キミを待つその日まで...4
ー旅館にてー
「さて、みんな部屋に入ろ」
「ですなー」
「だねー♪これからが楽しみ!」
「......。」
私たちは部屋の前にいた。
(ここから本番....なんとか...)
と燐は無言のまま考えていた。
ガラ__
「ふいー....戻り戻りー」
「はぁ...疲れたー」
「奈岐君、何言ってるの!これからだよ!夜は!」
「ねっ!稲荷さん♪」
と希来里は、元気いっぱいで満面の笑みで私に話を回してきた。
「.....。そうだね」
と私はいつも通りの無表情で答える。
「はいはい、希来里ちゃんテンション高いねー」
と少し笑いながら言う睦月。
「だなー、女子ってみんなこうなのか?」
と奈岐も笑いながら答える。
「そうだよ!女子はテンション高いの!男子だっていやらしいこと考えてるんじゃないのー?」
とニヤニヤしながら希来里は二人にいたずら気に言うと
「えーそんなことないよな、奈岐ー」
「うん、そんなことばっかじゃないってー」
「「なー」」
と睦月と奈岐は、お互いに顔を見て息ぴったりに言う。
「まぁ、とりあえず布団しくぞー」
「おーう」
「はーい♪」
「うん...」
とみんなで布団を敷き始めた。
ばふっ!
「わーい♪ふかふか~♪」
と希来里は、布団を敷いた上に飛びついた。
「おーい、敷いたばっかりに飛びつくなっ」
ペシ
と睦月は希来里の頭に軽く手をたたいた。
「いったーい!何するのよ、睦月君!」
とぷんぷんと怒る希来里。
「......。」
「まぁまぁ、二人ともとりあえず話しよーぜ」
と奈岐は、布団につき私も布団についた。
「んじゃー....何話しますかい?」
と睦月が話題を振ってきた。
「んー....睦月なんかねぇの?」
「うーん、何がいいかなぁ...」
「んー、あえて言うなら稲荷さんのことで」
と私の話題を振ってきた。
「あ!いいね♪」
「お、俺も賛成」
と希来里も奈岐も賛成し始めた。
「.....。」
私はいつものように無表情で無言でじっとしていた。
「じゃぁ、決定。最初に質問的なことしたい人、挙手」
と睦月が言うと
「あ!はいはーい♪」
と希来里が元気良く手を挙げる。
「はい、希来里ちゃんから次俺ー」
と睦月が話を回す。
「.....なに?」
と私は無表情のまま聞く。
「えっとねぇ....稲荷さんって好きな人、いないの?」
と目を輝かせて質問してきた。
(まぶし...)
と思いながらも質問に答える。
「.....いない」
と私は、無表情に答えると
「じゃぁ、気になってる人は??」
と聞いてくる希来里。
(一応気になってる人はいるけど....)
と考えながらも「.....いない」と答える。
「えーつまんないー」
とつまらなそうな顔で言うと
「んじゃ、次俺ねー」
と今度は睦月が質問の番になった。
「.....。」
と私はまた無表情のまま耳を傾ける。
「稲荷さんってさ、いつも表情変わらないよね?なんで?」
と一番答えにくい質問が回ってきた。
「ちょっ...睦月...」
と奈岐は、止めようとする。
けど、私は何となくで答えればいいと思った。
(あの時のことがきっかえなのは言えない...)
「....よくわからない、表所の作り方わからないから...」
と答えた。
実際、”あの日”が原因で表情を作ることができなくなった...。
「ふーん...じゃぁさ、笑顔の練習してみよーよ。みんなで」
と睦月が提案し始めた。
「あ!それいいね♪稲荷さん一緒に練習しよっ♪」
「え....」
と心の中ではびっくりしてしまった。
「ほらほらーにこっ♪」
と希来里は、満面の笑顔で指を口に持ってきてにっかり笑う。
「微笑むだけでも表情っていうんだよ。稲荷さん」
と睦月は柔らかい表情で微笑んだ。
「りーん、ほらやてみ」
と奈岐もにひっと笑顔を見せた。
「.......。」
と私は3人を見て真似ようとする。
(カイやルイ達も笑ってるような笑顔....笑顔...)
