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魔法使いと夢と夢魔  作者: 高町 楠葉
間幕 本日クリスマス・イヴ
42/45

二話 クラッカーって火薬を使うので銃と同じ硝煙反応が出るそうです

夜に書くと眠い……

誤字修正の方が大変になってしまいます。

 ここで物語は間幕の冒頭へと戻る。

 色々と難航した買い物を終えて帰って来てみればシエルが洗濯物を干す為に少し目を離した隙にメアが押入れの荷物を盛大にひっくり返して大変な事になっていた。どうやら長らく出されていなかったクリスマス用の飾り付け道具を出そうとしたらしい。

 結果は言わずもがな。

 小さな体で無理した結果、荷物を出す事に成功はしたものの他の荷物が崩れてきて生き埋めになっていた。

 結局人員総出で荷物を片づけた後、調理担当の歩夢とシエル。飾り付け担当のメア(他にやらせる事がなかった)。調理道具の片付け兼、食器の準備担当のフィユに役割を分けた。

 ちなみに八神も手伝ってくれるとの事だったのだがキッチンも四人で入れるほど広くはなかったので今回は遠慮して、現在は部屋にいる(ちなみにメアの方の手伝いはメアが断固拒否した)。

 時刻は18時50分を回ったところ。

 そろそろ正平達が来る頃だろう。

 バタバタと片付けを終えると二階にいる八神を呼び出して全員でリビングに集まった。

 今回は料理の量や人数が多いので炬燵布団をどけた炬燵テーブル移動させ、長テーブルに繋いで並べている。


「お兄ちゃん、ケーキは?」

「飲み物もないみたいですね?」

「ああ、うん。飲み物とケーキは持ってきてくれるみたいだから今回は用意してないよ」


 そんな会話をしているとチャイムが響いた。どうやら二人が来たようだ。

 出てくるから座ってて、とだけ言い残し玄関に向かう。


「なあ、その子誰なんだよ」

「気にするな。お前の思っているような関係じゃない」

「普通気になるだろ!歩夢といいお前といい何でお前らばっかり……俺だけ負け組みたいじゃねえか……」

「……つくづく被害妄想の激しい奴だ」

「被害妄想とはなんだ!事実俺だけ独り身じゃねえか!」


 何やら他愛のない会話をしているのが聞こえる(というか正平が一方的にまくしたててそれを史が受け流している感じだが)。

 そんな二人のやり取りに苦笑しながらドアノブに手をかけた。


「いらっしゃ――」


 ドアを開け、そして歩夢は固まった。

 その場にいると思わなかった予想外の人物に驚いて。

 夜の暗さで際立つ白い磁器のような肌。外灯の光を照り返す銀髪。紅と翠のオッドアイ。そしてベージュのフリルドレス。

 その姿は見間違うはずのないものだった。


「歩夢、どうかしたか?」

「え!?あ、いや……」


 正平の呼びかけで我に返る。

 驚きのあまり、完全に思考が停止してしまっていた。

 そこには大きなカバンを持った正平と、大きな箱を持った史。

 そして、栞がいた。





 家に三人を招き入れると正平はぼやくように呟いた。


「まさか史が女連れとはな~、予想外にもほどがあるぜ全く……」

「ははっ、そうだな……」


 何とか半笑いを浮かべながら答える歩夢。

 しかし彼の頭の中はどうにか状況を整理しようと手一杯の状態だった。

 現状、自分のわかっているキーワードを並べながら状況を整理する。


――『お初にお目にかかります、歩夢様。私はしおり。貴方のサポートの為に、我が主(マイロード)の指示で参りました』

――『何考えてるかよくわかんない奴よ。あいつも持ち主に似たからあんな風になったのかもね』

――『あの時に言ったでしょ。あいつは人の姿はしてるけど魔術書なの。だから持ち主がちゃんといるわけ』

――『知ってるっていうかあいつの持ち主と知り合いっていうか……』


 第一に彼女は我が主(マイロード)と呼んでいる人物、つまり自分の持ち主の指示で来たと言っていた。そしてその指示を出したのは父に依頼された誰か。これは歩夢の事を知る人間である必要性が必須ではない為、絞り込めない。

