自分の都合
カチカチと時計の針が動く音。
カーテンは全て閉められていて暗闇に包まれているがわずかながらパソコン光が照されていた。
その光のおかげで、少年、浜野健太の姿が見える。
後頭部に黒色の癖ッ毛を生やし、目の涙袋には黒く染まったくまが出来上がっている。
服装は少し色の目立つ赤色のジャージにスボンで身長は160~170あるかないかぐらいだ。
健太は数有数のゲーム廃人。
ただしDSに限るが。
好きなゲームジャンルはファンタジーで特にレベル制が大の好きであり、部屋の押し入れには数多のRPGのソフトゲームが存在している。
少年がゲームをはまり出して約2年。
はまり出したきっかけはある出来事によるストレスから逃げ出したくなり学校に行かなくなった、そこからゲームが大好きになった始まり。
2年前の年は15才、まさに幸せな高校生活を送るために受験という社会的やや高いレベルを挑んでいた健太だが、さっきもいったある出来事と受験が重なるという交互からのダブルパンチが訪れて健太の精神はボロボロになっていった。
更に両親という敵もいた。
健太にとってある出来事にかなりの精神ダメージを受けていて、そんな中でまともに受験勉強も取り組めるはずもなく、日々のテストの点数が加速する隕石のように落ちていった。
両親はそれを許さない。
健太の将来の為に言っているだろう説得、少し強めの口調でやれこれそれやれの言葉がことごとく健太の耳に吸収し、日にちが経つにつれ、苛立ちを覚える。
そんな時、ご飯を食べていた所にテレビにCMが流れた。
楽しそうな表情をした人物がテレビ画面の奥でプレイしているゲームが。
今でも覚えているだろう。
血がマッハスピードで身体全体に行き渡り、鼓動が一層早くなり、そして初めてゲームを始めようとした瞬間の緊迫感を。
それが今の年に戻り2年間ニート生活をおくっているのだ。
今この時、ゲームソフトはざっと200は超えてしかも全部のソフトがクリアされている。
それだけのソフトがあり、全てがクリアされているとなると
当然飽きてくる。
そこで健太は2ヵ月前にパソコンを買い、ネトゲーにも手を出した。
昨日まではまだ使い慣れをしていなく練習中だったのが、今それも終わり健太はどんなゲームがるか検索中である。
「なんだ、これ」
右手に持っている缶コーラをパソコンの台代わりにしている机に置き、画面に浮かび上がっている文字に疑問を抱き、器用にもう片方の手でマウスを動かす。
疑問を抱いた文字にたどり着き、健太はくまが出来た目を細めて呟く。
「…デストラクション?」
マウスで詳細をクリック。
すると画面は瞬時に変わりファンタジー系風景が浮かび上がった。
下にスライドしていくと、デストラクションのゲーム説明はこう書いてある。
レベル制度、称号を強く尊重しているファンタジー系ゲーム。
このゲームはオンライン制度で、自分の持った能力で特定された人間を倒していき最後に自分が生き残る、それがこのゲームのクリアに繋がり、能力は様々な方法で手に入れることが出来る。
例えばドラゴンを倒せば竜殺しという名の称号を手に入り。
例えば数を特定されたモンスターを倒せばそれに応じて称号を手に入れることも出来る。
他にもクエストで称号を手にはいることも販売されたりもしている。
「おも、しろそうだな、だけど、称号を手に入れるのはいいけどその中身の効果はわからないのか?」
誰もいない部屋で健太は呟いた。
画面下にスライドを限界まで下げるが効果までは書かれておらず、変わりにそのあとはチュートリアルで確認して下さいと書いてある。
少しイラッときた健太だが内容はなかなかいいと思い落ち着きを保つ。
(人を倒していくのがこのゲームのクリア、プレイヤーキラーってところか、戦争ゲームに似ているけどこれはきちんとファンタジーなんだよな、モンスターもいるらしいし)
健太はこのゲームをかなり気にいった。
ファンタジー系ゲームは極度の大好物という理由もあるがさらに二番目にはまっている戦争での対人戦も好きなのでまさに一石二鳥だ。
戦争ゲームと言えば銃で撃ち合いになって、沢山の人を倒す、中には戦略で爆弾を仕掛けて倒すのもある。
それを感じる爽快感が健太は好きで戦争系ゲームが好きなのだが、今回はその爽快感は感じられないだろう。
だってこのゲームはファンタジーなんだから。
それでもファンタジー系に対人戦はあまりプレイ、いや、そんなゲーム事態発売されていない。
だから健太はこのゲームはどんな風に感じ、どんなプレイ、イベントが待ち受けているのか楽しみで仕方がなかった。
「やってみようか…というより無料だよなこれ」
登録無料と書いてあり安堵する健太。
「ダウンロードっと」
クリックすると画面に一直線の緑色をしたゲージが右に進む。
長いなと思う健太だが、実際はまだそこまで時間は進んでない。
早くダウンロードという気持ちが高ぶり、時間感覚がおかしくなっているだけである。
緑色ゲージが満タンになり画面はファンタジー溢れる表示…にはならなかった。
突如に部屋が揺れ始めた。
画面には10秒というカウントダウンが始まり、周囲の床下、壁、ドアが地震のように大きく揺れる。
「おいおい、どうなってるんだよこれは!」
読めない現状、揺れはさらに激しくなっていき、立てなくなった健太は膝を着く。
5……4……3……
激しい揺れでパソコンは床下に落ちた。
じゅうたんも敷いていない床に。
パソコンの回りに卑劣が走るがそれでもカウントダウンダウンは止まらない。
「ちょっ、嘘だろ、やばいよこれ!!」
「健太? 騒がしいけどなにしているの?」
母の声が部屋まで届くが、パニックに陥っている健太の耳には届かなかった。
2……1……0。
「健太、何してるの! ってあれ、健太?」
パソコンの画面に表示されていたカウントダウンはゼロになっており、まるで同じゼロになった瞬間を伴うかのように、もうそこには健太のすがたは見えなかった。