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魔法使いと夢と夢魔  作者: 高町 楠葉
第一章 魔法使いの息子
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二十話 問題の丸投げはやめて下さい

状況はどんどんエスカレートしていきます。

 所変わってここは夜風邸。

 ショッピングモールでの一騒動が終息した後に、歩紀が『話があるから一旦家に行こう』と言った為である。


『あの、学園長?まさかとは思いますが会わせたかった奴ってもしかして……?』

『うん、彼だよ』

『……はぁ』


 などという会話もあったのだが詳しい事情を知らない歩夢達にこの言葉の意味を理解する事が出来なかったのは余談。

 リビングに全員集まると歩紀が口を開いた。


「それじゃ、まずは自己紹介から。八神さん?」

「あ、はい。……芹沢魔法学園、魔法科一年の八神明星あかりよ」

「……は?」


 歩夢の間抜けな声に八神は眉をひそめた。

 どうやらその反応が癪に障ったらしい。


「は?って何がよ」

「あ、ごめん。変な意味じゃないんだ」


 そう、彼女の自己紹介に何か不備があったわけじゃない。

 たださっきの自己紹介の中にいくつか含まれた単語を頭の中で繋げていった結果に驚いてしまったのだ。

 まず第一に父は『学園長』と呼ばれている以上、何かしらの学園に勤めているはずだという事がわかる。

 そして彼女、八神が空から降ってきた時の状況とその後の父の対応。あれは魔法を知る者でなければ説明のつかない対応だった。

 ここまでの事を考慮した結果、『自分の父が魔法を教えるような教育機関に身を置いている可能性がある』という事までは想像出来ていたのだ。

 なので彼女が魔法の学校の学生だという事に歩夢は驚いていたわけではなかった(本当にそんなものが存在しているのだという事実には驚いていたが、そもそも魔法という概念そのものがつい最近まで無かった一般人としては考えても仕方ないと割り切っていた)。

 気になったのは最初の単語。


――『芹沢魔法学園』……?


 芹沢、それは亡くなった母の旧姓だった。


「なら今度はアンタが名乗りなさいよ」


 苛立ちを隠さない八神の言葉で歩夢は思考をやめた。


「……あ、うん。水橋高校三年の夜風歩夢です」


 右手を出して握手を求めてみるも八神は目線を背け、それに応じようとはしなかった。


――嫌われたもんだな……


 苦笑しつつ歩夢は手を引っ込めた。


「父さん、どうしてこの人を俺に紹介したんだ?」


 聞きたい事は他にもあったがとりあえずは目先の問題を解決するのが先決と考え、歩夢は尋ねた。

 すると歩紀はとんでもない事を口にした。


「いや、少しの間だけ彼女をここに泊めてやって欲しいんだ」

「……」

「……」


 歩夢と八神は互いに視線を合わせ、そのまま固まった。

 それはそうだろう。シエルやメアのように自らの意思でいるならまだしも、女の子がいきなり見ず知らずの男の家に泊まれと言われて普通平気なわけがない。


「ちょっと待てよ、父さん!それはいくらなんでも無茶振りが過ぎると思うぞ!?」

「そうですよ、学園長!大体どうしてここに泊まらないといけないんですか!?」


 お互い思い思いの意見をぶつける。しかし歩紀はどこ吹く風と言わんばかりに盛大に話をスルーする。


「荷物は今日中にまとめて転送しておくから夕方には届くと思うよ」

「ちょっと!?あたしに拒否権はないんですか!?」

「じゃあ、まだ仕事が残ってるからこれで!元旦の朝には多分戻るから後は任せたぞ、歩夢!」

「おい!無茶振りした挙句、丸投げかよ!?説明くらいしていけ!」


 二人の決死の抵抗も空しく、歩紀は「良いお年を~」と呑気に手を振りながらその場から消えた。

 八神が降ってきた時と同じ移動が出来る魔法か何かだろうか。

 そんな三人のやり取りを、


「相変わらずね……」と、シエル。

「相変わらずだね……」と、メア。


 懐かしんでいるのか、呆れているのかよくわからない表情で後ろから眺めていた使い魔二名であった。

歩夢の父親、見た目だけでなく中身もまるで似てませんね。


楠葉でした。

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