理不尽な構成
「うっ、ここは?」
ゆっくりと立ち上がり、周囲を見渡す。
真っ白に敷かれている石板のような地面。
回りの壁の角は90度に等しく、そこはもう四角い空間。
気づけば健太はそこに立っていた。
はっきりとしない記憶に、なんとも言えない表情になりながらも健太は回りを見渡し続ける。
自分だけではない。
ここには人人に埋め尽くされて自分と同じような表情になりながら周囲にいる人達は回りを見渡していた。
「ここはどこだよ!」
「私はどうなるの!」
「いやぁぁぁぁ!」
そのような声が聞こえて来る。
健太と同様に人達もなにが何だか分かってはいないのだ。
全員がパニックに陥って健太も不安に落ちる。
心臓の鼓動が、お化け屋敷の中を怯えて進んでいくような感じに早くなり、身体全体に嫌な汗が流れる。
「おい、服装が変わってるぞ!」
1人の男がそう叫ぶと人達はますます騒ぐ。
それに続き、健太も呟く。
「本当、だ、これは皮のジャケット…なのか?」
健太のいう通り皮のジャケットを纏い、その他にもシャツに皮のスボン、腰に剣まで携えていた。
「…ああ、思い、だした」
あまりにも動揺し過ぎて、言葉が途切れ途切れになる。
すぅと鞘から銀色に輝いた剣を半分抜き、自分の手を近づける。
「っ!」
痛みがあった。
刃に触れた人差し指がジワジワと赤い液体が吹き上がり、健太はゴクリと喉に固唾を飲む。
カシャっと剣を鞘に納めて手が震え出す。
「…夢、だよな、こんなの、たかがゲームだもんな」
でもと続き、健太はさっきの出来事を思い出す。
ダウンロード完了時に発動したカウントダウン、そしてそれを伴うかのように大きく揺れた地震。
カウントダウンならまだわかる。
何らかの合図でゼロになった瞬間にエンディングが流れるパターンはよくあるが、そのあとのことがおかしい。
あの大きく揺れた地震、あれは一体なんだったんだと呟き、更に疑問に思う事がある。
それはカウントダウンゼロになった瞬間、自分の意識がどこかに行ってしまっていたこと。
(最近のネットは怖いな、痛覚も感じるし、人もきちんとリアルだ、ただキャラクター設定がないことが残念おもうのだけど、それに部屋の中にいた俺がこんなどこか分からないところに連れて来られるなんて、これはゲームのうちのなのか? だったらちゃんと詳細にかいておけよ、運営者いい加減過ぎ)
そう思う健太だけど内心ではそんなことは思ってない。
今の時代にこんなハイテクな機能を持ったゲームなんて聞いたこともないし、人が部屋にいたところを瞬間的に違う空間に飛ばすなどそんなことは原理的にありえない。
もし瞬間移動のような原理がこの世に存在していたらそれはもう世界中が大騒ぎだろう。
そしてそんな騒ぎがあればニュースになり人耳に入るだろう。
そして何より地震と意識が途切れる事が一番不可解だ。
健太はそんな事を脳にはっきり整理してあるのだが、そんな誘拐真似たことを思いたくなかった。
だってこんな人が集まっていることはきっと何かしら危ない実験をさせられるかもしれないのだから。
たとえそうでもなくてこの100人近くいる人数。
少なくともいい方向ではないと健太は感じている。
感じているのだがそれを認めたくない、だから健太は思ってもいない思い、これはゲームにあるチュートリアルが始まるんだなと無理矢理脳にねじ伏せた。
ザザザ-
どこからかノイズ音が聞こえる。
それだけじゃない、ノイズ音が聞こえる方へと健太は目を向けると、さっきまで存在していなかった人の形をした立体映像が、この四角い空間の中心にいた。
人の形をしているけど姿がよく分からない、モザイクがかかっているのだ。
分かることはその立体映像の正体が子供ということ。
健太より30センチ低いであろうその身長と身体の細さ、だから健太は子供だと判断した。
周囲にいる人達もその不気味な現象に気づき始める。
「アロハ~皆元気~?そして始めまして~ 僕は神で~す」
「…は?」
多数の人達が声を漏らす。
同様、健太も漏らした。
「あれあれ? みんなテンション低いな~それに幽霊でも見ているかのような表情はなんだい?、ん~?」
