北風と太陽
北風さんと太陽さんはケンカばかりしていた。
ケンカの理由はいつも、どちらが強いのかということ。
今までも、数え切れないほどケンカをしてきたが、太陽さんの全勝。
服脱がしの勝負をすると、北風さんの風よりも、太陽さんの暑さで旅人は服を脱ぎ、太陽さん勝ち。
かけっこをすると、一日で地球を一周するという圧倒的な速さで、太陽さんの勝ち……。
麻雀をすると、北風さんの手牌はすべて倒れてバレてしまうので、太陽さんの勝ち…………。
力比べのルールは自然と決まる。
「あすこに学校がある。今回の勝負は、校舎から子ども達を多く出せた方の勝ちにしようじゃあないか」
「よしならば僕から行こう」
太陽さんは自信満々に答えた。
今まで負けたことがないのだ、今回も勝つに決まっている。
北風さんが天高くに隠れると、太陽さんは学校の真上に顔を出し、さんさんと校庭を照らした。
「よしよし、これで元気な子ども達は校舎から出てきて遊び始めるはずだ」
しかし、どんなに照らしても子どもは少ししか出てこない。
どうにもおかしい。太陽さんが校舎をのぞくと、子ども達はクーラーのついた教室ではしゃぎ回っている。
どんなに天気がよかろうと、クーラーの涼しさを知った子ども達が、暑いのに外に出たがるわけがない。
太陽さんは諦め、
「この勝負はお互い無理だよ、君。現代の子ども達は快適に遊ぶ方が好きなんだ。出てきやしっこない」
太陽さんが雲の中に隠れると、天高くから北風さんが舞い降りてきた。
そうかい、それでも僕はやるよ。北風さんは大きく息を吸い、吐いた。
北風さんの起こした風は、校庭の砂を巻き上げ、校舎の窓をガタガタ震えさせた。
子ども達は、なんだなんだと窓に顔を近づけ、外をのぞいた。
「うわぁ、すげぇぞ! あんな強い風だと、空も飛べそうだ!」
子ども達は一斉に駆け出すと、先生の止める声も聞かず、校舎を飛び出した。
そうするとあっという間に、校庭には学校中の子どもであふれた。
「ほら、どうだい太陽さん。子ども達を全員外に出してみせたよ」
呆然とする太陽さんに北風さんはくっくと笑って言った。
「今回は私の勝ちだね」
走る子ども、飛ぼうとする子ども、風に打たれ楽しむ子ども。
そう、子どもというのは快適な空間よりもなによりも、危険なことが一番好きなのだ。
□相手も変われば結果だって変わる。太陽さん、くやしがることはない。




