二話 魔法使いと使い魔
少しだけシリアスが入ってます。
もう少し早く更新したいものです。
一騒動あった朝食も何とか事なきを得て、先ほどと同じように向かい合う形で今度は炬燵に座っていた。当然、詳しい話を少女から聞き出す為である(かなり遅過ぎる気もするが)。
「それじゃあ、とりあえず貴女のこと聞かせてもらっていいですか?」
歩夢の質問に少女は静かに頷いた。
「私の名前はシエル。先代の主、夜風優夢様の使い魔です」
「……使い魔?」
使い魔と言えばあれか?RPGとかに出てくる魔王やら魔女やらが従えてるいるあれか?
「……マジで?」
「……マジです」
「……」
「……」
何かの冗談かとも考えたがそもそも今までのやり取りで彼女がそんなくだらない冗談を言うような人物ではないことは大凡察しがついていた。シエルと名乗った少女が話を続ける。
「主……いえ、歩夢様はご存じなかったかも知れませんが先代の主、つまり貴方のお母様は魔法使いだったんです」
「……」
シエルのこの唐突な話に歩夢は返事はおろか相槌すら返せないでいた。
まあ、普通に考えて見知らぬ人間(?)にいきなり「貴方の母親は魔法使いです」と言われて「はい、そうですか」と返せるわけがない。
「使い魔というのは契約者、つまり魔力を供給してくれる主がいることで初めて存在することが出来ます。本来なら先代の主である優夢様が亡くなった時点で私達は消滅するはずでした」
「つまり、そうならないように母さんが何かしたってこと?」
「……はい」
歩夢の疑問にシエルは頷く。
「契約者のいなくなる使い魔を生かす術は二種類存在します。一つ目は使い魔としての契約を解除すること。二つ目は契約の引継ぎです。一つ目の方法は行った時点で使い魔ではなくなるので、元のあるべき存在に戻ります」
「元のあるべき存在……?」
「“使い魔の契約”といってもその方法や形式は千差万別なので一概には言えませんが簡単に言えば“契約する前の姿”と言ったところでしょうか。例えば猫と契約して使い魔にしたなら解除すれば元の猫に戻る、みたいな」
成る程、と歩夢が納得しかけたところで再び疑問が脳裏をよぎった。
「あれ?だとすると母さんは契約の解除をしなかった、ってことになりますよね?何でですか?」
「それは……」
ここまでどの質問にも即答していたシエルが初めて言い淀む。心なしかその表情も暗い。
「……もしかして聞いちゃいけないことでしたか?」
「いいえ、どのみち話さないといけないことですから」
シエルは小さくかぶりを振り、そう答えた。
その瞳は揺れていた。
「先ほど話した通り、契約を解除した場合使い魔は本来あるべき元の姿に戻ります。もし……契約する前の本来あるべき姿が“死にかけの人間”だったら……どうなると思いますか?」
「……え」
考えもしなかった発言に歩夢は思わず絶句する。そして、同時に理解した。契約の解除が彼女にとって何を意味するのかを。
「ごめん」
「……え?」
シエルは驚いたように伏せていた視線を上げる。
「いや、だから……ごめん。いやなこと言わせちゃったみたいだから」
「……主」
何だか気恥ずかしくなって歩夢が視線を逸らすとシエルがクスリと笑みを漏らした。
「大丈夫ですよ、主。私は自分の命を救って下さった優夢様に感謝しているんですから。だから、せめてものご恩返しをしたいんです」
「恩返し……?」
「はい。優夢様が私達に最後に託した願い。それは自分の代わりに歩夢様を主として支え続けていくこと」
「……!」
「だから……お願いです、歩夢様」
シエルは真っすぐ歩夢の目を見ていた。歩夢もまた、その真剣な瞳に目を逸らさない。
「私と本当の契約を結んでください……!」
早く妹達の出番を作ってあげたいのですが中々そこまで書き終わりません。
自分の作業速度に絶望しつつもこれからも頑張ろうと思います。
では、楠葉でした。