人達の口が魚みたいにパクパクと開く。
もちろん神と聞いて信じられない人とか呆れている人も。
そして1人の男が痺れを切らしたのか、神に怒鳴る。
「おんどれは誰やここはどこや、ああ!? ふざけんなやテメーこんなところ連れてきやがて、さっさとここからださんかい、俺は早くゲームをしたいんや!」
中年の男がそう言った。
男の声がこの白く染まった部屋で盛大に響き、それに続き次々に人達が神に怒鳴る。
ただ1人、健太は耳をふさいでいるが…
「うわ、うるさいな~ 動物園かここは、お前が最初に怒鳴るからだよ~ 全く」
鼻でため息を吐く神。
表情すら見えないが、中年の苛立ちは神の言葉だけでも充分に達していた。
「ごたごた言ってらんと、さっさと出せや!」
男は歩く。
苛立ち混じりの歩きはやや足に力が入り、ドンドンと地面に響き、形相を変えていきよいよく神の胸ぐらを掴もうとするが、それは、不可能だった。
それはまるで存在がない。
モザイクな神の姿は見えるのだがそこにはいなかった。
男の手はそのまま神の胸ぐらを貫通して、雲を触るかのように何も掴めない。
あれあれ? と混乱する中年の男。
周囲の人達もそれに驚き、または恐怖を感じている人もいるだろう。
ゴクリと固唾を飲み込み手の平に爪痕が残るぐらい力をいれている。健太は言わなくても分かるように恐怖を抱く1人だった。
「暴力はんた~い、というかお前がいると話が進まないからさ~? もう先行っていいよ」
そう言うと神はパンッと手と手を合わせた。
「お、一気に皆静まり返った、最初っからこうしとけばよかったかな、まぁこれでやっと本題に入れるね~」
健太は今起きた出来事に態様が出来ずにいる。
神が手を叩いた瞬間に中年の男が成仏したかのように突然姿を消したから。
それにより皆が恐怖に陥った、もう誰も喋ようとはしない、何をされるか分かったものではない。
ただ人達の思う気持ちは見事に一致している。
この現象を見たからには神と認めるとしかないと。
だってこんな外道、人には出来ないのだから。
そして、もう目の前にいるモザイクの言うことを聞くしかないということも。
「突然だけど皆にはゲームをしてもらうよ~というよりデストラクションゲームを考えたのは僕なんだけれども、一様みんなこのゲームの魅力に引かれて参加を認めたんだよね~? だから皆はここにいる、100人の人間が、ね」
(デストラクションゲームをしてもらう…)
この時、健太の思考にはこう考えていた。
(ルールは確かオンライン制度で特定された人を倒すゲーム、それがゲームクリアだったはず…てこれかなり不味くないか!?)
「あ、あの、質問、を、していいですかね」
言葉を言い終わった瞬間皆の目線が健太の方に移る。
「お、いいよ~何でもきいて、答えられることなら何でもこたえるから」
背中に脂汗が流れる。
なんで思ったことを神に言ようとするんだと、自分の失敗を今更ながら後悔する。
下手に喋れば自分もあの男のように消されるかもしれない。
だけどここで「やっぱり何でも無いです」とか言った場合、それこそ神のご機嫌を悪くして消されてしまうかもしれない。
消されるのは嫌だ、だから慎重に言葉を言ようと健太は深く深呼吸をして意を決したかの言葉を吐く。
「神様が僕達にゲームをさせる理由が1つと、このゲームのルールは特定された人を倒すと詳細に書いてありました。特定された人と言うことはこの場にいる人達何ですかね?」
健太の言葉に人達は一瞬で動揺する。
ただ声を出すとまた誰かが消されるかもと思い、誰も声を出さなかったがここには小さな子供もいる。
この空気でもう半泣き状態だった。
「前半は言えない、けど後半は君の察しの通り特定された人はこの場にいる人だよ~」
「なっ!」
子供はついに泣き出した。
近くにいた大人達も半泣き状態になってしまい、お互いに抱き合う。
「もちろん倒すイコール殺すになるからね~ あとこのゲームをクリアしないと終わらないから 頑張ってね」
言葉に迷いがない。容赦のない神だった。