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魔法使いと夢と夢魔  作者: 高町 楠葉
第一章 魔法使いの息子
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三十話 シエルと明星

あれ?予定と全然違う話になっちゃった……

「――という事になるんです」

「へぇ~。でも、そんなに複雑なプロセスを踏んでて発動にラグがあったり劣化したりしないの?」

「そこはやっぱり私がそういう系統の魔法に特化している部分がありますからね。高速型並列処理は絶対値が高くないので大魔力の運用は出来ませんけど、その代わりに広い範囲で応用が利く事や発動時の誤差が少ないのが大きな利点です」

「う~ん、難しいなぁ……あたしはどうしてもその手の魔法は苦手で」

「やっぱり得手不得手はありますよ。伸ばせるところを伸ばすのが一番です」


 ここはシエルとメアの部屋。

 朝食後、部屋でゆったりしていたシエルのところに八神が訪ねて来たのだ。


――『シエル。アンタ、これわかる?』


 恐らく自室で勉強をしていたのだろう。

 魔法の教材を持った八神がシエルの元を訪ねてきたのはそういう理由だった。

 朝の一件で少し安心感があったというのもあるかも知れない。


「う~ん、そんなもんかな……」

「そうですよ、頑張りましょう明星さん!」


 まあ、実際のところ魔法を教える過程で話が脱線しお互いがどんな魔法が使えるかやその仕組み等を説明する雑談になっていた。

 ちなみにその途中で『八神様なんて堅苦しい呼び方はやめてほしい』とのことだったので現在は『明星さん』と呼んでいる。


「ところでシエル。アンタは今日、何か予定あるの?」

「ないと言えばないですけど、あると言えばありますね」

「……?」

「私はマスターの使い魔ですから。あの人に用事があれば、それが私の用事です」

「ぁ……」


 そう言って微笑んでみせると八神――明星が少し驚いたような表情をした後、視線を逸らした。

 そのままポツリと呟くように言う。


「そう、よね。そう言えばシエルはあいつの使い魔だったんだよね」

「……そうですよ?それがどうかしましたか?」

「え、いや……その、さ。あたしってこんなだから、あんまり友達とかいなくて。会って間もないのにこんなこと言うの変かもしれないけど……アンタの事、普通の友達みたいに思えてきてさ。ごめん、迷惑だよね。シエルは客人としてあたしの事もてなしてるくれてるだけなのに……」

「……」


 明星の言葉に思わずキョトンとしてしまう。

 彼女の表情は落胆という言葉がぴったり当てはまりそうなものに取って代わっていた。

 不謹慎かもしれないが「本当に友人経験が少ないんだな」と思うと同時に「可愛い」と思ってしまった。勿論、変な意味ではない。

 彼女は自分に真っ直ぐでストレートなイメージとは裏腹に、他人に対して自分の本音を言うのに慣れていないが故に誤解を生みがちな不器用な人なんだとシエルは理解した。

 それと同時に彼女の友達になってあげたいとも思った。


――ううん、違うかな……


 シエルは明星の顔を覗き込むような体勢を取る。


――私も、なりたいんだ。この人と……


「ホント、酷いですよ明星さん」

「え……?」

「私はもう貴女の事を友達だと思ってたんですよ?それとも使い魔がこんなこと言ったら失礼でしたか?」

「ぁ……」


 明星の瞳が潤む。

 シエルは何も言わずにそっと彼女を抱き寄せた。


「ぅ……」

「泣いてもいいですよ。聞こえないように、こうしていてあげますから」

「ぅぅぅ……!」


 嗚咽を漏らし、肩を震わせながら明星は泣いた。

 それをシエルは背中をゆったりと撫でながら宥めた。


――おじ様が何でこの人をここに連れて来たのか、何となくわかった気がします……


 自分の胸の中で涙を流している少女は、昔の自分だ。

 そう、初めて優夢様(先代の主)に出会った時の自分。


――『もう、貴女は一人じゃないから』


 不意にその時の言葉を思い出し、微笑を浮かべる。

 次の瞬間には自分も同じことを口にしていた。

 確かな確信を持って。


「貴女はもう、一人ではありませんから……」

さて、本来なら一章を終わらせるはずだった三十話でしたが普通に無理でした。

シエルさんのお姉さん(お母さん?)化に拍車が掛かり、加えてオルゴール編がの間に話が一つ挟まったせいで三女の登場が遅れるという……

ま、まぁ、これはこれで入れないといけない内容だったので仕方ないですね!(言いわけ


では、楠葉でした。

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