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第1話 火がついた少年

第1話です。


5/30 加筆しました。

「やったぁ! 成功だ!!」


学院の門をくぐり俺が最初に目にしたのは……なぜか腕が燃えてる少年だった。


赤っぽい髪。身長は俺と同じぐらい。そして俺と同じ指定された制服を着ている。胸にある校章の色から見るに俺と同じ一年生のようだ。

俺は未来のクラスメイトを観察した。


どう見ても、頭がおかしいとしか思えない。

そいつは何が嬉しいのか笑っているのだ。自分の燃えてる腕を見て。


そして時折なぜか誇らしげに燃えた腕を掲げて、その腕を愛おしそうに見つめている。


普通燃えてるものがあったら慌てて火を消そうとするだろう。冷静に対処することはあっても、ああやって燃えてることを喜びはしない。


観察の結果、俺は最終的に変人そいつを見なかったことにすることに決めた。いくら気になるからってああいう輩に関わるのは危険だ。トラブルの元である。


ああいうのが、この学校の少数派だと思いたい。


そうと決めたら実行あるのみ。俺は先ほど確認した入学式の会場に向かおうとした。


「あっちー!!」


声のした方を見るとそこには、さっきの笑顔と打って変わって苦悶の表情を顔に浮かべた少年が、腕の火を消そうと振り始めているところだった。


「や、やばい! 誰か助けて!」


ああ、もうしょうがない。


俺は歩く方向を変え、背負った自分のバックから水の入った水筒を取り出した。

そして、やっと常人のリアクションを始めた少年の元に走っていき、腕に水筒の水をかけてやった。


「ふぅ、助かった。ごめん、ありがとう。」


火がシューっと音を立てて消えると少年は

俺にお礼を言ってきた。


「まあ、無事でよかったよ。ところで、何やってたのさ?」


「ああ、さっきの見た!?」


笑顔で答える少年。何故、嬉しそうなんだ君は。


「ああ。腕が燃えてたのは見たよ。」


「あれ凄いでしょう! さっき思いついた僕のオリジナルの魔法なんだ! 名付けて『フレイムハンド』。腕に火を纏わらせるんじゃなくて、腕自体を炎に変化させる魔法なんだ!」


「へぇ〜、凄いね。」


ち、ちょっと待てよ……

なんとなく適当に相槌をうってしまったが、よくよく考えたらこいつ凄いことやってないか?


「でしょ、でしょ! でも最初は成功したんだけど、手が元に戻った時に炎が消えなくてさ。君が水をかけてくれなかったら危なかったよ。本当にありがとう。」


そういって少年は笑顔で危なかった、危なかったと呟き、なにが面白いのか笑い出した。


「それは、どういたしまして。」


何故、こいつはこんなに嬉しそうなんだ?

自分の手が燃えてたんだぞ?

まあ、どうやら彼はテンションの高い子のようだ。天然くんでもあるっぽいな。


「あっ、じゃあ俺はここで……」


関わると疲れそうなので、立ち去ろうとしたが…


「あっそうだ! 君って今日入学する子?」


「うん、そうだけど。」


「僕も今日からなんだ! 僕、レノ。レノ・ブレイズ。よろしくね!」


「あ、うん。俺はハイン。よろしく。」


「一緒に入学式の会場まで行かない?」


「…別にいいよ。」


「やった! じゃあ、行こうか」


そう言って、レノに腕を引っ張られて入学式の会場に向かう。


まあ、しょうがない。面倒くさいかもしれないが。これも何かの縁だと思い諦めよう。


それにしても、ブレイズ。どこかで聞いたことがあるような名前だな。まあ、そのうちわかるだろう。



☆☆☆☆☆☆☆☆


入学式の会場は大きかった。そして、会場にいる人間の数も多かった。

同学年で200程度はいるのではないだろうか?


「席は自由らしいよ。」


「ふーん。じゃあ、あそこにしよう。」


ちょうど近くに二つ席が空いていたでそこにレノと二人で座る。


「静粛に!」


しばらく、待っていると前に凄いオーラを身に纏った初老の男性が現れた。

その瞬間今までガヤガヤしていた会場がピタッと時が止まったかのように静かになった。


なんだあの人。普通外に出てきたら意識してないと霧散するはずの魔力が蛇みたいにあの人周りをグネグネうねりながら体を出たり入ったりしてる。なんかスゲぇ!

学院長なのだろう。きっと見た目からもそうに違いない。


「まず、はじめに新入生の諸君。入学おめでとう。」


渋くていい声だな。魔力といい、威厳といい、規格外の爺さんだな。


「儂は見ての通りこの学院の学院長じゃ!

