キミを待つその日まで...5
ー合宿最終日ー
なんだかんだ合宿が最終日を迎えた。
このあとは、全員バスで学校に戻る予定になっている。
「あーあ....合宿終わっちゃったー...」
と希来里が残念そうに呟く。
「あっという間だったなー、奈岐はどうだった?」
「んー?まぁ、短かったな。」
と3人は歩きながら話す。
「.......。」
私は、いつも通り無口の無表情でいた。
すると....
「りーん!」
と奈岐が私の前に出てきた。
私は、「.....なに?」と無表情のまま見つめると...
「ほら!えーがーお!」
とニヒッと笑顔を見せてきた奈岐。
それに続き、「稲荷さん!にこっ♪」「笑顔、笑顔」と希来里と睦月も私の前に出てきて笑顔を見せてきた。
「.......。」と私は、少しあきれた感じも出しながらも3人の期待を裏切るのも悪いかなと思っていた。
「なんだなんだー?」
「稲荷さんの笑顔?え、見たい!」
とバスの前で待っていたクラス全員が私たちのグループの話に反応してきた。
(今回だけやればいいかな...)と私は思いながらみんなの前で...
「____。」と自然に笑顔を見せるとクラス全員の目線が固まった。
(.....み、見られてる。おかしいかな...)と心で焦っていると
「え...稲荷さんの笑顔良くね..?」
「笑うとあんなにかわいいんじゃん...」
とざわざわし始めた。
すると、先生が声をかけ始めた。
「おーい、お前らー。バスに乗れー」
「グループでまとまるように座ってくれー」
と先生の指示に従って生徒がバスに乗り始める。
「稲荷さん、いこっ♪」
「奈岐行くぞー」
「おーう、燐行くよ」
と3人に声をかけられバスに乗る。
席は来る時と同じ席に座り奈岐と隣になった。
「よっと...燐、大丈夫?」
「....うん。大丈夫」
とお互い席に座り先生が声をかけた。
「じゃぁ、出発するぞー」
と先生の合図でバスが出発した。
「「.......。」」
二人は、また無言の空気になっていた。
私は、外の景色を眺めていた。
すると、窓に反射して奈岐の姿が映った。
ウトウトと眠りかけているのが見えて私は、振り向いた瞬間....
コツン...
「____。」
「スー___。」
と私の肩に寄りかかり眠ってしまった。
「.......。」
「スー___。」
と私は奈岐を見つめてこう思った。
(息して寝てる...これが本当の呼吸なんだな...)
(私と....全然違うや...)と私はみんなと違うことに胸が痛くなった。
そのまま私は、着くまで起こさず外を眺めていた。
ー学校校門前ー
数時間後、学校の校門前に到着した。
「お前らー着いたぞ。ゆっくり降りろー」
「最後にお知らせを言ってから解散だー」
と先生が声をかけ終わたと順番にみんな降りて行った。
「....奈岐君、着いたよ...」
と私は奈岐をユサユサと揺らした。
「ん...寝ちゃってたか。」
と言いながら、私たちのグループも降りた。
「おーし、みんないるなー?」
「明日は、いつも通りの授業の予定だ。持ち物は特に必要なものはない。」
「教科書を忘れるなよー。あと今度の行事の報告も明日のHRでやる」
「では、解散!」
「「さようならー」」
と先生の説明が終わった後、クラス全員下校の挨拶をした。
「稲荷さん、また明日ね♪」
「奈岐もまた明日な」
「おう、またなー」
「おつかれさま...」
と希来里、睦月、奈岐、燐はお互い別れて帰った。
ー燐の家ー
「ただいま....」と私は、家に戻り玄関に入った。
「「「「稲荷様ー!!!」」」」
ドサッ!
とルイ、カイ、羅衣、麗奈4人が飛びついてきた勢いで私は後ろに倒れた。
「.....苦し..」
とゆっくり起き上がると4人は涙目だった。
「なんでみんな泣いてるの...」
と呆れたように4人の頭を撫でながら問う。
「「「「だってぇぇ...っ」」」」
と4人は、私の事一番心配していたようだ。
「ありがと....大丈夫だよ」
と少し微笑んだ。
「「「「____。」」」」
と4人はびっくりしたような顔で問う。
「「「「稲荷様...表情が...」」」」
「うん....少しならね、いいかなって...」
と答えるとすごくうれしそうな顔で「「「「笑顔大事です!!」」」」と
4人ははしゃいだ。
(まぁ..."本当の感情"では表情作れないけどね....)
