指輪〜forever〜
投稿を前にしましたが、誤字脱字が多く訂正させていただきました。
「これ、つけたいなー。」
真里は、ワガママを言わない子だ。
その真里が珍しく、俺にねだるような感じで宝石屋のショーウィンドの前で言った。
「欲しいのかよ?」
彼女は首を縦にも横にもふらずにニコッと俺の顔を見た。
やっぱり欲しいんじゃないか・・
「覚えておくから、今日は勘弁してよー」
サラッと俺は真里に言った。
「別に買って欲しくて言ったんじゃないよーだ。」
舌を出してアッカンベーの顔をして俺に見せた。
いつもの強がりだ。
そのデートから数ヶ月たって、俺は仕事に追われ、お互いになかなか会えない日々を過ごしていた。
(今、何してますか?)
真里から久しぶりにメールが来た。久しぶりといっても、毎日欠かさず電話はしていたが、今日はメールが来たのだ。
(今、仕事が終わったとこだよ。)
そう彼女にメールをしたら、すぐに電話がなった。
「急に電話してゴメンね。。あの、話があるんだけど。」
いつもと違う声とテンションで真里は言った。
「うん。。。」
真理は、いつもにはない雰囲気を出していた。
「どうしたんだよ?」
思わず俺は、問い掛けた。
「あのさ・・・別れない?私たち・・」
俺は絶句した。
「・・・驚いたよね。。。急にゴメンね。」
「・・・わかった。」
俺は、ショックのあまり一言、返事をして電話を切った。
涙が込み上げてきて、真里との思い出が頭をよぎる、残業をして会社を出てからも、もぬけの殻のような心で帰路にたっていた。
なにが彼女を別れという道を選ばせたのか。理由も聞かなかったから、わかる訳もない。ただ、別れを彼女から切り出されたことが何よりもショックだった。
〔ガラガラッ!!〕
シャッターの閉まる音がしたので顔を上げた。
前に真里が見ていた宝石屋が閉店準備をしている最中だった。
閉まっていくシャッターの向こうに真里の欲しがっていた指輪が見えた。
その瞬間、俺は真里の気持ちが伝わってきた気がした。
俺は、とっさに走り宝石屋に飛び込んだ。
「すいません。その指輪くれませんか?キャッシュで買いますから」
宝石屋の店員は驚いていたが、丁寧な応対をしてくれた。値段を知って、かなり驚いたが有り金をはたいて買った。
宝石屋から出るなり、タクシーをひろい、真里のマンションへ向った。
まだ真里の部屋は電気がついている。
俺ははやる気持ちを抑えながらも、走って真里の部屋へ行った。
「何しに来たの?急に電話切ったのに。」
真里は少々、冷たい言い方で寂しそうな表情で言った。
「・・・ゴメン。なんかショックが大き過ぎてさ・・」
俺は、なんか申し訳ない気分が込み上げて来て顔を下に向けたままで言った。
「・・・・中へ入ってよ。立ち話もなんだからさ。」
真里は部屋の中へと入れてくれた。
相変わらず、几帳面に整った部屋だ。
ちゃぶ台の前へ座ると俺はすぐに、真里に言葉をかけた。
「なんで別れるんだよ??」
彼女は横にあるクッションを抱き締めた。顔をうずめたまま、何も答えない。
沈黙の時が流れ、水槽の酸素ポンプの音が、何か空しいような音をたてていた。
「・・・待っていたのに。ずっとに一緒にいたいのに。なんにも言ってくれないじゃん。」
真理は、涙をこらえながらの声で俺に言った。
俺は何を言ったら良いのかわからず、下をむいたままジッとしていた。
「・・・もう本当にダメみたいだね。私たち。」
真理は俺の方を見て言った。それは、何か問い掛ける感じだった。
俺は、さっき買った指輪の箱を真理の前に置いた。
「覚えておくって、真理に言っただろ??」
俺は真理の真っ赤になった目を見て言った。
真理は、震える手で箱を開けた。指輪を手にして見た瞬間、今まで我慢していたかのように大泣きした。
俺は真理の震える体を抱き締めた。
「遅くなって、ゴメンな。もう、寂しくないからな。真理のこと、大切にしたい。一緒にバージンロード歩こう?」
真理は涙を必死にこらえながら、俺に涙でクシャクシャになった顔を見せて言った。
「・・・遅過ぎるよ。でも寂しい気持ちになった分、幸せにしてよ? ありがとう。」
真理の左の薬指に輝く指輪には、foreverの文字が刻印されていた。