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短編

言葉の中学校の部活奮闘記

作者: 安藤言葉

パコーン!!パコーン!!パコーン!!・・・・・・

    

ソフトテニス独特のボールを打つ音がする


今はその音が鳴り終わり、コートの整備をしている時間だ


今日は中学校最後の個人戦の大会の前日。


中学校最後の団体戦の日でもある。


「浅村、お前明日がんばれよ」


「って!たたくなよ、ったく」


そういってからんできたのは朝比奈あさひな 宗助そうすけ


俺らの神山中学校の男子テニスの主将だ。バカだけど。


俺はこいつに個人戦を譲ってもらった。実力から見ればどう考えてもこのバカが上なのだ


が、先生に温情でだたせてもらう。このバカの代わりに。


「お~い、けい!このボールしまってくれ~」


そういって俺が落ちていたテニスボールを投げ渡すのは、明日の俺のペア、佐藤 啓一《け


いいち》だ。親しみを込めて、というかめんどくさいから啓と呼んでいる。


朝比奈と啓は今日の団体戦では、負けた。最後は朝比奈のスマッシュミスだった。


好機に攻めて失敗してしまったのだから朝比奈はすごく悔しかったのだろう。


しかし、もう出る義務のない、個人戦の練習に来てくれた。


そんな朝比奈のためにも明日は、勝つ!


「あ~浅村、いよいよ明日だな」


振り返ると顧問の大津先生がいた。俺は箒を掃く手を止めて先生の近くに駆け寄る。


「あ、はい。いよいよです。がんばります!」


「おう、お前を出すのはただの温情だけじゃないからな。明日の試合、お前がどんな試合


すんのか楽しみにしてるから」


「っ・・・ッハイ!!」


嬉しかった。ただ純粋に。明日は例え負けてもいい。いや、がんばって勝つけど。


今までやったことを全力で相手にぶつけて、悔いの無い試合に出来ればいい。


そう思って俺は家に帰り、寝た。




(きらきらひかる 青春ラインを 僕らは今 走り出すよ つなぐ 想いを 夢の先まで


~)


車の中でお気に入りの曲、いきものがかりの青春ラインを聞きながら会場に向かう。


ついに来たのだ。しかし緊張はしていなかった。音楽を聴いてリラックスしてるし、最高の日になりそうな予感がしていた。









あっという間に時は流れ、俺の出番となった。


「啓、とりあえず、ストレッチとかして、走る?」


「んーそだね」


いつもは走る、なんて逆立ちしても言わないのだが、今日は別だ。


やはり、全力を尽くしたい。


「あ、浅村!どう?」


振り向くとそこには赤井と中西がいた。


中西とはほとんど話したことがないが、赤井とはそれなりに親しいつもりだ。


「う~ん、どだろ。とりあえずがんばるよ。赤井たちは?」


「ん?もちろん勝ってるよ!ま、がんばってね!」


「もちろん。がんばって勝つよ!」


とりあえず女子に応援されてがんばらない男はいないと思う。


できればやなぎ 未来みらいにもなんかいってもらいたかったが・・・


そんな他人よがりの期待をしても、もちろん恋愛の神様は微笑んではくれない。


だから、この試合でちょっとでも活躍してすごいな、って思ってもらいたい。


すこしでも俺に気が向いて欲しい。


そんな余計なことも考えながら、ランニングを終え、コートに向かうのだった。









コートに着くともう準備は整っているようだった。


あとはここで戦うだけ。


さぁ・・・・


「お願いします!」


全力でやるぞ!!


しかし、コートに足を踏み入れた瞬間から俺の中でだんだん大きくなっていく音があった。


ドクンッドクンッ


今までに経験したことのないほどの大きさだった。


いつもは手をあてて、静かにしてないと感じられない心臓の鼓動が、今日は動いていても


はっきりと感じられる・・・・


・・・やばい。緊張してる・・・・・・


しかし試合は緊張していようがいまいが、始まりの時間は近づいてくる。



「浅村~ガンバレ~!!!!」


右を乱打しながらみてみると数人の女子が応援してくれたみたいだった。


神山中の女子テニス部の女子だった。


柳も応援してくれたのだろうか?


チラッと見ただけなので確認はできなかったが、そうであったら絶対に活躍しなければな・・・


とりあえず乱打してるから手を振るなんてできないので肩をすくめてみる。


「キャーーー!!!」


そんな悲鳴が聞こえた気がする。


応援に返事したからなのか、俺がキモチ悪かったのかはわかんない。


・・・・・・できれば前者であってほしい。


そして、だ。さっきも言ったかもしれないがあえてもう一度言おう・・・



女の子に応援されてがんばらない男はいない!!!














しかし、現実はテニ○の王子○みたいにかっこよくは進まなかった。


体が全然動かない。何もできない。


あいかわらず心臓はバクバクしている。


深呼吸をしても無駄だ。


「チェンジコート!!」


審判の声が響く。


・・・・嫌だ・・・・


このまま何もやれずに終わるのは嫌だ。


期待に応えられないのは嫌だ!!!!!!


だんだん俺の視界がゆがんでいく。


先生の言葉もうまく頭に入ってくれない。


「浅村、そろそろいこ」


啓に促されて向こう側のコートに向かう。


「おい、浅村」


後ろを振り返ると朝比奈が手招きしていた。


なんだろう・・・アドバイスでもしてくれるのかな・・・


俺が近づくと朝比奈は俺を軽く抱いて、肩を叩きながらこういった。







「全力でやってこい」


・・・・・・・・・・・・


ハッ、ハハハ・・・やっぱこいつ、バカだけど、最高に友達思いだわ。


こういうのを本当の友達っていうんだろうな・・・










そして試合はあっけなく終わった。


当然俺たちの圧倒的な敗北で。


俺の左胸に響く悪魔の鼓動は最後まで鳴り止むことはなかった・・・





そのあと、いろんな人に慰められた。


俺としては今までがんばって・・・


がんばってがんばってがんばってやってきたのに・・・


やってきたことが「緊張」で何も出せなかった・・・


その日はたくさん泣いた。


小学校やってたバスケは最後の大会が終わったときは


やっと終わった~、ふぃ~とか思っただけだった。


しかし今回は違う。


勝ちたかった。もっとテニスがしたい。もっと先生や仲間と一緒にがんばりたい・・・


そんな思いがあった・・・







あれから半年くらいたっただろうか?


そのあと当然俺も啓も朝比奈も受験勉強だ。


一応今は合格発表を待っている身である。


まぁ、今はいろんなことやってエンジョイしてるわけだが。


きっと俺は高校ではテニスをやらない。


嫌いになったわけじゃない。


ただ単純に疲れるのがイヤだってわけでもない。


どっちかっていうとせっかくがんばったんだから高校もやりたい。


が、おそらく半年の間にテニスの技術はなくなってしまっただろう。


腹に変な肉も増えたし・・・(これは言わなくてよかったかも・・・)


まぁ、なんにせよだ。


高校でも中学で出会えたような仲間のような、「信友」を見つけるか!^^


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