本当の感情では作れない。
顔の表情は、感情で現れる。
嬉しい、悲しい、怒りなどの感情がまだ燐には戻っていない...。
だから、イメージを沸かせ表情を作れるようにしていただけだった...。
そう思いながら、みんなでご飯を食べて夜を過ごした...。
夜中___。
「カイ....やっぱり...」
「うん...」
「「していないです....」」
と2人は燐の寝室を覗き燐の様子を見に来ていた。
やはり、燐は息をしていなかった。
そのまま、ルイとカイは静かに自室に戻り2人も寝た。
ー翌朝ー
私はいつも通りの時間に起き、朝食をとった後支度をして学校に向かった。
「.....今日も風気持ちい...」
と風で涼みながら学校に到着。
(今日は、奈岐君に声かけられなかったね....)
と教室に入り、席に着くと奈岐はまだ学校に来ていなかった。
「稲荷さーん♪おはよー♪」
「やっほ、稲荷さん」
と希来里と睦月が私の前に来た。
「希来里、睦月君おはよ....」
と挨拶すると...
キーンコーンカーンコーン
と予鈴が鳴った。
「あ、またあとでね♪」
「またねー」
と言って2人は席に戻った。
奈岐は、先生が来たあとにやっと来た。
「遅れました!!」
「バカたれー、遅刻だぞー」
「すみません」
と奈岐は、苦笑いしながら席に着いた。
そして、HRが始まり先生が話を始めた。
「皆さんおはようございます。今度の行事の報告をします」
「えー、合宿終わって早々だが4週間後の土曜日。皆さんで海に行きます」
「今回は、楽しむための行事なので怪我のないようにしてください。」
「で、今回もグループ作っていただきまーす。好きな人数で大丈夫ですが仲間外れはしないようにー」
「また、前みたいに紙に名前書いて提出してくださいねー。以上。」
と説明を終えた先生が教室を出て行った。
(今度は海ですか....)
と私はちょっと嫌だなと思いながら席にまだ座っていた。
でも、希来里たちが私の前に来た。
「稲荷さん!一緒になろー♪」
「稲荷さんと一緒がいいわ、なー奈岐?」
「あぁ、燐と俺は一緒がいいな」
と3人は紙をもって私の机で書き始めた。
「......よろしく」
と私は、呟きながら名前を書き提出した。
そして授業が終わり放課後になった。
私は、気分転換にと思い屋上に向かった。
「....っ、ぁ....きれい...」
と私は、最初目をつぶった後ゆっくり目を開けたらそこには夕焼けがきれいな空と街が見えた。
「......」
と私は少し思ったことをやろうと思いゆっくりと目を閉じ...
そして...
「___。」
その頃、教室には奈岐がいた。
「あー!課題終わらねー!」
と先生に渡された課題をやっていた。
「もう無理、疲れたー...」
と机に課題を放り投げた瞬間、「ん....?」
_____♪
と誰かの声が外からすると思い「この声屋上か...?」
と呟きながら屋上に向かった。
(誰だ...?)
と奈岐はゆっくり屋上のドアを開けた。
「__♪」
「キミがいない世界は、とても悲しい色でいつもキミを探してる__」
「声が届くと信じて歌い続けようキミがくれた歌を__」
と燐が歌を歌っていた。
「___。」
奈岐は、燐のその歌声と姿を見てびっくりしていた。
「.....だれ...」
と歌をやめ私は、奈岐の方向に振り向く。
「あ、燐...ごめん盗み聞きして...」
と奈岐は、焦りながら謝る。
「.......別にいいよ」
「その......綺麗だなって思って...」
と頭をに手を当てながら顔をそらす奈岐。
「そう....。」
と言い私は帰ろうと思い出口に向かって歩くと...
ガシッ!
「まって!」
といきなり後ろから手を掴まれた。
「.....何?」
と無表情で問う。
「いや....えっと...なんでもない!ごめん...」
と言い手を放す。
「そう....奈岐君、またね」
と言い私は下校した。
ー燐の家ー
「ただいま...」
「おかえりなさい、稲荷様」
とルイが出迎えてくれた。
「ルイ、4週間後の土曜日....学校の行事で海に行くことになったから...」
と伝えると
「え!?だ、大丈夫なんですか...??」と心配なのか不安気に聞いてくるルイ。
たぶん、海となると背中のことを心配しているのだろうと思った。
背中の呪いの痣。
海は、水着になるが背中が隠れる水着か上着を着ていれば問題ないと思っていた。
「大丈夫...今度、麗奈と水着選んでもらうから...」
と言うとルイは「そ、そうですか...ならいいのですが...」
と答えた。
そして麗奈が居たので話をした後「了解でーす!稲荷様のために麗奈一肌脱ぎますよ!ファッションならお任せください♪」と自慢げの笑顔で帰ってきたので、来週買いに行くことにした。