異世界
「異世界に飛ばす前に~ルールが加わったこと事があるんだけど、その事を今から説明するからよく聞いてよ」
神がそう言うとビクッと人達は身震いする。
ただでさえ人を殺すという理不尽なゲームクリアをしないといけないのに、ここで更にルール加わるとなるとそれはもう人達にとって正気ではいられない。
健太はずっと脂汗をかいている。
反抗したいのはやまやまだ。だけどそんな事をしてしまえば自分まで消されてしまうかもしれないと思うと心が、脳がそれを拒否する。
情けない、親ならいつも反抗的だったのに。親だから、親の弱点など当然知っていて、そこをつけば健太の親はいつもいいなりになっていたのに。
でも今回ばかりはそうはいかなかった。
だって相手は神なのだから、下手に動けば何をされるか知れたもんじゃない。
だからその何をされるか分からない恐怖で健太は、反抗が出来ずにいた。
「1つ目~相手を倒した場合、その相手の持っている称号を自分のレベル10消費することで手にすることが出来る」
人差し指を立てて1と示し神がそう言うと、すぐに2本目の指を立てていい始めた。
「二つ目~皆の持てる称号は三種類まで、それ以上に欲張ろうとすると~どれか1つ、自分の持っている称号が自分の意思とは関係なくランダムに無くなってしまうから、気を付けてね~」
神は皆の顔を舐めるかのように見渡す。
表情からして神は不機嫌のように見える。
「お~い、今から楽しいゲームが始まるのになんで皆はこの世の終わりみたいな顔してるの~? それは設計者にとって失礼な態度だと思うな~ まぁ作ったのは僕だけども~」
ははと健太は乾いた笑い声を漏らす。
当然だ、人を殺してクリアしなくてはならないのにそんな呑気に楽しくゲームなんて出来るはずがない。
「最後、本のたま~にルールを付け加える事があるからよろしく~僕からの説明は以上かな、あとはルールブックを見て、ブックって念じれば呟けば自分の目の前に現れるからさ、じゃあもう行こうか異世界へ……と危ない危ない、忘れる所だった、異世界にいるのは君達だけじゃないからね、ん~ざっと3万人ぐらいかな、君達みたいにゲームを参加している人は、じゃあ頑張ってね」
神の言葉が言い終わり健太は思う。
本当にこのゲームが始まり、終わらせるために多くの人達を殺さなくてはいけないのだと。
少なくとも小数ではないだろう。
神は言った。このゲームは3万人の人がプレーヤが参加していると。
ここに来る前、健太がまだ自分の部屋でこのゲームの詳細を見ていた時、クリア条件はこう書いてあった。
最後に自分が生き残る、それがクリア条件。
いまにも狂いそうだ。
酷く頭が痛い。
健太は死にたくもないしそれは回りの人達も同じ思いだろう。
だけど生き延びる為には最後まで生き残らなくてはならない。
その意味は、人を殺すしかなかった。
今の現象、皆が同じ蒼白な表情をしている。
絶望に落ちた表情。
神はそんな表情をされていても何とも、微塵も悪いとは思っておらず、ただ単に面白いことを起こして欲しいなと思った
結果、このゲームを作り出された暇潰しのゲームしかないのだ。
まぁ神にとって面白いはごく一部の理由で作られたのに過ぎないが。
パン。
手と手を会わせて、この四角い部屋にいた人達は一瞬で姿を消す。
「…え?」
ただ1人、健太は取り残されていた。
回りを見渡す、真っ白に染まった部屋に音も何も聞こえない。
さっきまでいた人達の姿が見えず、自分だけが残されたことに動揺を見せる健太だが、まだ中心に神がいた。
固唾を飲み込み何故自分だけを残すのか不信に思う。
神はそんな健太の表情を見て言葉を吐く。
「君面白い子だよ~」
「は?」
ますます分からない。