 第二に持ち主の特徴。八神は『何考えてるかよくわからない奴』と表現した。これは感情の起伏に乏しい史と合致しない事もない。

 そして第三にその持ち主と八神明星は知り合いであるという事。もし今から史と八神が会って何か反応があれば殆どの確率で彼が栞の持ち主である事が確定する。いっそ今から彼女に聞いて確認することだって可能なわけだ。


――要はリビングに連れて行けば結果はわかるってことか……


 歩夢はとりあえず頭の中で結論を出し、リビングの扉を開ける。

 予想通りというか何というか、自分と史、そして栞を除く全ての面子が驚きの声をあげた。


「栞!?」と、使い魔三姉妹。

「ハァ!?」と、八神。

「なんか増えてねえか!?」と、正平。


 歩夢が史の方に視線を移す。

 彼は各々の反応を見ながらやれやれと肩をすくめるようにして少し口元を緩めていた。


「史、お前……」


 今の反応で何となくわかった。

 何故、今この状況で皆が驚いているのか。

 その理由を知っているのだろうという事に。


「夜風」

「な、何……?」

「その話は、また今度な」


 そう言いながら自分に視線を向けてくる史に、歩夢は驚いた。

 彼自らフィユに関する一件に対して自白と取れる発言をした事にではない。

 歩夢が驚いたのは、史の表情だ。

 それは微笑以下の小さな笑み。

 しかしそれは高校三年間で一度も彼が見せたことのなかったものだった。


「今日はクリスマスパーティなんだろ?」

「……ああ、そうだな」


 史の言葉に歩夢はそう答えていた。

 今日くらいは細かい事を気にせずに楽しんでもいい気がした。


「じゃあ、人も集まったし始めようか!」





「皆、クラッカー持った?」


 歩夢が全体に確認を取る。

 ちなみにクラッカーは正平の持ってきたやたらでかいバッグの中に入っていたものの一つだ。

 それぞれがクラッカーを持った片手を上に掲げ、持っている事をアピールする。

 ただ一人を除いて。


「どうかしました?栞さん」


 渡されたクラッカーを握って見つめている栞に歩夢が話しかける。

 クラッカーから視線を歩夢へと視線を転じた栞はゆっくりと口を開いた。


「クラッカー……主に火薬の入った円錐形の紙容器で、穴から伸びた紐を引っ張ることで火薬が摩擦により発火し、大きな音がなる道具。ちなみに銃を撃った時と同じように硝煙反応が出るそうです。……ところで今から何をするんでしょうか?」


 栞の口から紡ぎだされる言葉はクラッカーがどういうもので、どういう仕組みかという蘊蓄だった。

 つまり彼女はクラッカーを知らないのではなく、クラッカー(コレ)をどういった理由で、何の為に使うのかがわからない、ということなのだろう。


「今から俺が“メリー・クリスマス”って言うんで、それに皆で復唱しながら紐を一斉に引っ張ってくれればいいんです」

「……わかりました」


 わかっているのかいないのかよくわからない表情を浮かべながら栞はそう答えた。

 無知と言うより知識が偏っているのだろう。元が魔術書なだけに。

 実際、八神が言っていたように栞は持ち主に似て感情表現が少ない。

 なので場を盛り上げる為に使う、というような感情的理由は彼女には理解し辛いのだろう。


「それじゃあ……」


 歩夢がクラッカーを握った左手をあげて紐先を掴むと他の全員もそれに倣った。


「メリー・クリスマス!」

『メリー・クリスマス!!!』


 掛け声と共にクラッカーの音が響き、クリスマスパーティが始まりを告げた。

あと二、三話で終わらす予定です。

頼りにはならないですが……


楠葉でした。

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