四話 金色の嵐、襲来
もう少し書く予定でしたがミスで消えてしまいましたorz
どことも知れない薄暗い空間。中央には大樹。周りには人が一人入れそうなカプセルが三つ、大樹を囲うように置かれている。
部屋の床全体に大きな円で囲まれた魔法陣。魔法陣はカプセルを区切るようにそれぞれ桜色、金色、水色の光を淡く放っていた。
カプセルの一つはすでに開かれており、無人。残りの二つは閉じられており、それぞれに少女が眠るように入っている。
と、突然残されていたうちの一つが開いた。眠っていた少女は身を起こすとカプセルから下りて周りを見渡す。
そしてカプセルが一つ開いているのを見つけて、叫んだ。
「あ~!お姉ちゃん抜け駆けしてる!」
よほどお気に召さなかったのか、効果音をつけたら『ゴゴゴゴッ』というような音が聞こえそうな剣幕だ。
「もう“箱庭”の中にもいないみたいだし……。む~~!!」
床の光でより一層キラキラと光る金髪を靡かせ少女は走り出した。
「お兄ちゃんは私のモノなんだから~!!」
「……」
夜風歩夢はぼーっとしていた。
ここは二階にある彼の自室。主に机、洋服ダンス、本棚、折りたたみ式ベッドが置かれている簡素な部屋だ。
現在、歩夢はベッドを広げて体を横たえていた。
「……」
不意に先ほどの唇の感触を思い出し、唇の上を指でなぞる。
顔が熱を持っているのがわかった。
「主……か」
別にファーストキス(歩夢の覚えている限り)を持っていかれたから茫然自失になっているわけではない(それが全くないとは言えないが)。
契約儀式を行った後、魔力を使った歩夢は今までに感じた事のない脱力感に見舞われ、その場で一時的に気を失ってしまっていたのだ。
シエルいわく、魔力操作にまだ慣れていない人が儀式系魔法を使った反動ではないだろうか、とのこと。
そして、当の本人であるシエルは現在買い物する為、外出していた。
『元気の出る食事を用意しますので楽しみにしていて下さいね』
と、いうことらしい。
歩夢は体を起こして大きく伸びをした。
シエルが家を出たのは昼過ぎなので、恐らく彼女が作る料理は夕食になるのだろう。別に大食いではないとはいえ、少し小腹が空いてきた(魔力の消費と関係あるのだろうか?)。
「確か冷凍庫に凍らせたご飯がまだ余ってたはずだから茶漬けでも食うか……」
歩夢はご飯を炊くとき、多めに炊いて余った分を凍らせて保存する習慣があった。その方が光熱費が得だし、こういうときに非常食になるからである(こういう習慣のせいでクラスメイトに『お前、いい嫁になるよ』と、言われた黒歴史があったりもする)。
一階に下りて冷凍庫からラップに包まれたご飯を取り出すと電子レンジに入れてスイッチを押した。
ご飯を解凍している間に急須とお茶っ葉、どんぶりにお茶漬けのもと。最後に梅干しを用意したところでご飯の解凍が終わった事を知らせる電子音が響いた。
タオルの上から温まったご飯を掴み、電子レンジから取りだす。
と、ここで歩夢は違和感を感じた。人の気配を感じたのだ。
普段一人暮らしをしているせいか、そういう微妙な事に敏感になっているのかも知れない。
様子を窺おうと台所を出てリビングに向かったその時だった。
「お・に・い・ちゃ~ん!!」
金色の何かが突っ込んできた。
あまりの不意打ちに歩夢は「グフッ!」と、うめき声をもらしつつ後ろに転倒する。
受身の体勢が良かったのか後頭部は強打せずに済んだ。
「会えて嬉しいよお兄ちゃ~ん!!」
突っ込んできた何かが胸の辺りに顔を擦りつけてくる。
小柄で歩夢の肩くらいまでの身長しかないようだ。
一瞬、自分に生き別れの兄妹でもいたのだろうかと考えたりもしたがこの髪の色から察するにそれはないだろう、等と考えていた時だった。
上空から白い何かが降ってきた。
それは先ほどまで自分の右手に握られていたもの。
それが何なのかわかった時にはもう遅かった。
「アッヂィィィィィィィィィ!!」
熱せられたご飯を顔面に受けた歩夢の絶叫が響き渡った。
妹登場でようやくラブコメらしくなりそうです。
感想、メッセージ、是非とも宜しくお願いします。
では、楠葉でした。