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魔法使いと夢と夢魔  作者: 高町 楠葉
第一章 魔法使いの息子
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五話 喧嘩の仲裁なんてキャラじゃありません

微笑ましい喧嘩ですね(

 顔に熱々のご飯の直撃を受けた歩夢は濡れタオルをのせて再び横になっていた。

 顔全体が隠れるように白いタオルが掛かってるせいもあって一見すると死人のそれである。


「お兄ちゃん、大丈夫?」


 タックルをお見舞いしてくれた金髪少女の声が聞こえ、タオルの端っこを掴み視界が開けるようにタオルを下にスライドさせる。

 と、少女の顔がどアップで映った。思わず息をのむ。


「まだ赤くなってる。ごめんね、ボクのせいで……」


 吐息が触れるほどの至近距離。少女は申し訳なさそうに呟いた。

 その翠色の瞳が潤んでるのを見ると何だか自分が悪い事をしているような気分になってくる。


「いや、大したことないから気にしないで。そんな泣きそうな顔されるとこっちの方が悪いことしてるみたいだし」


 この指摘に少女は慌てて顔を背け、目元をゴシゴシと擦った。白いリボンで結んだツインテールが尻尾のように揺れる。もう一度向き直ると少しばつが悪そうに微笑み、その頬は心なしか赤く染まっていた。可愛い……。


――いや、そうじゃなくて。


「ところで今更なんだけど、君は誰?俺の記憶違いでなければ妹はいなかったと思うけど」

「……え?あ~、そうだよね。やっぱり覚えてないかぁ」


 歩夢の問いに寂しそうに呟く。その呟きに少し諦めの色を感じて、歩夢は少し罪悪感を感じた。


「ごめん……でも、本当に覚えてなくて」

「ううん、お兄ちゃんは悪くないよ」


 歩夢の謝罪に少女はかぶりを振り、そして今度は悪戯っぽく微笑んだ。


「だ・か・ら!」

「うお!?」


 いきなり少女は歩夢の上に覆いかぶさるように飛び乗ってきた。

 いくら体つきが小さく幼く見えるとは言ってもその体は女の子のそれで小さいなりに色々と当たってしまい、歩夢は動揺する。


「な、何……?」

「思い出させてあげる……」


 少女は問いに答えずそう呟くと歩夢の頭に手を回した。


「ボクのあつーい、キ・ス・で♡」


――な、な、何だってぇぇぇぇぇ!?


 そんな嬉しいこと……じゃなくて!夢のようなシチュエーションで……ってそうでもなく!

 何なんだこの展開は!?どうしてこうなった!?

 誰か止めてくれ!いや、止められたら止められたでなんかお預け食らったみたいで切ないけども!


マスター!ご無事ですか!?」


 そんな思考にストップをかけたのは買い物から帰ってきたシエルの声だった。よほど急いで帰ってきたのか、その端正な顔には汗が伝っていた。


「……って、メア!?貴女何やってるの!?」

「何って、ん~~……チュー?」


 シエルの問いに対して何故か疑問形で返すメアと呼ばれた少女は用は済んだと言わんばかりにそのまま行為を続行しようとする。


「そういう事を聞いてるんじゃありません!!」


 買い物袋をその場に置き、シエルは金髪少女メアを歩夢から引っぺがした。


「あ~!お兄ちゃ~ん!!」


 シエルに羽交い絞めにされながらじたばたしているメアを見て、歩夢は助かったような、勿体無いことをしたような複雑な気分になった。

 どうにか拘束から逃れたメアはシエルと向き合うようになって不満をぶつける。


「お姉ちゃん横暴!」

「貴女がいきなり変な事してるからでしょ!?」

「変じゃないもん!ボクとお兄ちゃんとであつーいキスをしようとしただけだもん!」

「どう見ても貴女が一方的にマスターを襲ってたじゃない!」


 本人そっちのけで喧嘩を始める二人を見て、メアという少女がシエルの知り合い、乃至ないし関係者で自分もそれに巻き込まれているのだという事を歩夢は大凡把握した。


「まぁまぁ、二人とも落ち着いて……」


 このまま放っておいたらいつまで続くかわからない上に近所に迷惑だと判断した歩夢は仲裁に入る。

 しかし、彼女達にとっては大事な問題だったらしい。二人とも顔も向けずに、


マスターは黙っていて下さい!」

「お兄ちゃんは黙ってて!」


 と、怒鳴り返した。歩夢は一瞬怯んだが、そのまま頭をかきながらため息をつく。


――こういうのは俺のキャラじゃないんだけどなぁ……


 お節介だとは思ったがここは自分の家だ。いつまでもこんな事で喧嘩などされてはたまったものではない。

 咳払いをして歩夢は声を張り上げた。


「シエル!!」

「はい!?」


 初めて彼女の名前を呼び捨てで呼んだ恥ずかしさを押し殺しながら歩夢は続ける。


「買ってきたものを冷蔵庫に入れなさい!今!すぐに!」


 一言一句、強調しながらシエルに告げる。シエルは歩夢の態度に驚きつつも「でも……」と、少し不満そうだ。


マスター命令です。聞けない……?」


 最後の一言が効いたのか。不本意そうだったものの「はい……」と小さく呟くとシエルは買い物袋を拾い上げてそのまま冷蔵庫へと向かった。


「……で、メア?」

「な、何?お兄ちゃん……?」


 ここでシエルだけに怒るのはフェアじゃない。少し怯えた表情をするメアの視線の高さに合わせる様に腰を落とす。


「俺にわかるようにちゃーんと自己紹介と事情の説明をしなさい!」

「うにゅ……はい、お兄ちゃん」


 悪戯がバレた子供のように小さくなるメアであった。

さて、昨日は私用で更新できませんでした。

今日中に間に合えばもう一回更新したいなと思っています。


では、楠葉でした。

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