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魔法使いと夢と夢魔  作者: 高町 楠葉
間幕 本日クリスマス・イヴ
44/45

四話 とてもロマンチックとは呼べません

久々の更新です。

長らく姿をくらませて御免なさい。

「ふふっ、今度は私が王様ですね」


 開幕から盛り上がった(盛り上がったと呼んでいいのか微妙なところではあるが)王様ゲームはそのまま第2ゲームに突入。

 今回王様を引いたフィユは特定の誰かに指示するのが難しい王様ゲームの性質を理解したうえで次の命令を下した。


「じゃあ、5番が4番の顔をビンタしてください」

「なぬ!?」

「にゃ!?」


 彼女の指示にその番号を引いたらしい正平とメアが素っ頓狂な声をあげた。

 このゲームにおいて王様を引くという事は誰かに好きな指示を出せるということではあるのだが、フィユにしてみれば同時に“絶対に歩夢と接触出来ない”という意味も含んでいた(○番が王様に~~する、という類の命令は今回は駄目らしい)。

 つまり先ほどの歩夢のような指示を出して、万が一にも歩夢と他の女がペアになったりした場合、彼女にとっては非常に面白くない展開になるわけである。それが例え自分の姉達であってもだ(姉だから、と言った方がいいかもしれない)。

 しかし、だからと言って変な罰ゲーム系の指示を一人に出して、これまたピンポイントに歩夢が当たってしまった場合、それはそれでフィユにしてみれば不本意な結果で気まずくなってしまう。

 だがこの指示なら歩夢が当たりを引いたとしても相手は叩かれるか彼を叩くかの二択。歩夢が叩く側なら誰が相手でも問題ないし、叩かれる側だとしても別に自分が叩くわけではないので気まずい思いをするのは自分ではない。

 ――という腹黒な考えもとい、計画的な命令であったことを知る者はフィユ本人だけである。


「な、何だってこんな命令に限って当たりを引くんだぁぁぁ!」


 頭を抱えながら絶叫する正平。


「ふえ~、ボクぶたれるのヤダよ~……」


 微妙に涙声になるメア。


「姉さん。明星さんを挑発しておいて自分は逃げたりしないですよね?」


 ニコニコと黒い笑みを浮かべながら話しかけるフィユ。

 八神もざまあみろと言わんばかりにいい笑顔をしている。

 何というか、女の子って怖い。


「し、仕方ない。覚悟してくれ、メアちゃん」

「ふえぇ……」


 メアの近くまで移動した正平は大きく手を振りかざす。

 そして勇み声と共に思い切り手を振り下ろした。


「うおりゃあああああ!!」


――ペシ……


 なんとも言えない情けない音が部屋に響く。

 それがビンタ――のようなものの音であったのだと皆が理解するのに数瞬の間。


「ヘタレだ」と、ジト目のシエル。

「ヘタレですね」と、呆れた様子のフィユ。

「ヘタレだな」と、ただ事実を告げるような口調の史。

「ハ、ハハハ……」と、その場を誤魔化すような苦笑を浮かべる歩夢。

「うわあぁぁぁぁぁ!!!」


 周りの容赦のない言葉に正平の自尊心は粉々に砕けるのであった。





 その後も王様ゲームは混迷を極めた。


「お兄ちゃん開けてよ~!」

「開けない!」

「鍵かけるなんて卑怯よ、歩夢く~ん!」

「卑怯もへったくれもないだろ!」

「姉さん、こうなったらドアを魔法で破壊しましょう」

「余計な入れ知恵するなー!」


 エロ的要素を含んだ正平の若干願望の混じった命令で幸か不幸か当たりクジを引き続けた歩夢は酔いが回った使い魔達にルール無用と言わんばかりの過剰なスキンシップを迫られ自室へと逃亡。


「……」


 命令を出した当の本人である正平は八神に出された命令の筋トレ地獄(腹筋、背筋、腕立て、スクワットを全て30回ずつ3セット)によりすでに廃人と化し……


「ぐぅ……」


 史さえも間接キスで相手の飲み物を飲むという命令でまさかのアルコールの弱さを見せつけ、メアの飲んでいた酎ハイを1杯飲んだだけで撃沈。

 最終的に一人取り残された八神も


「付き合いきれない」


 と、自室に戻ってしまっている。

 数少ないブレーキ役を失い、現状はすでにクリスマスパーティと呼べる代物ではなくなっていた。

 そしてそんな混迷の極みと呼べるこの状況を眺める人物が一人……


「あらあら、随分賑やかね」


 王様ゲームが始まってからは殆ど動かなかった栞が現在繰り広げられる状況に対して唐突に呟いた。

 その姿は第三者が見ればなんて事はないもの。

 しかし、ここにいる面子が正常な判断力のある状態で今の彼女を見たらきっと驚いた事だろう。

 何故なら“この状況を笑顔で楽しみながら眺めている栞”というのを想像出来ないに違いないのだから。


「でもそろそろお開きにしないとね」


 呟きながらその手に魔術書を出現させる。

 魔術書はそのまま淡い翠色の光を放ち始めた。


「我の中に眠る魔術書、その一冊を紐解く。安らかなる風よ、癒やしのゆりかごを揺らして……」


 室内、ドアや窓の全てを締め切った室内に穏やかな風が凪いだ。


「“Cradle of wind(風に揺れるゆりかご)”」

以前のような更新速度は恐らく無理ですがちゃんと更新していこうと思います。

とりあえず早いところクリスマスイベント終わらせないと……

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