立派な髭もあるし、なんか凄そうなローブも着ている。この持ってる杖も最高級品じゃ!なかなかかっこいいじゃろ! 先週買ったんじゃ。ちなみにこのローブは先代の王から頂いたものだ。凄いじゃろう! どうじゃ!ここに儂の名前の刺繍も入ってるし、先代国王の直筆のサイン入りじゃぞ!袖のところもキンキラだし。どうだ威厳たっぷりじゃろ!! (ドヤドヤッ!)」


「「「「「「「「……」」」」」」」」



……学院長。その発言があなたの威厳を吹き飛ばしています。というか、いきなり服の自慢かよ。


「普段はこんなのは堅っ苦しくて着ないんじゃが、どうしても着ろって周りが煩くてのう。仕方なくきたんじゃわい。」


普段着ないのかよっ!


「学院長っ!」


すると学院長の近くにいた、いかにも苦労人です!みたいな男性が怒鳴った。

なんかスゲぇ形相だな。おでこに血管浮かび上がるって相当だぞ。


あの人絶対、普段学院長に振り回されてるな。


「ひぇえ、怖い怖い。そんなに怒らんでもいいじゃろ……ごほんっ。

さて、諸君。どうかね緊張はほぐれただろうか。改めて儂がこの国立魔道学院、学院長のガンドロノフだ。」


……えっ?本当に緊張ほぐすために言ったのか? なんだあの人、切り替え早くね?いきなり元の渋い声に戻ってる。

まさか、本当にアドリブだったのか?? 雰囲気からしてどうも……


………いや、あの苦労人が頭抱えてるから嘘だな


「まず初めに、この国立魔道学院のことについて改めて紹介しておこうと思う。

知っての通りこの学院はアルメシア王国内最高峰の教育機関であり、過去から現在に至るまで数々の優秀な人材を輩出している場所じゃ。様々な分野のプロがこの学院の卒業生であり、きっと君らの親もこの学院の生徒であった方が大半であろう。

また普通の教育機関である反面、この学院は超弩級魔窟ダンジョン破滅のコルティアの管理、研究、調査を行う機関でもあり、また魔窟関係の専門家を輩出するための育成機関でもある。

まあそれが多くの生徒に人気のある所謂、魔窟冒険者ダンジョンハンター科であり、ここに入りたくてこの学院に入った者も少なくないと思う。

わかっていると思うが魔窟ダンジョンとはこの世界に唐突に出現した災害じゃ。

魔窟では貴重な鉱石や資源、生物の素材などが手に入ることのできる宝の山である反面、怪物が跋扈ばっこしている。そして時折我々の生活圏内に進入し暴れることがある。

それを食い止める役割もこの学園はしているのじゃ。

現在人々の生活に魔窟で取れる財が深く関わっている。我々国立魔道学院では魔窟の調査を行う専門家の国家試験も受けられるので魔窟冒険者ダンジョンハンターになりたいものには絶好の場所だろう。まあ、上級生になったら頑張るのじゃ。」


魔窟冒険者は、国家公務員でありかつ上位のものになると超金持ちになれる一攫千金のチャンスに溢れた夢の職業だ。俺もそれになりたいと思っている。


そのあとはなんか色々校長が真面目な話を続けた。うん、面白くない。


「……では諸君。君達にはそれぞれ思い描く未来の自分というものがあるだろう。儂はこの国立魔道学院が君達が自らの望む将来の姿に近づくための橋渡しにないなることを願っている。以上!」


パチパチパチパチ!!


拍手が会場全体を包む。


なんかみんな感動したようなさっぱりした顔してるけど、忘れてないか? あの人が最初にやっていたことを。ただ服を自慢しただけだぞ。そっから始まったんだぞ。


「(ああ、めんどくさかったの〜。なんで入学式なんていう面倒くさい行事があるのかの。老人をいたわれっつぅの。はあ。部屋に戻ったらポテチでも食うかの。)」


帰りぎわ目の前を通った学院長がボソッとそんなことを言っていた。


「……」


ねぇ。今聞いた?学院長、真っ向から入学式否定してるんですけど。


辺りを見渡す。しかし、みんな先程と変わらず拍手をし続けている。学院長もあんなこと言ってたくせに入ってきた時と同じような雰囲気を出して歩いている。


だ、誰も気づいていないだと。みんな拍手してて俺以外気づいてない。


すると、学院長が通ったあとに何かが書かれた紙が落ちていた。


ん? 今学院長、今なにかポケットから紙を落とさなかったか?


落ちている紙になんて書いてあるのか頑張って読んでみる。


えっと、なになに? 『入学式演説入門のコピーと演説の台本です。学院長、ちゃんとこれ言ってくださいね』……っておい! さっきの演説、本のコピーだったのかよ!?


というか、それ落ちていいのか!? 生徒にバレたらマズイやつじゃ。


「あっ、学院長!なにか落としましたよ!」


案の定、学院長が落としたカンペを親切な生徒が拾った。すると、あの苦労人の人がものすごい勢いで走ってカンペを奪って走っていった。

やっぱり、見られたらいけないやつなのね。

学園長がコピペはいけないよ、うん。


まあでも、話してた内容は要約すると学業に励めとかいう感じだったよな。俺としてはあんまり面白くはなかった。


ふと横をみると、レノの反応は俺とは違うようだ。なんか目を輝かせて拍手してる。


なんか、こいつとやっぱり合わないんじゃないだろうか?



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