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魔法使いと夢と夢魔  作者: 高町 楠葉
第一章 魔法使いの息子
9/45

八話 炬燵と言えばミカンと猫が定番です

ちなみにうちはどっちも当てはまります。

「おーい、メア。食事出来たぞー」


 丁度18時を回った頃、夕食の準備を終えた事を伝える歩夢の声がリビングに響いた。

 歩夢としては先ほどまでの暗い雰囲気を食事と会話で一気に清算しようという考えだ。

 ちなみにメアはというと食事の準備を始めると同時に


「じゃあ、ボクは大人しく炬燵でぬくぬくしてま~す!」


 と、炬燵に潜り込んでしまっていている。

 しかし、歩夢の呼びかけに反応はなかった。


「……?」


 寝ているのだろうか?そう考えた歩夢は確認の為に炬燵近寄る。

 するとそこには異様な光景があった。


「何やってんだ?」


 歩夢は思わずそう呟いた。無理もない。彼の視線の先には炬燵から生える彼女の足があったのだから。

 頭だけ出ている、乃至頭まですっぽりと炬燵の中に入って寝てるならまだしも、上半身のみを炬燵の中に突っ込み、下半身だけが外に出ている状況など普通はそうないだろう。

 一言で表現してしまえば「変」の一言に尽きる。


「メア?」

「……」


 やはり反応はない。寝ているのか、あるいは聞こえていないのか。

 さすがに足の出ている方から覗き込むのは憚られたので、一旦回り込んで向かい側から頭を突っ込んだ。


「……」


 案の定、彼女は寝ていた。ヒーターの駆動音と彼女の寝息が聞こえてくるのがわかる。

 が、しかし。歩夢の想像していた状況とは少し違っていた。

 一緒に猫がいた。黒猫だ。メアの頬に擦りつくようにして一緒に眠っている。当然、我が家に猫などいない。

 綺麗な毛並みなので野良でない事は一目了然で、全体真っ黒にも関わらず尾の部分だけ真っ白とかなり特徴的。

 そして何より特徴的なのはその小さな羽で……。


――……羽?


 ちょっと待て。何故、猫に羽がある。

 それこそアニメやゲームに出てくるような小悪魔とかについてる“明らかに体の大きさに比例していない飛べそうもない小さな羽”が。

 見間違いかと思い目元を擦るが、結果は変わらず歩夢は言葉を失ってしまう。

 すると不意に猫が目を覚ました。歩夢と目があう。


「……」


 何故だろう、嫌な予感がする。というか嫌な予感しかしない。

 と、予想を裏切らず猫がいきなり襲いかかってきた。


「うお……!?」


 何とか歩夢はその一撃を回避しようと頭を上げるがここは炬燵の中。頭を上げる事が出来るほど天井が高いはずもなく思い切りテーブルに頭をぶつけて悶絶する。

 そこにさっきの猫が腕に噛みついてきた。泣きっ面に蜂とはこの事か。


「アダダダダッ!?痛い痛い!!マジで痛いから!!?」


 必死の抵抗も空しく、猫の噛みつきから逃れる事は出来ず歯が食い込んでくる。いくら服越しであるとはいえ、痛いものは痛い。

 炬燵の外からこの騒動を聞きつけたらしいシエルの声が聞こえてきた。


マスター!?どうしたんですか!?」


 しかし、歩夢にそれを答える余裕があるはずもない。何とか猫の首根っこ掴んで振り解こうとする。

 すると今まで寝ていたメアの声が突如響いた。


回帰リターン!」


 彼女の掛け声と同時に今まで噛みついていた猫が光に包まれ、一瞬で霧散する。

 さすがに今まで噛まれていた部分の痛みが無くなったりはしなかったがどうにか歩夢は落ち着きを取り戻した。


「いつつ……何だったんだ今の?」


 炬燵から頭を出すとメアが向かい側から飛び出し、ガバッと勢いよく頭を下げた。


「ごめんなさい、お兄ちゃん!ボクがあの子を出しっぱなしにしてたせいで、怪我大丈夫……?」

「ん……?あぁ、多分平気」


 歩夢の言葉にほっと胸を撫で下ろすメア。しかし、シエルは黙っていなかった。


「……で、何をしてたの?メア」 

 

 笑顔で問いかけてはいるが、その目は笑っていない。怖いです、シエルさん。


「え……え~っと、待ってる間退屈だったから夢の世界からペットのシロを召喚して遊んでたんだけど炬燵の中が気持ち良くって気が付いたら寝ちゃってて……」

「それで確認にきたマスターが噛まれた、と……」


 あんなに黒い猫だったのに名前はシロなのか、ということはさておきこのままだと食事の前にまた一騒動起きかねない(もう十分起こってるかも知れないが)。

 歩夢はメアの発言からどうにか話題を逸らそうと試みる。


「夢の世界から召喚したってどういうことかな、シエル?」

「え……?」


 爆発寸前だったシエルはいきなり話を振られ、キョトンとする。

 歩夢はこの流れが途切れないように話を続ける。


「さっきのほら、シロだっけ?召喚がどうとかって言ってたけど……」

「ボクが説明する!」


 ビシッと、手を挙げるメア。シエルは歩夢とメアの双方の顔を見た後、小さくため息をついた。


「ちゃんとマスターにわかるように説明しなさいね」

「はい、わかりました!」


 挙げていた手をそのまま敬礼のポーズにして答えるメア。

 シエルは「まったく」と、少し呆れた様子で食事の席に着く。

 歩夢もどうにか事態が深刻化する前に終息させることに成功したという事実に胸を撫で下ろしつつメアと一緒に席に着くのだった。

猫に噛まれると痛いんですよね~

向こうは大概じゃれてるだけだからあんまり怒れないし……

まぁ、可愛いんですけどね!(


では、楠葉でした。

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