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魔法使いと夢と夢魔  作者: 高町 楠葉
第一章 魔法使いの息子
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二十四話 それは静かな夜の出来事

苦労性の歩夢さんです。

 夕食を終えた歩夢は一人食器を片づけていた。

 ちなみにシエルとメアの二人はお風呂で入浴中である。


「……」


 今まで当たり前のように一人でしてきた作業。

 違うのはせいぜい洗う食器の数が増えたことくらいだ。


「今日は冷えるな……」


 水での食器洗いは冬場にやると結構辛いものがある。

 しかし、お湯で作業するとただでさえ冬は上がりがちなガス代にさらなる拍車を掛ける事になるだけでなく、手も荒れやすくなるといった切実な問題もあったりする。


――って、こんな事考えてるから主夫みたいって言われるんだよな……


 一人で反省するも否定するほど間違ってもいない気がする。

 ふと誰もいないリビングに目をやりながら夕食の事を思い出した。


「八神さん……どうしたんだろう?」


 結局、彼女は二階に行ったっきり戻ってこなかった。

 一応ドア越しに声は掛けたのだが返事もなく、だからといってドアを開けるわけにもいかなかったので諦めた次第だ。


「何か機嫌を悪くさせるような事言ったかな?」


 あの時メアが彼女に対して色々言っていたのは事実だがあの程度の事で怒るとも正直思えない。

 しかし、特に理由が思い当たらない以上、対策の講じようがなかった。


「う~ん……」


 洗い終わった食器を拭きながら首をひねる。

 考えてわからない事をいつまでも考えていたって仕方ない。


――これが終わったらもう一度部屋に行くか


 やる事を決めた歩夢は作業の手を早めた。





――トントン


 食事の前にしたように控えめにノックする。

 しかし、やはりというか返事はなかった。


「寝てるのかな……?」


 基本的には人のプライベートに立ち入らないようにはしている。

 だがショッピングモールの件といい、夕食に姿を見せなかった件といい気になるのも確かだった。

 自分の気持ちを納得させる為、歩夢はドアノブに手をかけた。


「八神さん、入りますよ?」


 声を掛けてもう一度確認。

 これでも返事がないところを見ると呼びかけを無視していたわけではなさそうだ。

 ゆっくりとドアを開ける。


「八神さ――」


 電気はついていた。

 まだ家具らしい家具は置かれていない部屋で、あるのは送られて来た荷物のバックがいくつかと布団だけ。

 そして八神はその布団の上で横になり寝息を立てていた。

 ……着替える途中だったのか下着のままで。


――!?


 声が出そうになるのを何とか抑える。今、彼女が目を覚ましたら平手打ちどころかボコボコになるまで殴られても不思議ではない。

 音を立てないように外に出ようと数歩下がる。と、そこで足を止めた。


「……」


 余程疲れていたのか寝息を立てつつも身じろぎ一つしない八神。

 十二月にもなって暖房もない部屋でこんな恰好で寝ていたら風邪をひいてしまう。


「はぁ……」


 歩夢はもう一度足音を立てないようにゆっくりと部屋の中に入り、押入れから毛布と着布団を取りだした。

 それを出来るだけ静かに八神の上に掛ける。


――これで起きたら俺の命運はそれまでって事で……


 しかし幸いというか何と言うか、彼女は目を覚まさなかった。

 ホッと胸を撫で下ろしつつ電気を消し、部屋を出る。


「おやすみ、八神さん」


 そう呟いて、ドアを閉めた歩夢はリビングに戻っていった。

三女がなかなか登場させられない……

でもここで出てきたら色々カオスな予感が(


楠葉でした。

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