通りにみんなとご飯を食べて寝たのであった....。