と考えながらルイ達の笑顔の表情を思い出す。
「.......。」
「「「_____」」」
と3人は、私の顔を見て驚いた顔をした。
「「稲荷さん...」」
「燐...」
「....?」
と私はその作った表情のまま首をかしげると...
「「「できてるじゃん!!」」」
「稲荷さん表情できてる!可愛いよ!」
と希来里は、私の手を握ってキャーキャー言い始める。
「睦月...」
「あぁ...奈岐...」
「稲荷さんの笑顔可愛いぃぃ///」
「燐の笑顔可愛いぃぃぃ///」
と二人息ぴったりに睦月と奈岐は、お互い背を向け小さく叫ぶ。
「え....っと...」
と私は表情が疲れてきた...。
「たまには表情作ってみなよ」
「私からもやってほしい!」
「これクラスのみんな見たらびっくりするな...」
と3人は私に表情を普段から豊かに作ってほしいとお願いされてしまった...。
「たまに....なら...」
と私は、答えた。
ガラ___
「おーい、消灯時間だからお前らも寝ろよー」
と先生が部屋に入って消灯声掛けしに来た。
「「「はーい」」」
と3人は返事をした。
「さーて、俺らも寝るかー」
と睦月が言うと
「うん、寝よー」
「そうだな」
「....うん」
とみんなで返事した。
「よっと....」
「ふふ...みんなで寝るの初めてでうれしい♪」
と布団に入って希来里は、嬉しそうに答える。
「んじゃ、電気消すぞー」
「「はーい」」
と答える希来里と奈岐。
ここからが本当に本番...。
(どうしよう...なんとか誤魔化す...)
カチッ__
「おやすみー」
「「おやすみー」」
「.....。」
私はとりあえず横になり、背中を向け目を閉じる。
「......。」
_____。
私はそのまま眠りにつき始める。
「ん...あれ..?」
と奈岐が異変に気付く。
「おい....睦月...」
と小さな声で奈岐が睦月を起こす。
「うーん....奈岐なんだ...」
と眠たそうに睦月が起き上がる。
「燐の寝息、俺ら以外聞こえないの気のせい...?」
と小さな声でつぶやく。
「え...?稲荷さんの寝息静かなだけじゃない?」
と答える睦月。
「そ、そうか...。ならいいんだけど...」
「んじゃ、寝ようぜ...ふぁぁ...おやすみ」
「ごめんな...おやすみ..」
と睦月と奈岐は、何事もなかったかのように眠りにつく。
みんなが眠りについた夜中のことだった....。
___リーン....リーン...
「____。」
と鈴の音色が聞こえ燐はゆっくり目を開ける。
____リーン....リーン...
「.....。」
私は、ゆっくりみんなが起きないように起き上がる。
そこには、青く光る蝶が燐の目の前を通る。
「....また...」
青い蝶....燐の前に姿を現すその蝶は、燐にしか見えない。
その蝶が現れるとき....いつもちゃんとした意味があった...。
”あの日”から...”裏切り者”のかかわりの妖怪たちが姿を現す時がほとんどだった...。
羅衣と麗奈が話していたあの事件....
人の姿となって燐を殺しにきた、妖怪....。
その時に目撃されたのも、妖怪としてではなく....
人間の姿として、遺体として発見された。
燐は、紅の妖刀...。
燐にしか持てない刀....それで切られたものは苦しみを味わい、死ぬといわれている...。
「......。」
燐はゆっくりその蝶を追う...。
蝶は、ベランダに向かって飛んでいる。
ガラ___
私はゆっくりとベランダのドアを開けた...。
「そっちね....」
カタッ___
私は、ベランダの手すりに乗っかり外へ出る...。
タッタ___
燐が蝶を追って走る...。
「あなた....あの人の...」
と私は、その人物に問いかける。
「キミが....あの鬼の子ですかい?」
と振り向く男...。
「あなたも....私の裏切者...?」
シャッ____
と燐は、紅の刀を出す...。
そして...