別にここに来て健太は何も面白いことをしてないし面白いことをしようとも考えていなかった。
それが突然面白い子と言われて困惑するのも無理はないだろう。
「なにが面白いのかは僕にも分からない、これから君が起こすんだから」
怖い、とてつもなく。
何を考えているのかが全く読めない。
健太は怪訝な表情になりながらも口を開く。
「これから起こす?」
「そう、1つ質問するけど君は何故あの騒動で耳をふさいでいた?」
健太はさっきの出来事を思い出す。
中年の男が怒鳴りをあげると回りも釣られるように騒がしくなり確かに自分は耳をふさいだ。
だってうるさかったんだから。
ただ単にうるさくて耳をふさいだ。
それは決して不思議なことでもないし、むしろ人として当たり前の習性だと健太は思っている。
「うるさかったから?」
自信がなく曖昧な言葉を放つと神「そうそう、それ」と話を続ける。
「ふつうパニックになる時、そんな余裕染みた思考はしないんだよね~だから皆は怒鳴った、それは自分に抱いている恐怖を消すための無意識な行為、つまり冷静さを無くしているんだよ」
神は言う。
「君も決して恐怖がないわけではないと思う、今も体が身震いしているしね~それでも冷静さを失わず的確にうるさいからと耳をふさいだ。臆病者だけど冷静さを無くさない。これは君にとっていい武器だ、評価に値するよ」
どう態様をとれば良いのか、ありがとうとでも言えばそれは一般に礼儀正しく表せれるのか、よく分からないところである。
「君をこの場に残したのはこの事を伝えたかっただけなんだ~まぁ頑張りってよ~何なら君だけ特別にチートあげちゃってもいいんだよ~」
ピクッと健太の眉が上に上がる。
神の表情はモザイクが着いている時点で見えないが、健太からみたらニヤついているように見えた。
表情もそうだが、言葉に苛立ちを持つ。
「チートって耳障りな言葉にだよな」
拳に力を入れて血が滲んでくる。爪跡が残るぐらいの強さだから当然痛みも走ってくるが今の健太にはそんな事かんけいない。
大好きなRPGゲームを侮辱されたのだ。
「チートなんぞに頼ってるやつなんてただのド素人だ、俺はド素人じゃない!」
「ハハ、やっぱり君は面白いね、でもこれはただのゲームじゃない。殺し合いのゲーム何だよ、その意味は冷静さを保っていた君なら分かってるでしょ、今なら間に合う、チート貰っちゃいなよ」
(確かにこのゲームは殺し合いが始まるドス黒いゲームだ、いつ脱出しようと欲を見せるプレーヤーが俺の命を狙いに来てもおかしくない、だけどな!)
1歩片足を力強く前に出して、鋭い視線、俺の言いたいことを言ってやろうと言う気持ちが高ぶり、叫びに近い言葉を盛大に健太は放つ。
「俺にはゲームと言う誇りがあるっ! その誇りはいつもゲームの行きにつまずいた時、俺にいつも勇気をくれる、だからそんなチートには頼らない、頼りたくもない、勇気をくれるだけでも充分だから。これ以上ゲームを侮辱するな、誇りを汚そうとするな、分かったか神やろうっ! チートを貰うぐらいなら俺は死んだほうがましだ!」
ふーふーと喘ぐ息。
言ってやったと思う健太は先程の蒼白な表情とは異なりとても清々しかった。
神はと言うと盛大に高笑いして楽しそうだった。
しばらく笑いが止まらず、なにが面白いんだとプンスカ怒る健太にようやく笑いが止まり言葉を放つ。
「いや~やっぱり君は面白いね、つぼにはまった。うん、確かにその通りだ、ヤボな事きいてごめんね、君名前は?」
「…浜野健太」
「よし、君の名前をよく覚えておくよ、これからの健太君の活躍を期待しているから、じゃあ頑張ってね」
パン。
こんにちは瞳です。
次回はゲーム世界に飛ばされた主人公は1人の男性と出会います。
戦闘は恐らくまだ出ません。
では次回お楽しみに。