「.....」
燐を囲む黒い霧...そして紅く光る瞳...。
「おぉ...怖いねぇ?稲荷の旦那よぉ?」
と高笑いをする男。
ダっ___!!
「っ!?」
ガキーン___!!
「へぇ....?やるねぇ?」
その男は、ナイフを向けてきた...。
「あなた...ただで生きて帰れないわよ...」
シャッ__
私は、ナイフを刀で振り払った..。
「汝___我の血の名訳に従い...我に力を__!!」
シャッ__!!
「なにっ!?」
「__」
グサッ__
「ぐぁっ!」
私は、刀を男に突き刺しした。
男は苦しむ....
そう...この刀は妖怪にとって...一番の苦しみを味わう刀。
そう簡単には楽にはなれない....。
「たすけ....」
「さよなら___」
と私はそのままの呟いた瞬間....
ぐさっ____
そのまま刀を刺し、男は意識をなくした。
「はぁ...まさか合宿のところまで来るなんてね...」
「....血、付いちゃったな..」
旅館の浴衣に返り血がついてしまったのに気づく燐..。
「___清き涙の清潔なれ...」
スー____
と燐が呪文を言うと浴衣についた血がきれいに消えていく。
「早く戻らないと....日が明ける...」
と呟き、部屋に戻ろうと空間を開く。
「.....。」
そして空間を閉じ、部屋に戻ってきた私は布団に入り
眠りについた...。
ー翌日の朝ー
「ん....んー!」
「ふぁぁぁ...」
「もぅ朝ぁ?」
と3人は起き上がる。
希来里は、まだ眠たそうに目をこすり起きる。
睦月と奈岐は、背伸びをするように体を伸ばす..。
「_____。」
燐は、昨日の夜があったためまだ眠りについたまま。
「あれ、稲荷さんまだ寝てる」
「りーん、起きろー」
と睦月と奈岐は燐に声をかける。
「ん....ぅ..」
と燐は寝返りを打つ。
「りーんってばー、起きろー」
と奈岐が揺らす。
「...ぅ、んぅ....」
と寝ぼけたまま起き上がる燐。
まだ眠たそうにウトウトする。
「「っ///!?」」
と睦月と奈岐は顔を赤くして口を抑えた。
なぜ顔を赤くしたかというと....
燐の浴衣が崩れているために胸元などが見えてしまっていたからだ。
「ちょっ!?男子エッチー!!」
と希来里は燐を隠す。
「ほら!稲荷さん!あっちで準備してこよ!」
と希来里は、まだ眠たそうな燐を引っ張り別々に着替え始めた。
「まだ....ねむい...」
とウトウトしながらも着替えさせられる燐。
「あーもう!髪は私がやるから服に集中して!」
と何かと面倒見がよい希来里だった。
そして着替えが終わった男子組と女子組は、また集まった。
「「お?」」
「稲荷さんかわーいー」
「燐、髪型似合ってるぞ」
と睦月と奈岐は、私を見てGoodポーズをとった。
「ふふん♪髪型は私がアレンジしましたー!」
「なんか...髪いじられた...」
と私は無表情に髪を触りながら言う。
希来里が燐の髪型をアレンジしたのは、お嬢様なイメージを出させる
ふんわりとした髪型だった。
横髪の束を三つ編みを後ろに持ってきた髪型だ。
「さ、合宿引き続き頑張るぞー」
「うん!」
「おう」
「...うん」
と残り僅かの時間を4人で過ごしたのであった...。
(やっぱり...少し奈岐君が気になる...)
と私は思ったまま合宿を過ごした。